
仮想通貨(暗号資産)の税金は、長らく「総合課税で最大約55%」と言われ、株式やFXと比べて不利だと指摘されてきました。この状況は、令和8年度税制改正によって大きく変わることが決まっています。
2026年3月31日、暗号資産の所得を一律20%の分離課税とする改正所得税法が成立・公布されました。つまり分離課税は、もはや「要望」や「期待」の段階ではなく、すでに法律として決まった事項です。
一方で、新しい税率が実際に適用され始めるのは2028年1月1日以降になる見込みで、2026年8月時点の取引には引き続き現行の総合課税が適用されます。
この記事では、仮想通貨の分離課税がいつから始まるのか、そして何がどこまで決まっていて何がまだ未確定なのかを、2026年8月時点の情報にもとづいて整理します。
<この記事でわかること> ・仮想通貨(暗号資産)の分離課税がいつから始まるのか |
目次 |
【結論】仮想通貨の分離課税はいつから?
結論として、暗号資産の分離課税は2028年1月1日以降に行う取引から適用される見込みです。ただし、この日付はまだ確定したものではありません。
改正法は適用開始日を「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」と定めています。カレンダー上の特定の日付ではなく、金商法改正の施行日に連動する書き方になっている点がポイントです。
現在の進捗を時系列で整理すると、次のようになります。
| 時期 | 内容 | 状況 |
| 2025年12月19日 | 令和8年度与党税制改正大綱に分離課税化が明記される | 完了 |
| 2026年3月31日 | 改正所得税法が成立・公布される | 完了 |
| 2026年7月15日 | 金融商品取引法等の改正法が成立する | 完了 |
| 2027年中(見込み) | 金商法改正法が施行される | 未確定 |
| 2028年1月1日(見込み) | 分離課税の適用が開始される | 未確定 |
金商法等の改正法は2026年7月に成立・公布されており、施行は2027年中になる見込みです。この場合、適用開始はその翌年である2028年1月1日となります。逆に、施行が2028年にずれ込んだ場合は、適用開始も2029年1月1日へ後ろに動くことになります。
そのうえで、投資家として最も注意すべき点は、2026年分・2027年分の確定申告は、これまでと同じ雑所得・総合課税で行う必要があるということです。「20%になった」という情報だけを見て今年の申告方法を変えてしまわないよう、適用開始時期とあわせて理解しておきましょう。
税制改正大綱の記載内容そのものについては、仮想通貨の分離課税、令和8年度与党税制改正大綱でどう変わるかで詳しく解説しています。
現行制度:仮想通貨の所得は「総合課税」
2026年8月時点では、仮想通貨による所得は原則「雑所得」に分類され、総合課税の対象となります。
これは、仮想通貨による「雑所得」が会社員の「給与所得」や個人事業主の「事業所得」などと合算され、その金額に応じて所得税の税率が決まるということを意味しています。
一方で株式投資やFX取引は「分離課税」という仕組みが適用され、税制面でより有利な扱いが認められています。分離課税への移行がなぜ長く要望されてきたのかを理解するために、まずはそれぞれの基本をおさえておきましょう。
総合課税の税率
所得税の「総合課税」における税率は、対象となる所得を合算した課税所得額に応じて決まります。累進課税が採用されており、基本的に課税所得が多いほど税率が高くなっていく仕組みになっています。
所得税率

(引用元:国税庁|No.2260所得税の税率)
このように、総合課税における所得税の税率は5%〜最大45%にも及びます。これに住民税10%を加えると負担率は最大で約55%となり、仮想通貨取引で多額の利益を得た場合には、非常に高額な税金を課せられる可能性があるのです。
なお、現状の仮想通貨取引の利益に対して確定申告が必要となる要件、税金・損益計算の方法などはページ下部の関連記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
分離課税(申告分離課税)とは
株式投資やFX取引などで得た利益に対しては「分離課税」が適用されます。
「分離課税」とは、特定の所得のみを抽出して、他の所得とは切り離して税率をかける方式のことです。
