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仮想通貨のICOの仕組みや目的は?IPOやIEOとの違いも解説

仮想通貨コラム
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企業の資金調達方法にはさまざまな方法がありますが、仮想通貨を用いた資金調達のひとつとしてICO(Initial Coin Offering)があります。

この記事では、ICOとはどのようなものなのかその概要や仕組み、そしてICOと同じく投資家から出資を募ることで資金調達を行う手段として知られるIPO(Initial Public Offering)やIEO(Initial Exchange Offering)との違いについて解説します。

目次

  1. ICOとは
  2. ICOの歴史
  3. 企業がICOをする資金調達以外の目的
  4. ICOのプロセス
  5. IPOやIEOなど、その他の資金調達との違い
  6. ICOの事例
  7. まとめ

ICOとは

ICOとは企業や団体が新規に独自の仮想通貨を発行し投資家から資金を調達する方法です。日本語に訳すと「新規通貨公開」と言います。新たな仮想通貨の購入はビットコインなどのすでに取引されている他の仮想通貨で行われます。なお、ICOは 特定の投資家のみに対して行われるのではなく、一般の投資家に対して行われる形態であることから「クラウドセール」または「トークンセール」などの呼び名もあります。

資金を集めた企業等は仮想通貨の開発などが行えるようになる一方、投資家は出資した仮想通貨の価格上昇や当該事業からさまざまなサービスを受けられるなどのメリットがあります。

ICOの歴史

  ICOが世界で初めて行われたのは、2013年のマスターコイン(Mastercoin)というプロジェクトとされています。 しかし、それほど高額な資金調達はできなかったとされ、調達できた金額は約500万ドルといわれています。

翌年2014年にはイーサリアム(ETH)のICOが行われ、約1,800万ドル(約18億円)相当の資金調達に成功。これにより、ICOが資金調達の有効な手段として認知されるようになりました。      
さらに2016年5月に、The・DAOというプロジェクトがICOによりわずか28日間で約150億円もの資金調達を行った ことにより、ICOがより一層注目されました。

それ以降、仮想通貨価格が急騰するに従いICO取引も拡大しましたが、詐欺などの不正な取引も多く出現しました。そこで、より安全な取引が可能なIEO(Initial Exchange Offering)などが新たな手法が注目されるようになっています。なお、IEOについては後ほど解説します。

企業がICOをする資金調達以外の目的

企業がICOを行う目的は資金調達以外にもあります。

●独自のトークンエコノミーの構築

独自の新しい「トークンエコノミー(経済圏)」を構築することもICOの目的のひとつとされています。トークンエコノミーとは、仮想通貨(トークン)によって形成される経済圏のことをいいます。

仮想通貨の「貨幣としての性質(流動性や資産価値)」に着目し、企業のサービスなどを仮想通貨を利用して取引できるようにすることで、仮想通貨をメインとした独自の新しい経済圏を構築できる可能性があります。

●発行した仮想通貨の価値上昇

発行した仮想通貨の価格上昇を狙うこともICOの目的のひとつです。      
企業が発行した仮想通貨の知名度が上がり人気が出ると、需要が高まりより多くの取引所で取引され流通が増えるようになるでしょう。

また時価総額が高い仮想通貨になると発行側の価値も高まるため、より多額の資金調達ができる可能性があります。

ICOの実行のプロセス  

ICOは、一般的に以下のような流れで行われます。

  1. 企業などが事業計画書(プロジェクト)を発表する
  2. ICOの宣伝をする
  3. 投資家が仮想通貨を購入する

ICOでは投資家に多くの通貨を購入してもらうことで、多くの資金調達が可能となります。それゆえ、まず資金調達をする企業などは「ホワイトペーパー」という事業計画書(事業内容や企業の戦略・収益見込みなどを説明するための書類)を発表しICOの宣伝を行います。 

できるだけ多くの投資家から資金を集めるためには、株式などと同様に出資者にとって魅力的なプロジェクト・事業、仮想通貨であると感じてもらうことがポイントになります。そして投資家はホワイトペーパーなどをもとに事業や仮想通貨の将来性などを判断し、企業(投資先)から直接仮想通貨を購入します。

IPOやIEOなど、その他の資金調達との違い

ICOはIPOやIEOと「投資家から出資を募ることで資金調達を行う」点で同じであるため、よく比較されることがあります。      
それぞれどのような違いがあるのか解説します。

IPOとの違い

IPOは、未上場企業が新株の発行や売り出しをして証券取引所に上場することを指します。ICOとIPOいずれも資金調達方法という共通点がある一方、以下のような3つの違いがあります。

