仮想通貨のIEO|仕組みやICOとの違い、過去の事例や今後の予定を解説

仮想通貨コラム
ブログ一覧に戻る
仮想通貨 IEO.jpg

企業や団体などの資金調達方法のひとつに仮想通貨のIEO(Initial Exchange Offering)があります。2021年7月に国内で初めて実施され、今後も増加していくことが予想されています。

この記事では、IEOの全体像がわかるように仮想通貨のIEOの概要や同じく仮想通貨を発行し資金調達を行う手段のひとつとして知られるICO(Initial Coin Offering)との違い、過去の事例や今後予定されているIEOについても紹介していきます。

目次

  1. IEOとは?
  2. IEOの仕組み
  3. IEOのメリット・デメリット
  4. これまでのIEOの事例
  5. 今後のIEOの予定
  6. まとめ

なお、仮想通貨の損益通算ツールクリプタクトが運営している当ブログでは仮想通貨に関連のある用語やニュースについて解説する記事を定期的に公開しています。最新情報が知りたい方はクリプタクトに登録すると受け取れるメルマガの登録や公式Twitterアカウントをフォローしてみてください。

IEOとは?

IEO(Initial Exchange Offering)は、企業などの発行体がプロジェクトを行うために仮想通貨を用いて必要な資金を調達する方法のことです。発行体が仮想通貨を取引所で先行販売し、投資家に購入してもらうことで資金調達が可能です。

投資家は、当該仮想通貨が一般に取引が開始される前に、公開価格よりも低い金額で購入でき、価格が上昇したタイミングで売却すると利益を得ることが可能です。

IEO以前から行われている仮想通貨を用いた資金調達方法に「ICO(Initial Coin Offering)」があります。ICOは、発行体の企業などがプロジェクトをインターネット上で公開し、賛同する投資家に直接仮想通貨を販売する仕組みです。

ICOではIEOのように取引所を介していないため、取引所の審査を受けておらず、資金の持ち逃げといった詐欺の被害が出ていました。そこで、発行体と投資家の間に取引所を介し、取引所が仮想通貨の審査を行うことで、信頼性や安全性のある取引が可能な資金調達方法である「IEO」が誕生しました。

IEOの仕組み


IEOの仕組みは、よく株式の上場の仕組みと似ているといわれます。
株式の上場においてはまず上場を希望する企業が証券取引所に申請を行い、証券取引所が定める基準に適合しているか審査を行います。証券取引所に承認されると企業は自社が発行する株式を証券取引所で売買できる資格をもらえます。

IEOの仕組みも同様で、発行体の企業などが取引所に仮想通貨の審査をしてもらい、審査を通過した仮想通貨のみが投資家への販売対象です。

企業などは取引所を介して仮想通貨を販売するため買い手が見つけやすいという特徴がある一方、投資家は取引所の審査を経た将来性のある健全なプロジェクトに先行投資できるという特徴があります。

また、取引所にとってもIEOを行う企業などが増えると、その分手数料収入が増えることが期待できます。

IEOのメリット・デメリット

IEOはICOが抱える問題を解決するために誕生した資金調達方法なので、投資家にとってさまざまなメリットがあります。しかしその一方で、取引を行う際に気を付けたいデメリットもありますので理解しておきましょう。

IEOのメリット

【取引所の審査があるので信頼性が高い】

IEOでは取引所が仮想通貨を発行する企業やプロジェクトの審査を行い、問題ないと認められた仮想通貨のみが販売されます。というのも、取引所は自社の信頼や利益がかかっているため信頼できない仮想通貨を販売することはできないからです。

取引所の審査を経ることで、投資家は健全で安全性のある取引が可能です。ICOで横行した資金持ち去りなどの詐欺行為を行う企業やプロジェクトに投資する危険性を回避することができます。

【上場が決められている】

ICOは発行された仮想通貨が途中で上場中止となったり、上場されたとしてもマイナーな取引所だったりという例が見られました。

しかし、IEOは仮想通貨を販売した取引所に上場することがあらかじめ決められたうえで販売され、上場までのスケジュールも決まっていることがほとんどです。そのため、投資家は先行販売で購入した後は上場日を待つだけでよく、余計な不安を感じずに済みます。

【取引所利用者であればだれでも参加できる】

IEOでは、仮想通貨が発行される取引所に口座を持っている投資家であれば、だれでもIEOに参加できます(ただし、参加希望者が多い場合は抽選になることもある)。

一方、ICOでは仮想通貨を発行する企業やプロジェクトが参加できる投資家の条件を独自に決めることができるため、一定の資金力や投資実績などを満たさなければならないケースもあります。

また、ICOで仮想通貨を購入する際には、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨で支払うのが一般的でしたが、日本国内で行われるIEOでは日本円で支払うことが可能です。こういった点も投資家が参加しやすいポイントといえるでしょう。

なお、

IEOのデメリット

【上場後に価格暴落のリスクがある】

投資家は、IEOの先行販売により仮想通貨を一般販売価格よりも安い価格で購入できますが、必ずしも一般価格よりも上回ることが確約されているわけではありません。そのため、株式などと同様に市場の状況やタイミングなどによっては損失が出る可能性もあります。

IEO市場はまだ未成熟なため、上場してからの暴落リスクは低くないともいわれています。

【参加者多数の場合は抽選になる】

IEOは取引所で口座を持っている投資家であればだれでも参加できるため、魅力あるプロジェクトには多くの参加希望者が出る可能性があります。 
参加者が多い場合は抽選が行われるため、抽選に外れると購入できなくなってしまいます。