分離課税は、確定申告が必要な「申告分離課税」と、証券会社や銀行などによって源泉徴収されて申告が不要な「源泉分離課税」に分けられます。通常、株式投資やFX取引などには原則として「申告分離課税」が適用されますが、株式投資の場合は特定口座(源泉徴収あり)を選択することで、証券会社による源泉徴収で完結させることも可能です。
どちらの場合も総合課税とは切り離して税金の計算ができるため、所得が大きい人にとっては「分離課税」の方が税率面で有利になりやすいとされています。例えば上場株式の譲渡益やFX取引の利益には、所得の大小にかかわらず一律で20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)の税率が適用されます。
分離課税でも「給与所得との損益通算」はできない
分離課税についてよくある誤解として、「分離課税になれば損失を給与所得から差し引ける」というものがあります。しかし、これは現行の株式・FXの制度でも認められていません。
上場株式等の譲渡損失や、FXを含む先物取引の損失は、いずれも給与所得や事業所得といった総合課税の所得と損益通算することはできません。損益通算ができるのは、原則として同じグループ内(上場株式等どうし、先物取引どうし)に限られます。
後述するとおり、暗号資産の分離課税でもこの考え方が踏襲されています。分離課税のメリットは主に「税率が一律になること」と「損失の繰越控除が使えるようになること」であり、給与所得との相殺ではない点を押さえておきましょう。
総合課税と分離課税の違いそのものについては、総合課税・分離課税とはで基礎から解説しています。
令和8年度税制改正で決まった4つのこと
2025年12月19日に公表された令和8年度与党税制改正大綱に暗号資産の分離課税化が明記され、その内容を含む改正所得税法が2026年3月31日に成立・公布されました。決まった内容は大きく4点に整理できます。
① 税率は20%(所得税15%+住民税5%)になる
令和8年度与党税制改正大綱には、次のように記載されています。
| 暗号資産取引業(仮称)を行う者に対して暗号資産(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限る。以下「特定暗号資産」という。)の譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、他の所得と分離して20%(所得税15%、個人住民税5%)の税率により課税する。 |
令和8年度与党税制改正大綱 p52
大綱上の表記は20%ですが、上場株式やFXと同様に復興特別所得税(所得税額の2.1%)が上乗せされるため、実質的な負担率は20.315%になる見込みです。現行の総合課税では最大約55%であることを踏まえると、高額の利益を得ている場合には税負担が大きく下がる可能性があります。
② 3年間の繰越控除制度が創設される
現行制度では、仮想通貨取引で生じた損失を翌年以降に繰り越すことは認められていません。改正後は、上場株式等と同様に、損失を翌年以後3年間にわたって繰り越し、将来の利益と相殺できる制度が創設されます。
ただし、繰越控除の適用を受けるためには、損失が出た年以降も連続して確定申告書を提出しておく必要があるとされています。利益が出ていない年でも申告をしておかないと、繰越控除の権利を失う点に注意が必要です。
③ 対象は「特定暗号資産」に限られる
見落としやすいのが対象範囲です。分離課税の対象は「特定暗号資産」、すなわち金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限られます。
大綱では、あわせて「国民の資産形成に資する暗号資産に限って」という表現も使われています。具体的にどの銘柄が対象になるかは今後の財務省令で定められる予定で、2026年8月時点では確定していません。国内取引所に上場している銘柄のすべてが対象になるとは限らない点に留意が必要です。
また、海外取引所やDEX(分散型取引所)での取引は対象外になると見込まれています。「暗号資産の利益はすべて20%になる」というわけではないため、ご自身の取引がどう扱われるかは今後公表される法令で確認する必要があります。
④ 損益通算できる範囲は限定される
分離課税の対象となる特定暗号資産の損失は、分離課税という仕組みの性質上、給与所得や事業所得といった総合課税の所得と通算することはできません。上場株式等の譲渡益と通算することも認められていません。
加えて、分離課税の対象にならず総合課税に残る暗号資産についても、令和8年度与党税制改正大綱で損益通算の不適用が明記されています。
