
普段、税金計算の備えを意識せずに仮想通貨取引を行っていると、確定申告の時期になってから取得単価がわからずに慌ててしまったり、計算ミスに気が付かず税務調査が入り納税額が増えて損をしてしまう可能性もあります。
この記事では、そもそも仮想通貨の取得単価はどのように計算するのか、そして取得単価がわからない場合にどうすれば良いのかについて、わかりやすく解説していきます。最後に、取得単価を自動的に算出できるツールをご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
目次 |
仮想通貨(暗号資産)の取得単価が必要となるのはなぜ?
確定申告や税金計算に向けて仮想通貨(暗号資産)取引の損益を計算するためには、取引した仮想通貨(暗号資産)を平均いくらで取得したのか、すなわち取得単価を把握しておく必要があります。
損益計算の基本は売却価額と取得価額の差額を求めることであり、取得価額は取得単価に数量の積で算出されるためです。
損益計算の基本式
売却価額(売却単価 × 数量) - 取得価額(取得単価 × 数量) = 損益 |
仮想通貨(暗号資産)を複数回購入した場合であっても、取得単価を把握しておくことで適切な損益を算出できるのです。
なお、確定申告や税金の計算についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
仮想通貨の確定申告は自分でできる!やり方を画像付きで解説!
仮想通貨(暗号資産)の税金とは?基礎と計算方法、対策も解説
仮想通貨(暗号資産)の平均取得単価の計算方法
取得単価を求める計算方法には「総平均法」と「移動平均法」の2種類があります。
それぞれ見ていきましょう。
総平均法
総平均法とは、1年間に行った取得(購入)取引の総額を総購入数量で割り、平均取得単価を算出する方法のことです。
年間の総購入金額 ÷ 年間の総購入数量 = 総平均法の取得単価 |
例 | 取引 | 数量 | 単価 | 金額 |
① | 購入 | 1BTC | 1,000万円 | 1,000万円 |
② | 購入 | 2BTC | 2,000万円 | 4,000万円 |
③ | 購入 | 2BTC | 1,500万円 | 3,000万円 |
例えば上記の場合では8,000万円 ÷ 5BTC = 1,600万円が平均取得単価となり、その年の全ての売却(譲渡)取引に対して一律で適用されます。
移動平均法
移動平均法とは、取得(購入)取引が発生する都度、それまでの平均取得単価を計算し直す方法のことです。
(直前の取得単価 × 直前の保有量 + 今回の購入単価 × 今回の購入数量) ÷ (直前の保有数量 + 今回の購入数量) = 移動平均法の取得単価 |
上記の計算を取引ごとに行い、売却(譲渡)取引にはその時点の取得単価を適用して損益計算を行います。
移動平均法では常に最新の損益状況を把握できる一方で、総平均法よりも計算が煩雑になります。
総平均法・移動平均法については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
総平均法・移動平均法どちらがお得?自分に合う仮想通貨の損益計算法
仮想通貨の取得単価がわからないときの調べ方
取引履歴が全てそろわないなど、総平均法や移動平均法による計算ができず取得単価がわからない時はどうしたら良いのでしょうか。
そのような場合は、以下の方法を試してみましょう。
①年間取引報告書を取得する
仮想通貨取引所から「年間取引報告書」を交付してもらうことで、簡単に仮想通貨の取得単価を調べることができます。
この方法は「移動平均法」を届け出ている場合は使えませんが、「総平均法」で平均取得単価を調べる場合であれば、最も簡単な方法と言えるでしょう。
「年間取引報告書」とは、利用者の1年間(1月1日~12月31日)の取引内容を集計して記載している書類のことで、金融庁が事業者に協力を要請していることから、多くの国内仮想通貨取引所が発行に対応しています。
翌年に入ってから前年分の「年間取引報告書」をダウンロードできる仕組みが一般的ですので、自身の仮想通貨取引所が発行に対応しているか確認してみると良いでしょう。
なお、「年間取引報告書」の記載事項は次の通りです。
年間取引報告書の一般的な記載事項
① 年始数量 : その年の1月1日現在の暗号資産の保有数量 ② 年中購入数量 : その年の暗号資産の購入数量 ③ 年中購入金額 : その年の暗号資産の購入金額(取得価額) ④ 年中売却数量 : その年の暗号資産の売却数量 ⑤ 年中売却金額 : その年の暗号資産の売却金額 ⑥ 移入数量 : その年に購入以外で口座に受け入れた暗号資産の数量 ⑦ 移出数量 : その年に売却以外で口座から払い出した暗号資産の数量 ⑧ 年末数量 : その年の 12 月 31 日現在の暗号資産の保有数量 ⑨ 損益合計 : その年の暗号資産の証拠金取引の損益の合計額 ⑩ 支払手数料 : その年に暗号資産交換業者に支払った支払手数料の額 |
引用:国税庁|暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)
年間取引報告書のフォーマット例