これまでのIEOの事例

これまでに、日本国内の取引所で行われたIEOの事例を3つ紹介します。

パレットトークン(PLT)/CoinCheck

パレットトークンは、マンガやアニメ、スポーツ、音楽などの日本における文化コンテンツの発展を目的として、パレットコンソーシアムの構成企業である「HashPalette社」によって販売された仮想通貨です。販売はCoinCheckが行い、国内初のIEOによる資金調達事例とされています。

2021年7月1日に購入申し込みが開始され、同月15日に終了。7月20日から抽選と受け渡しが行われ、7月29日に上場が完了しています。投資家から注目を集め、申し込み倍率は24.11倍となりました。

今回のIEOでは2億3,000万枚のパレットトークンが、1枚当たり4.05円で販売になり、売り出し価格は総額9億3,150万円となりました。

上場初日に価格は急騰し46.129円を記録。その後、2021年8月23日には98.8980円を記録するなど、販売価格の約24.4倍もの価格となりました。


FCRコイン(FCR)/GMOコイン

 FCRコイン(FCR)は日本で2番目のIEOで、クラブチームでは初のIEOとして注目されました。

FCRコイン(FCR)は、琉球フットボールクラブ株式会社(FC琉球)が発行した仮想通貨です。クラブを強化するための育成費や運営費、プラットフォーム「FC RYUKYU SOCIO」開発のためなどの資金調達としてIEOを行いました。

FCRコイン(FCR)はGMOコイン取引所で販売され、投資家はFCRコイン(FCR)を購入することで選手やチームを応援することができます。

2022年4月27日から募集が行われ、同年5月18日に上場。総額10億円の資金を調達したと報告されています。しかし、その後GMOコインが投資家への販売ルールを変更したことなどが原因で価格が急落し、結果としてIEOによる販売価格を大きく下回ることになりました。

Nippon Idol Token(NIDT)

Nippon Idol Token(NIDT)はアイドルグループの運営資金調達を目的とするプロジェクトで、株式会社オーバースが発行する仮想通貨です。2023年3月29日からcoinbookとDMM Bitcoinの2つの取引所によりIEOが実施され、4月26日に10億円の販売金額を達成しました。

NIDTは国内で4例目のIEOで、調達された資金は新規アイドル創造プロジェクト「IDOL3.0 PROJECT」の運営等に利用される予定。投資家はNIDTを使って投票権を持ち運営の一部において意思決定権を持つことやデジタルグッズの購入、コンサートなどのチケット購入などが可能です。 NIDTは、新しい形のアイドル運営方法として注目されています。

ここで紹介したほかにも、フィナンシェトークン(FT)などもあります。

今後のIEOの予定

IEOによる資金調達は今後増加すると予測されていますが、実際に予定として発表されているものがあります。 今後行われる予定のIEO情報を3つ紹介します。
いずれも2023年6月13日時点で申し込み開始日などの詳細は未定です。

DARトークン(デジタルアセットライトトークン) /CoinBest

2023年3月24日に、国内の仮想通貨取引所「CoinBest」がIEO事業に参入することを明らかにしました。第1弾として、NFTエコシステムの構築を手掛ける「DART’s株式会社」と仮想通貨DARトークン(Digital Asset Right Token)のIEO実施に関する契約を締結したと発表されています。

Japan Open Chain手数料トークン/BitTrade(旧フォビジャパン)

Japan Open Chainは国内初のブロックチェーンネットワークで、「Japan Open Chain」を基盤とし安全なWEB3事業が行えるようサポートすることを主な役割としています。

2022年12月7日に、「Japan Open Chain」の開発元であるG.U.Technologiesと仮想通貨取引所BitTrade(旧フォビジャパン)が、IEO実施に向けた取り組みについての覚書を締結したことを発表。

「Japan Open Chain」の手数料トークンを2023年にBitTrade(旧フォビジャパン)に上場することを目標とし、国内だけでなくグローバル展開も視野に入れているとのことです。

QYSコイン/GMOコイン

2022年10月18日、モバイルファクトリーは100%出資子会社の「ビットファクトリー」と仮想通貨取引所「GMOコイン」がIEOによる資金調達を行うことに関する覚書を締結したと発表しました。

今回のIEOは、誰にでも扱いやすいサービスを提供することで、ユーザー個人の財産を形成できる次世代型のエンターテインメント市場の形成を目的としています。

まとめ

IEOは、企業や団体にとっての資金調達方法のひとつで、取引所を通して仮想通貨を発行し投資家に購入してもらうことで資金を得る方法です。ICOは企業などと投資家が直接仮想通貨の売買を行うため、資金持ち去りなどの詐欺行為が起きましたが、IEOでは取引所を介すことでその弱点を克服することが可能となりました。そのため、投資家はより健全で安全な取引を行うことができます。

また、これまで法人が仮想通貨のプロジェクトを発足して仮想通貨を発行し保有した場合、期末時点の含み益に課税されていました。しかし一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会が暗号資産に係る2023年度税制改正要望書を取りまとめ、提出したことなどにより「自社発行した仮想通貨については課税対象から外す」との内容が盛り込まれた通達が2023年6月20日、国税庁より発出されました。

こうした流れを受け今後もIEOを行う企業などが増加することが予想されています。投資をする際には仕組みやメリット・デメリットをしっかりと理解して取り組むようにしましょう。