| ハ 当該暗号資産に係る譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額については、他の総合課税の対象となる所得との損益通算を適用しないこととする。 |
令和8年度与党税制改正大綱 p53
つまり、対象銘柄かどうかにかかわらず、暗号資産の損失を給与所得から差し引くことはできないという整理になります。
さらに、現物取引は譲渡所得、デリバティブ取引は雑所得の申告分離課税(先物取引グループ)として扱われる見込みで、この2つの間でも通算できないとされています。現在の株式取引とFXが損益通算できないのと同じ切り分けです。
あわせて、暗号資産については譲渡所得の特別控除(50万円)の適用がなく、5年を超えて保有した資産に係る長期譲渡所得の1/2課税も適用されないことが明記されています。
適用開始までに押さえておきたい注意点
2027年分までは総合課税での申告が必要
繰り返しになりますが、適用開始前の取引は現行どおり雑所得・総合課税で申告します。適用開始が2028年1月1日となる場合、2027年分の確定申告(2028年に実施)までは従来と同じ計算方法になります。
移行前の損失は繰り越せない見込み
3年間の繰越控除は新制度で創設されるものであり、適用開始前に発生した損失を新制度に持ち込むことはできないと見込まれています。制度の切り替わり前後で損失の扱いが変わる点は、取引のタイミングを考えるうえで押さえておきたいポイントです。
分離課税になっても損益計算と確定申告は必要
分離課税と聞くと、株式の特定口座のように証券会社が源泉徴収してくれる姿を想像される方も多いかもしれません。しかし暗号資産は、個人がウォレットを介して24時間365日送金できるうえ、DeFiのような取引所を経由しない取引も存在します。単一の事業者が利用者の取得単価と実現損益を正確に把握することは容易ではありません。
そのため、投資家自身が損益を計算して確定申告を行う仕組みは、新制度でも引き続き必要になると考えられます。また、繰越控除を使うには損失の年も申告が必要になるため、取引記録の管理の重要性はむしろ高まります。
特に海外取引所は日本からのアクセスが制限される動きが続いています。確定申告の時期に「取引履歴が取得できない」という事態にならないよう、早めに履歴をダウンロードしておくと安心です。
詳細は今後の法令で確定する
対象銘柄の範囲、ステーキングやレンディングの報酬の扱い、暗号資産ETFの個人課税など、実務に直結する部分の一部は財務省令や政令の整備を待つ段階にあります。制度の全体像は決まりましたが、細部は今後の公表情報で確認していく必要があります。
ここまでの経緯:業界団体の要望から法制化まで
分離課税化は突然決まったものではなく、業界団体による長年の要望を背景としています。ここでは、法制化に至るまでの流れを振り返ります。
FX取引も、かつては総合課税だった
分離課税化の議論でしばしば参照されるのが、FX取引の前例です。現在のFX取引による利益には申告分離課税が適用されていますが、2012年に税制改正が行われるまでは総合課税として扱われていました。
業界団体の要望書によると、仮想通貨の利用者口座数は2024年5月には約1,000万口座となり、店頭FX取引の税制改正が行われた当時のFX取引口座数を既に超えていました。国内の暗号資産口座数はその後も増加し、JVCEAの統計では2025年10月時点で1,300万口座を超えています。普及の広がりが、資産形成に資する金融商品として位置づけ直す議論を後押ししたといえます。
業界団体による税制改正要望
2024年7月19日には日本ブロックチェーン協会(JBA)が「暗号資産に関する税制改正要望(2025年度)」を政府へ提出しています。同年7月30日には、クリプタクトの運営会社pafinの代表である斎藤 岳が税制検討部会長を務める日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)と、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が共同で「2025年税制改正に関する要望書」を提出しました。
どちらの要望も、「暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税」とする旨や、「損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができること」を求める内容でした。これらの要望は、令和8年度税制改正でほぼそのまま実現した形になっています。
