
仮想通貨(暗号資産)の取引で利益を得た場合、税金が発生する場合があります。
この記事では、仮想通貨(暗号資産)の取引で「損益」が発生する主なタイミング5つを事例付きで解説するとともに、所得の計算方法や確定申告との関係について解説していきます。
なお、「所得」とはここでは例えば仮想通貨(暗号資産)取引による「損益」から経費等を差し引いた税務上の金額のことです。従って、所得を把握するためには仮想通貨(暗号資産)取引における「損益」が発生するタイミングを正しく理解しておくことが必要不可欠なのです。
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仮想通貨(暗号資産)の取引で損益が発生するのはどんなとき?
それでは、仮想通貨(暗号資産)の取引で損益が発生するのはどのようなときなのでしょうか。
購入した仮想通貨(暗号資産)の価格が値上がりしたり値崩れしたりすれば、感覚的に「儲かった」「損をした」と感じることでしょう。しかし個人の税務上では、こうした価格変動だけで損益が生じたとは見なされません。
仮想通貨(暗号資産)の税務上の損益は、利益が確定したと見なされるタイミングで発生するのです。
代表的な5つのタイミングについて、見ていきましょう。
①仮想通貨(暗号資産)を売却したとき
仮想通貨(暗号資産)を売却した場合、売却価格と元々の購入価格の差額によって利益または損失が発生します。
<事例>
1BTC(ビットコイン)を1,000万円で購入し、1BTCが1,300万円のときに売却した
この場合、300 万円の利益 (1,300万円 - 1,000万円)が発生したものと見なされます。
なお、この損益はあくまでも売却取引を行った時点で発生する点に注意が必要です。
売却して得た日本円を実際に銀行口座へ送金したかどうかは関係ありません。
②仮想通貨(暗号資産)を他の仮想通貨(暗号資産)と交換したとき
ビットコインをイーサリアムに交換する(BTC / ETHペアの取引)など、仮想通貨(暗号資産)同士を交換する取引を行った際も、損益が発生します。
仮想通貨(暗号資産)を売却したときと同様に、売却価格(その時点の時価)と元々の購入価格の差額が損益と見なされます。
<事例>
1BTCを1,000万円で購入し、後日その1BTCを1,400万円相当のイーサリアムと交換した
この場合、取引によって400万円の利益(1,400万円 - 1,000万円)が発生したものと見なされます。
通常、仮想通貨(暗号資産)同士の交換取引は取引時点のレートに基づいて等価になる数量で行われるため、「同じ価値の仮想通貨(暗号資産)同士を交換しただけで、損益は生じていない」と感じてしまいがちです。
しかし、税務上の考え方は異なります。上記事例の場合、「1,000万円で購入したビットコインを1,400万円で売却し、それによって得た日本円を使って1,400万円相当のイーサリアムを購入した」取引と見なされるため、「① 仮想通貨(暗号資産)を売却したとき」と同様に損益が生じるのです。誤解しやすいポイントですので注意しましょう。
③仮想通貨(暗号資産)で商品やサービスを購入したとき
仮想通貨(暗号資産)を決済に利用したときも、損益が発生します。
決済に利用した仮想通貨(暗号資産)の、決済時の時価と元々の差額が損益と見なされるのです。
<事例>
1BTCを1,000万円で購入後、その1BTCを1,200万円相当の商品購入代金として支払った。
通常、日本円で商品を購入した場合にこうした損益は発生しないため、つい見落としてしまいがちです。
しかし、仮想通貨(暗号資産)は価格変動のある資産であるため、決済利用であっても「①仮想通貨(暗号資産)を売却したとき」と同様に損益が生じるのです。
④キャンペーンや報酬などで仮想通貨(暗号資産)を受け取ったとき
仮想通貨(暗号資産)の取引を行っていると、キャンペーンや報酬などで仮想通貨(暗号資産)を受け取るケースがあります。
<例>
・仮想通貨(暗号資産)取引所の口座開設キャンペーンやエアドロップなど、無償で仮想通貨(暗号資産)を受け取った
・マイニングやステーキング、レンディングなどの報酬として仮想通貨(暗号資産)を受け取った
このようなケースでは、仮想通貨(暗号資産)を受け取った時点の時価がそのまま利益と見なされます。
ただし、取引所に上場される前の新しい仮想通貨(暗号資産)のエアドロップなど、受け取った時点で仮想通貨(暗号資産)の市場価値がない場合の利益は、ゼロとなります。
⑤仮想通貨(暗号資産)を第三者へ送金したとき
取引所での売買・交換や、商品・サービスの購入取引など以外による仮想通貨(暗号資産)の送金によっても、税務上の損益が発生する場合があります。
例えば、仮想通貨(暗号資産)を無償で譲渡した場合でも、税務上は時価で売却して得た日本円を譲渡するのと同じと見なされるため、その時点の時価と取得価額との差額が「利益(譲渡所得)」として課税対象になります。
<事例>
30万円で購入した1ETHを、時価40万円の時に第三者へ無償譲渡した。
この場合、この取引によって10万円の利益(40万円 - 30万円)が発生したものと見なされます。
ただ無償譲渡しただけなのに税務上は利益を得たことになってしまうという、一見するとおかしくも思える状態ですが、税務上の損益はあくまでも日本円換算で行われます。30万円で購入した1ETHを40万円で売却し、それによって得た日本円(40万円)を無償譲渡したと見なされるのです。
このように、仮想通貨(暗号資産)における税務上の損益が発生するタイミングは、感覚的な損得感覚とは異なる場合が少なくありません。基本的なパターンを覚えて、間違えることのないようにしましょう。