引用:国税庁|暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)
このうち、「③年中購入金額」を「②年中購入数量」で割ることで、その通貨の総平均法における平均取得単価を算出することができます。
ただし、年間取引報告書は取引所単位で発行される書類であるのに対し、税務上の平均取得単価は全ての取引所を合算して算出する必要があります。
そのため、複数の取引所で同一通貨を取引した場合は、それぞれの年間取引報告書の数量・金額を合計して計算をする必要がある点に注意しましょう。
例
A取引所とB取引所でビットコインを購入した。取引報告書の内容は下記の通りだった。 A取引所 ⇒ 年中購入金額(500万円 + 400万円) ÷ 年中購入数量(1BTC + 1BTC) = 450万円が平均取得単価 |
なお、海外の仮想通貨取引所で売買を行った場合などは年間取引報告書を取得できない場合があります。
その場合は、取引所から取引履歴情報を取得して自分自身で「年中購入金額」や「年中購入数量」を集計しなければなりません。購入金額は必ず取引時点の時価で日本円に換算する必要がある点も忘れないようにしましょう。
②仮想通貨の口座の記録を確認する
①でご紹介したように年間取引報告書や取引履歴など、売買の数量・金額が記録されているケースでは比較的容易に平均取得単価を確認することができます。
一方で、年間取引報告書が無いケースや、取引履歴が不完全なケースにおいてはどのように計算すべきでしょうか。
そのような場合は、仮想通貨の購入に利用した銀行口座の出金状況と、ウォレットへの仮想通貨の入金履歴などから取得価額を算出する方法があります。
また、取引日が分かっているのであれば、仮想通貨取引所が公表している取引相場を利用して取得価額を確認することも可能でしょう。
これらは、記録が乏しい取引の取得単価を出来る限り根拠をもって算出する方法です。
こうして確認した取引内容に基づいて購入金額・購入数量を把握し、「総平均法」や「移動平均法」に応じた平均取得単価を算出していくことになるでしょう。
仮想通貨の取得単価がどうしてもわからない場合の計算方法
どうしても取得単価がわからない場合には、いわゆる「みなし取得原価5%特例」を用いる方法もあります。
みなし取得原価5%特例とは?
本来であれば、仮想通貨(暗号資産)の売買益は売却価額から取得価額を差し引いて計算しなければなりませんが、個人間取引の記録漏れなどで計算ができない場合もあり得ます。
このような場合においては「売却価額の5%相当額」を取得価額と見なすことが認められています。
これは、先祖伝来の土地や買い入れた時期が古い株価など、取得費が不明な資産を譲渡した際に認められている特例ですが、国税庁のFAQにて仮想通貨(暗号資産)においても利用できる旨が明記されています。
参考:国税庁|暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)
計算方法
みなし取得原価5%特例を用いる場合、損益計算の式は以下のようになります。
売却価額 - (売却価額 × 5%) = 損益 |
このように、みなし取得原価5%特例を使えばたとえ取得単価がわからずとも売却価額だけで税務上の損益を算出することができるのです。
例 BTCを2,000万円で売却したが、取得単価がわからない。 ⇒ 2,000万円 - (2,000万円 × 5%) = 1,900万円の利益 |
みなし取得原価5%特例の注意点
みなし取得原価5%特例を利用する際には、いくつか注意点もあります。
- 利益額が大きくなり、本来よりも税額が膨らむ可能性がある
- 税務調査などで取得価額の根拠を求められる可能性がある
取得原価を5%とした場合、売却額の95%が課税所得となるため税額が高くなる恐れがあります。一方で極端に暴騰した銘柄の場合など、税務調査で5%の適用が適切であるか根拠を問われる可能性もあります。
「仮想通貨の取得単価がわからない!」ということが起きないような管理が重要
税金を申告・納税するためには、所得金額を把握する必要があり、当然仮想通貨の取得単価も把握が不可欠です。
しかし、そのためには1年間に行った取引を全て漏らさずに保管し、正確に計算をしなければなりません。
大量の取引履歴を無くさないように保管するだけでも大変なことですが、それらの取引履歴を複数の取引所や仮想通貨にわたって横断的に集計し、1件ごとに計算をしていく作業は非常に負担が大きいものとなります。
特に日常的にさまざまな銘柄の仮想通貨取引を行っていたり、国内外の仮想通貨取引所やDeFi(分散型金融)サービスなどを幅広く活用している場合は、購入金額が日本円以外(外貨建てや他の仮想通貨建て)で記録される場合も多くなります。 それらを日本円に換算するだけでも日が暮れる思いをしている方が多いことでしょう。
このような場合は、専用の会計ツールを活用するのがおすすめです。
仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、国内外90カ所以上の仮想通貨取引所やウォレットサービス等からの取引履歴の取得に対応しているため、仮想通貨取引の多くをシステム的に取り込んで管理することが可能です。
19,000銘柄以上の仮想通貨や各種法定通貨の時価取得にも対応しているため、取引を日本円に換算する手間もかかりません。
また、取引所を介さないような取引についても、カスタムファイルフォーマットを使って取引日時や取引量、通貨の種類などの必要事項を記入するだけで、簡単に取引情報を取り込むことができます。
クリプタクトのカスタムファイルフォーマットの例

確定申告の時期になってから、「取得単価がわからない」というような事態に陥らないためにも、日頃から仮想通貨の取引履歴を管理できる仕組みを作っておくことが非常に重要と言えるでしょう。
仮想通貨の税金計算はクリプタクト
取得単価や年間損益の計算の自動化は確定申告のときだけではなく、年中の取引においてさまざまな切り口での集計・分析にも活用することもできます。「クリプタクト」は、その両方を強力にサポートする仮想通貨専門の損益計算ツールとして、多くの仮想通貨投資家の方に活用されています。
クリプタクトのポートフォリオ・サマリー画面
クリプタクトのポートフォリオ・通貨別サマリー画面

仮想通貨のポートフォリオ管理については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、興味のある方は併せてご覧ください。
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