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ばれないのは間違い!仮想通貨の税金を未払いで放置すると起きること

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仮想通貨取引で得た利益には税金がかかりますが、「払わなくてもばれないのでは?」と思っている人もいるかもしれません。特に、得た利益が少額であったり、海外の取引所だったりする場合は「大丈夫だろう」と思いがちです。

しかし、仮想通貨取引で得られた利益は確定申告をして税金を支払う必要があります。仮に無申告で税金を支払わないでいるとペナルティが課され、大きな税金支払い負担に苦しむことになるケースもあります。

そこでこの記事では、仮想通貨取引における税金の基礎知識や税金未納の場合に課されるペナルティなどについて解説するとともに、税金未納がばれた具体的な事例について紹介していきます。 

仮想通貨の取引で生じる税金は払わないとばれる

仮想通貨の取引で得た利益には税金がかかりますが、払わずにいるとバレるのか気になる人もいるでしょう。「バレないだろう」と考える人も少なくありませんが、「億り人」と呼ばれる人たちが出現してきたこともあり、税務署は個人に対しても大規模な税務調査を行うケースがあります。


仮想通貨を売却したり使用したりすることによって得られた利益は、原則として雑所得に区分され所得税の課税対象となります。

仮想通貨の取引で利益を得た人の中には、確定申告せずに税金の支払いを逃れようと考える人もいるかもしれません。特に、海外の取引所から得た少額の利益であれば黙っていてもバレないと考えがちですが、それは間違いです。というのも、税務署には個人の資産や仮想通貨取引所におけるやり取りに対しての調査権限があるためです。

税務調査の法的根拠は、国税通則法第74条の2にあります。この条文によると、所得税などに関して調査が必要と認められる場合、質問や帳簿書類などの検査・提出を求めることができます。 仮想通貨の利益は所得税となるため、税務調査の対象になり得るのです。

さらに、税務署の手が届かないと思われる海外取引所においても、日本の国税庁は多くの海外と租税条約を締結しており、租税条約を通じて間接的に海外取引所の情報を入手することができます。そのため、海外取引所であったとしても、取引履歴等は税務署に分かってしまうのです。

また、令和2年度の税制改革により、仮想通貨デリバティブ取引について支払調書制度等の対象となりました。 支払調書とは、報酬などを支払った者(取引所など)が支払金額や内容などを記載した書類のことです。これにより、誰にいくら支払ったかが税務署に明らかになってしまいます。  
 

関連記事:海外取引所で得た仮想通貨の利益にかかる税金と確定申告の注意点

 

仮想通貨の税金に関する基礎知識

仮想通貨の取引で一定以上の所得を得た場合には、確定申告が必要です。所得金額は以下の計算式で求めます。

所得=総収入-必要経費

仮想通貨で得た所得について確定申告する必要があるかどうかは、この所得がどれくらい出ているかに応じて決まってきます。


●仮想通貨で得た所得は課税の対象  

会社員など給与所得者は、勤務先で年末調整をすることで確定申告は原則不要となっています。年末調整とは、いわば会社員のための簡易的な確定申告という表現もでき、年末調整を通じて確定申告が完了するのです。しかし、仮想通貨の利益等は年末調整の対象外であることから、仮想通貨取引を行い年間20万円を超える所得を得た場合は確定申告が必要です。

確定申告の際、会社に仮想通貨取引がバレたくない方は、住民税を自分で納付する「普通徴収」を選択するようにしましょう。これにより、仮想通貨取引で得た所得や住民税額の情報が自宅に届くため、ばれるリスクが低減します。一方「特別徴収」を選んだ場合、それらの通知が会社にいくことになってしまうので、申告書を作成する際は注意が必要です。そもそも仮想通貨の取引は副業に当たるのか知りたい方はこちらをご覧ください。

仮想通貨取引で得た所得は雑所得に該当し、給与所得などほかの所得と合算して税額を計算します。なお、所得税は累進課税で税率は5%から最大45%までとなっており、平成25年から令和19年までは復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)も併せて申告・納付します。