仮想通貨(暗号資産)の損益計算・所得算出の流れ
これまでご説明したようなタイミングで仮想通貨(暗号資産)取引などにより発生した所得は、損益計算をして確定申告を行います。
その算定方法で使用されるのが「総平均法」と「移動平均法」です。個人の場合は申請をしない限り「総平均法」が適用されます。
ここでは総平均法を用いることを前提に、この流れを、もう少し具体的に見ていきましょう。
ステップ1. 年間の全取引を集計し、実現損益を算出(総平均法の場合)
そもそも、個人の税金(所得税・住民税)は毎年1月1日~12月31日までの1年間を対象期間となります。
そのため、年間の損益を算出するためには1年間に行った全取引の損益計算を行い、その結果を集計しなければなりません。
仮想通貨(暗号資産)の損益計算の基本式は下記のとおりです。
譲渡価格(譲渡単価 × 数量) - 譲渡原価(取得単価 × 数量) = 損益 |
この数式が示すように、損益を計算するためには仮想通貨(暗号資産)の譲渡原価を把握しておく必要があります。
「総平均法」とは、1年間に行った購入や取得の取引をすべて平均して原価(取得単価)を計算し、それを全ての売却取引等に一律で適用するというものです。つまり、その年の最後の購入・取得取引を終えるまでは原価が確定せず、原価が確定したあとにまとめて損益計算を実施するのが特徴です。
なお、取引の都度、原価を計算する「移動平均法」との違いについて、詳しい計算方法については関連記事で解説していますので、ご参照ください。
総平均法・移動平均法どちらがお得?自分に合う仮想通貨の損益計算法
損益計算はコインごとに行い、合計して年間の損益が算出できます。
ステップ2.経費を差し引いて所得額を確定
仮想通貨(暗号資産)取引に直接関連する費用は、必要経費として損益から差し引くことができます。例えば、以下のようなものが経費に計上できる可能性があります。
● 仮想通貨(暗号資産)の売買にかかる取引手数料
● 取引履歴の取得や計算に使用するツール・ソフトの利用料
● マイニングにかかる電気代 など
こうした必要経費についても1年分を集計し、前項で算出した仮想通貨(暗号資産)の損益から差し引くことで、1年間の所得額を算出することができます。
経費計上が可能な費用はあらかじめ漏らさずに集計・管理しておくことで、税金額を圧縮することにも繋がるでしょう。
仮想通貨(暗号資産)の損益計算・確定申告における注意点
仮想通貨(暗号資産)取引による所得は多くの場合、「雑所得」に分類されます。
「雑所得」は税務上の特典が少ない所得区分として知られており、以下の点に注意しておくといいでしょう。
ほかの所得と「損益通算」ができない、「赤字繰り越し」ができない
「雑所得」は他の所得区分の損益と相殺する「損益通算」をすることが認められていません。ただし、同じ総合課税の雑所得同士や仮想通貨同士の場合は損益通算が可能です。
また、損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」も認められていません。
つまり、仮想通貨(暗号資産)の赤字を給与所得と相殺して節税することはできませんし、仮想通貨(暗号資産)の赤字を翌年以降に繰り越して控除することもできませんので注意しましょう。
所得が一定以上あると確定申告・納税の対象になる
算出された仮想通貨(暗号資産)取引による所得が一定額を超えると、確定申告と納税が必要になります。確定申告が必要な条件は、本人の立場や状況によって異なりますが、大まかに次のように考えることができます。
サラリーマンが副業として仮想通貨(暗号資産)取引を行っている場合
会社員や公務員などの給与所得者(サラリーマン)が副業として仮想通貨(暗号資産)取引を行っている場合、仮想通貨(暗号資産)取引による所得が年間20万円を超えた場合に確定申告が必要になります。
この場合、勤務先で行っている「年末調整」とは別に改めて確定申告を行う必要がありますので注意しましょう。
個人事業主や専業主婦(夫)、学生などが仮想通貨(暗号資産)取引を行っている場合
給与所得者以外が仮想通貨(暗号資産)取引を行った場合、全体の所得が年間48万円を超えると確定申告が必要になります。なぜこの金額かというと、年収2,400万円以下の全ての個人には基礎控除額として所得から48万円を差し引くことが認められており、仮想通貨(暗号資産)取引を含む所得全体が48万円を超えると税金がかかる可能性が生じるためです。
仮想通貨取引の利益発生のタイミングを理解して正しく申告しよう
この記事では、仮想通貨(暗号資産)取引で損益が発生するタイミングについて、事例を添えながら解説してきました。
正しく所得額を算出しないと、確定申告の要否を誤ったり、誤申告によって追徴課税などの重いペナルティを課せられる可能性も否定はできません。とはいえ、仮想通貨(暗号資産)取引の損益のタイミングを理解し、その上1年間の取引を全て日本円換算しながら損益計算するのは大変な作業となります。
そうした場合に有効なのが仮想通貨(暗号資産)専門の損益計算ツールを利用することです。
例えば、「クリプタクト」であれば、国内外130カ所以上の取引所などから取引履歴を取り込み、日本円に換算しながら自動的に損益が算出可能で、「総平均法」と「移動平均法」のどちらにも対応しています。
「クリプタクト」は年間50件までであれば無料でご利用いただけますので、仮想通貨(暗号資産)の損益計算・税金対策についてご検討中の方は、ぜひこの機会にお試しください。