仮想通貨の損益計算/確定申告:「総平均法」と「移動平均法」、どちらが得?

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仮想通貨の評価方法について、どちらを選択するほうがお得なのでしょう?

損益計算だけで言えば、原則的にニュートラルですが、現在の税制では、仮想通貨自体の取引損益、他の所得等によって税率が変わるため、人によって損得の結果が異なります。


 


 

仮想通貨 譲渡原価の計算方法

仮想通貨の売買により生じる損益は、

譲渡価額 – 譲渡原価 = 所得金額

で計算されます。

 

譲渡原価の計算方法には「総平均法」、「移動平均法」があり、評価方法によって売買損益は異なります

なお、Cryptactには2つの評価方法を使った損益額を試算できる機能があるので、損益額の違いを確認する事ができます!

Cryptactのサービスページはこちら


 

「総平均法」、「移動平均法」の計算事例

ここでは、簡単な例を使って「総平均法」、「移動平均法」2つの方法による損益を比べてみます。 
尚、取引はビットコイン(BTC)の円建て売買を想定しています。

■想定取引

想定取引

この事例は、 
①「2019年にBTCを3枚買って、1枚売却した。2020年に入って、保有する2枚を売ってポジションを解消した。」 
と説明する事もできますし、取引に沿って、 
②「2019年にBTCを2枚買って、1枚売却した。12月に再び1枚購入した。2020年に保有する2枚を売ってポジションを解消した。」 
と説明する事もできます。

1年間の取引を買と売に分けて説明するか、取引の順に説明するかの差ですが、この違いこそがまさに①「総平均法」と②「移動平均法」の考え方の違いです。


 

「総平均法」による計算

ここからは上記想定取引を基に、評価方法による実現損益の違いを見ていきたいと思います。まずは総平均法です。 
 

■「総平均法」による計算事例


 

「総平均法」は、1年を通して取得したコインを平均して譲渡原価を計算するので、2019年に購入したBTC3枚の平均譲渡原価は700,000円です。

2019年4月に1,200,000円で1枚売却したので、2019年の所得金額は500,000円で、年末時点で残ったBTC2枚は、1枚700,000円 の簿価で2020年に持ち越します。

2020年に入って、1枚1,500,000円で2枚を売却したので、2020年の所得金額は、 1,500,000円 x 2枚 – 700,000円x 2枚 = 1,600,000円です。

従って、2019年500,000円、2020年1,600,000円、計2,100,000円の所得を得ました。


 

「移動平均法」による計算

続いて移動平均法です。 
 

■「移動平均法」による計算事例


 

「移動平均法」は取得する都度、譲渡原価を求める方法で、2019年2月、3月に購入したBTC 2枚の取得原価は600,000円です。

4月に1,200,000円で、1枚売却したので、所得金額は600,000円。売却後には簿価600,000円のBTC1枚が残ります。

2019年12月にBTCを900,000円で1枚追加購入したので、保有BTC2枚の取得原価は、600,000円と900,000円を平均した750,000円で、この簿価を2020年に持ち越します。

2020年に入って、150万円で2枚売却したので、2020年の所得額は、 1,500,000円 x 2枚 – 750,000円x 2枚 = 1,500,000円です。

結果、2019年600,000円、2020年1,500,000円、計2,100,000円の所得を得ました。


 

計算結果の検証

結果は以下の通りで、年毎の所得は異なるものの、2年間の損益の合計額は同じです。

想定取引2

従って税率が一律であれば、2年間の支払税額も同じになります。仮に税率が20%なら、2年間の税金はいずれの方法でも420,000円です。

しかし、現実には仮想通貨取引に係る税率は一定ではありません

仮想通貨取引は、原則雑所得で総合課税のため、他の所得との合算で税率が決まり、所得額が大きくなるほど税率も高くなる累進課税です。

従って仮想通貨で得た所得が同じだったとしても、他の総合課税対象の所得(例えば給与所得)額が違えば、適用税率が異なる場合があります。

例えば、2019年は20%の所得税率であったが、2020年には給与所得が大きく増えた結果、33%が適用されるという事が起こり得ます(高い税率が所得全体に課される訳ではありませんが、ここでは単純化しています)。

逆に、給与所得が一定だったとしても、仮想通貨の所得が増えた結果、より高い税率が適用される事もあります。 
例えば、給与所得だけなら20%の税率だったが、仮想通貨取引で大きな利益が出た結果、33%が適用されるというようなケースです。

この辺りが金融商品で一般的な、所得額に関わらず一律の税率が適用される分離課税と異なる点です。

この結果、仮想通貨取引の損益額が同じでも、納税額は異なる事があり得るため、「総平均法」と「移動平均法」のどちらが得かは、人によります。

更に一度選んだ評価方法は原則として3年間変更できないため、現時点でどちらが得か、誰も分かりません。 
従って

・計算が簡単な「総平均法」 
・実感に近い「移動平均法」 

を好みで選ぶのでしょう。

2019年分の申告から「総平均法」がデフォルトになるのも、計算が簡単だからでしょうか?計算が煩雑な「移動平均法」ですが、Cryptactを使えば、簡単に損益計算できるため、障害にはなりません。

最後に「移動平均法」を選択する人は、2020年3月16日までの届出をお忘れなく! 税務署への届出の方法などはこちらの記事をご参照ください!