上場株式等の譲渡による損失は、その年の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額や配当所得の金額と「損益通算」が可能ですが、仮想通貨取引での損失は損益通算ができません。

すなわち、給料を得ている方が仮想通貨投資で損失を受けたとしても、給料に対する税金部分が減額されることはありません。

また、上場株式等の譲渡による損失で損益通算してもなお控除しきれない損失は、翌年以後3年間、確定申告することで上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から「繰越控除」することができます。しかし、仮想通貨取引においては繰越控除も対象外 となります。

また、会社員の被扶養者(専業主婦や学生)が仮想通貨の取引を行う場合は、合計所得が45万円を超えると住民税が課税され、48万円を超えると所得税が課税されます。つまり、仮想通貨の取引で年間48万円を超える所得を得た場合は確定申告が必要になるということです。

仮想通貨の損益計算をするにあたっては、「総平均法」と「移動平均法」の2種類の方法があります。評価方法によって売買損益は異なってくるため、いずれかを選択したうえで確定申告をしましょう。

関連記事:仮想通貨の損益計算/確定申告:「総平均法」と「移動平均法」、どちらが得?


 ●仮想通貨で所得が発生する主なタイミング 

仮想通貨取引で利益が発生するのはどのようなときなのか、主なタイミングについて解説します。

【仮想通貨を売却したとき】  
仮想通貨を購入し保有しているだけでは利益は発生しませんが、売却した場合、売却価格によっては利益が発生することがあります。所得額は、売却価格と取得価額との差額で求めます。

所得=仮想通貨の売却価額-仮想通貨の1単位あたりの取得価額×数量

 

【仮想通貨と他の仮想通貨を交換したとき】  
現在保有している仮想通貨をほかの仮想通貨に交換する際に(たとえば、ビットコインからイーサリアムに交換する場合など)利益が出ることがあります。所得額は、購入する仮想通貨の時価から売却する仮想通貨の取得価格を差し引いた金額です。

所得=購入する仮想通貨の時価-交換する仮想通貨の取得価額

 

【仮想通貨で商品やサービスを購入したとき】  
インターネットショッピングや実店舗などで、仮想通貨を使って商品やサービスを購入する際に利益が発生することがあります。支払いに使う仮想通貨の購入価格よりも、支払い時の時価の方が高額な場合、その差額が所得になります。

所得=購入商品・サービスの価格-(仮想通貨の1単位あたりの取得価額×数量)

 

【ステーキング報酬やレンディングの利子として仮想通貨を受け取ったとき】  
ステーキング報酬やレンディングの利子、マイニングなどで仮想通貨を受け取った場合は、そのタイミングで利益が発生します。

 

なお、仮想通貨には上記以外にも多くの取引の種類があります。2023年2月現在、仮想通貨で得た利益については法整備が追いついていない部分もあります。そのため、確定申告の際は行った取引が課税対象になるかをしっかり調べる必要があるでしょう。


仮想通貨の税金の未納がばれたらどうなる?

仮想通貨の取引で利益を得たにもかかわらず税金を支払わずにいると、どのような事態になるのでしょうか。

仮想通貨による所得の確定申告漏れが発覚した場合は、未納の所得税を支払うだけでなく、追徴課税の対象になり、通常よりも多く納税する必要があります。

未払いを簡単に考えて支払わずにいると、後悔する事態にもなりかねないため、主な追徴課税について下表で確認していきましょう。

 

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※各年分の無申告加算税は、原則上記の通りですが、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)については、納付すべき税額に対して、50万円を超え300万円までの部分は20パーセント、300万円を超える部分は30パーセントの割合を乗じて計算した金額となります。

 

仮想通貨の税金の未納がばれた事例

 

仮想通貨の税金を支払わずにいた結果、どのような事態に陥る可能性があるのか、税金未納がバレた事例をふたつ紹介します。  
いずれも、仮想通貨同士を交換した際に確定申告が必要という認識がなかったために、追徴課税を受けた事例です。

 

【事例1】追徴課税2億円以上を受けたAさん   
東京都内在住40歳代の男性会社員Aさんは、2億円以上の追徴課税を受け「自宅を手放さなくてはならない可能性がある」と話す。経緯は、以下の通り。