参照元:日本ブロックチェーン協会|暗号資産に関する税制改正要望(2025年度)を政府に提出しました。
参照元:日本暗号資産等取引業界|2025年度税制改正に関する要望書について
参照元:日本暗号資産ビジネス協会|「2025年度税制改正に関する要望書」を政府宛てに提出いたしました
金融商品取引法への移行が前提となった
分離課税化は、税制単独で決まったわけではありません。令和8年度与党税制改正大綱では、「投資家保護のための説明義務をはじめとする健全な取引環境の構築に向けた法整備等への対応を前提に」分離課税の対象とする、と記載されています。
株式や投資信託など、すでに申告分離課税の対象となっている金融商品は、いずれも金融商品取引法の枠組みの下で情報開示・不公正取引規制・業者監督といった制度が整備されています。暗号資産についても、資金決済法から金商法へ位置づけを移し、同水準の制度的前提を整えたうえで税制を整理する、という考え方が採られました。
この前提となる金融商品取引法等の改正法は、2026年7月15日に成立しています。適用開始日が「金商法改正法の施行日の属する年の翌年1月1日」と定められているのは、こうした経緯によるものです。
まとめ
仮想通貨(暗号資産)の分離課税は、令和8年度税制改正によって法律として決定しました。要点を整理します。
| 項目 | 内容 |
| 税率 | 20%(所得税15%+住民税5%)。復興特別所得税を含めると20.315% |
| 適用開始 | 金商法改正法の施行日の属する年の翌年1月1日。2028年1月1日が有力だが未確定 |
| 対象 | 「特定暗号資産」に限定。具体的な銘柄は財務省令で今後確定 |
| 繰越控除 | 翌年以後3年間。連続した確定申告書の提出が要件 |
| 損益通算 | 給与所得など総合課税の所得や上場株式等とは通算不可 |
| 適用開始前 | 2027年分までは従来どおり雑所得・総合課税で申告 |
税負担が下がる方向の改正である一方、対象範囲や損益通算には制限があり、「暗号資産の利益がすべて20%になる」わけではありません。また、適用が始まるまでは現行の総合課税が続きます。
制度がどう変わっても説明できる形で損益を管理しておくことが、将来の申告や調査対応でのリスクを抑えることにつながります。
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よくある質問(FAQ)
Q. 仮想通貨の分離課税はいつから始まりますか?
A. 2028年1月1日以降の取引から適用される見込みです。改正法は適用開始日を「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」と定めており、金商法改正法の施行が2027年中になる見込みであることから2028年1月1日が有力視されています。ただし施行日次第で後ろにずれる可能性があります。
Q. 分離課税はもう決まったのですか?
A. はい。2025年12月19日公表の令和8年度与党税制改正大綱に明記され、その内容を含む改正所得税法が2026年3月31日に成立・公布されています。残っているのは適用開始日の確定と、対象銘柄などの詳細を定める法令の整備です。
Q. 分離課税になると税率はどうなりますか?
A. 20%(所得税15%+個人住民税5%)です。上場株式やFXと同様に復興特別所得税が上乗せされるため、実質的な負担率は20.315%になる見込みです。
Q. 損失を給与所得から差し引けるようになりますか?
A. いいえ。暗号資産の譲渡損失について、給与所得など総合課税の所得との損益通算は適用されないことが明記されています。上場株式等との通算もできません。一方で、翌年以後3年間の繰越控除制度が新たに創設されます。
Q. すべての銘柄が20%の対象になりますか?
A. いいえ。対象は「特定暗号資産」(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等)に限られ、具体的な銘柄は今後の財務省令で定められます。海外取引所やDEXでの取引は対象外になると見込まれています。
Q. 2026年分の確定申告はどうなりますか?
A. 従来どおり、雑所得・総合課税で申告します。適用開始前の取引に新しい税率は適用されないため、2026年分・2027年分は現行の計算方法で損益を計算する必要があります。
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