1.発行のしやすさ

IPOは新株を発行して資金調達を行うため、証券取引所で上場する必要があります。上場には厳しい審査やさまざまな手続きが必要なので、資金調達までのハードルが高くなりがちです。

しかし、仮想通貨は上場などの条件がなく誰でも新しく発行することが可能なので、IPOに比べ資金獲得まで比較的手間や時間がかからないことが多いといわれています。

2.対象となる投資家や規模

日本の企業が新株を発行する場合は原則として国内での発行に限られるため、対象となる投資家は国内が多く、海外からの投資家から資金を集めるのは簡単なことではありません。

一方で、仮想通貨は取り扱い当初からインターネットを介して国内外での取引が可能なので、より広範囲の投資家から資金調達することが可能となります。

3.投資家の権利や特典

株式を購入した投資家は購入した株式数に応じた議決権を持ち、株主総会への参加や経営への関与といった権利を持ちます。また、配当金や株主優待を受けられる企業も多いです。   
しかし、仮想通貨をどんなに保有していたとしても、株式でいうところの議決権や配当金といったものは原則として存在しないという特徴があります。

IEOの違い

IEOとはICO同様、仮想通貨を用いて企業が資金調達を行う方法のことですが、ICOの問題点を改善した改良版ともいえる資金調達方法です。

というのも、ICOは仲介者が存在せず、企業と投資家が直接仮想通貨の取引を行うため、企業やプロジェクトの信頼性や安全性を投資家自身が見極めなければなりません。しかし、投資家にとって見極めることは困難なケースも多く、実際に信頼性の乏しい仮想通貨を使った詐欺行為も起こりました。こうしてICO離れが起き衰退することになってしまったのです。

そこで、IEOにおいては企業と投資家の間に取引所を介し、取引所が企業やプロジェクトなどの審査を行えるようにしました。取引所により「問題がない」と判断されると、投資家に対しIEOが実施されます。こうすることで投資家は、客観的に信頼性と安全性を確認された取引が可能となります。

なお、ICOは企業等が販売しますがIEOでは仮想通貨取引所が行うという販売元の違いもあります。

ICOの事例

これまでに実施された具体的なICOの事例を紹介します。

COMSA

COMSAは、大手取引所Zaifを運営しているテックビューロ株式会社が、日本の企業がICOを行いやすくするように作成したプロジェクトのことです。2017年に国内で初めて100億円を超える高額なICOを成し遂げています。   
COMSAトークン(CMS)という自社の仮想通貨を販売し、調達した資金はCOMSAシステムの開発費用などに充てられました。   
COMSAでICOを行うと、資金調達についての手厚いサポートを受けられることや、別途手続きを踏むことなくZaifに上場できるというメリットがあります。

ALIS

ALIS(アリス)は、ブロックチェーン技術を使った日本発の分散型ソーシャルメディアプラットフォームで、ユーザーが上質な記事を生み出すことや発見することを目指して開発されたサービスです。   
ALISは、2017年に日本で初めてICOで成功を収めたことでも知られています。国内で初となるブロックチェーン技術を用いたソーシャルメディア「ALIS」の開発のために行われたICOは、開始からわずか12日間で最少の目標調達金額を達成しました。   
開始時間直後から多数の投資家が参加し、わずか4分で日本円にして1億円近くの資金を調達し、日本国内だけでなく海外からも注目されました。

Telegram

Telegramは東欧における利用者が多いチャットアプリのひとつで、シークレットチャットが可能なことや広告が出ず無料で利用できることなどが魅力のアプリです。   
Telegramは2018年にTONブロックチェーンの開発やTelegramメッセンジャーの維持・発展などを目的としてICOを行い、約892億円を調達したと発表しました。このニュースが真実であれば史上最大のICOとして注目を集めました。

イーサリアム

「イーサリアム」は、ヴィタリック・ブテリン氏によって開発されたプラットフォームのことです。そこで使用される仮想通貨をイーサ(ETH)といい、国内でもビットコインに次いで知名度の高い仮想通貨のひとつとなっています。   
イーサリアム自体がICOによる資金調達で実現し、このプロジェクトが達成されたことによりICOが認められるひとつのきっかけとなりました。

まとめ

ICOは仮想通貨を用いた企業の資金調達方法です。株式発行のように上場のための審査や手続きが必要ないため、比較的簡単に仮想通貨を調達することができます。

企業にとっては資金調達が可能である一方、投資家にとっては仮想通貨の価格上昇による利益の獲得や、事業からサービスを受けられるといったメリットがあります。しかし、ICOには信頼性や安全性において弱いという面があり、詐欺取引も横行したことで、より安全な方法が注目されています。

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