2016年にビットコインを購入し、他の仮想通貨にも取引を広げていった。2017年末には保有しているリップル価値がわずか1カ月足らずで約10倍に高騰し、資産価値は1億円以上に。一部のみを現金化し、大半は別の暗号資産に交換した。

Aさんは、仮想通貨同士を交換した際に申告が必要という認識がなかったため確定申告を行わないでいたところ、2019年9月、税務署から申告漏れとの指摘があり2億円以上の追徴課税(過少申告加算税を含む)を受けた。

その後、修正申告を行ったが、保有している仮想通貨の価値が大幅に下落しており支払いきれないのが現状。サラリーマンとしての年収900万円ではとうてい支払い切れず、「自宅を手放すことになると家族に申し訳ない」と話す。

 

【事例2】年収300万円シングルマザーに追徴課税3000万円   
中部地方で暮らす40代前半のシングルマザーBさん。約3,000万円の追徴課税を受け「自営業で年収300万円の自分には一生かかっても納め切れない。」と顔を曇らせて話す。

Bさんが仮想通貨投資を始めたのは2015年前半。マイナー・メジャーを問わずさまざまな仮想通貨に手を広げた。貯金を取り崩したり生命保険を解約したりして資金を捻出。2018年に保有している仮想通貨が最高値を記録するなどし、含み益は約2億8000万円となり、投資額の約470倍にも増大した。

その後、新たな仮想通貨を購入することにしたが指定された仮想通貨でしか購入できないため、保有している仮想通貨を指定された仮想通貨に交換し、新たな仮想通貨を購入する。しかし、保有していた仮想通貨には5,000万円超の含み益があり、交換時に高額な課税所得が発生していた。

Bさんは、「課税されるのは法定通貨に換金した場合だけ」と認識していたため申告を行わなかったところ、別件で受けた税務調査で自体が明るみに。その結果、約5,300万円の申告漏れと約3,000万円の追徴課税を受けた。

わずかに残された仮想通貨は、生活費や子どもの学費などに使いほとんど残っていない状態。現在は、毎月数万円ずつを何とか納め続けている。

 

仮想通貨の税金を正しく納めるためのポイント

仮想通貨の取引で得た利益に対しては、確定申告を行い、適正な税金を納めることが大切です。  
そこで、仮想通貨に関する税金を正しく納付するためのポイントを解説します。


●納税資金を確保しておく

納めるべき税額を事前に試算し金額を把握しておくと良いでしょう。おおよその金額がわかると、あらかじめ資金を準備しておけるので税金が支払えないという状況を避けることが可能です。

税額計算は手計算で行うことも可能ですが、国税庁の「暗号資産の計算書」 を利用するのも良いでしょう。ですが、国税庁の暗号資産の計算書は一定の条件でのみ有効な面があり、近年のDeFi取引やNFT取引などには対応していない面があります。

なお、所得税のほか住民税もかかる点に注意しましょう。住民税の税率は課税所得金額の10%程度となります。   
 

●損益を把握しておく

仮想通貨の取引状況について、月や週に1度など定期的にトレードの損益を確認する習慣をつけましょう。なお、損益確認をスムーズに行うために、トレード用とプライベートの資金は別々で管理することをおすすめします。

また、多くの取引所を利用するようになると、どのくらい利益が出ているのかがわかりにくくなるため、確認作業が負担にならない程度の取引所数にすると良いでしょう。

損益計算が難しい場合や時間がない場合などは、「損益計算ツール」を活用するのもおすすめです。  
 

仮想通貨で得た利益は申告をして適正な税金を納付しましょう

仮想通貨取引で得られた利益は、原則として所得税や住民税の対象となり、確定申告をすることで納税額が決まります。課税されるタイミングは、仮想通貨の売却時だけでなく、他の仮想通貨と交換したときや仮想通貨で商品やサービスを購入したときなども該当します。

課税ルールを知らなかったがゆえに確定申告をせず税金を支払わないでいると、延滞税や加算税などの納付が必要になるため、正しい知識を持ったうえで取り組むことが大切です。