
仮想通貨(暗号資産)は価格変動が大きい傾向にあるため、相場次第では非常に大きな利益を得られる可能性がありますが、一方で大きな収入を得ると納める税金も多額になることを忘れてはいけません。
この記事では、税金と確定申告に関する基礎知識に触れつつ、仮想通貨(暗号資産)で得た収入にかかる税金について、収入額ごとのシミュレーション結果をご紹介していきます。
税金計算を簡単に行える便利なツールについても紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次 |
仮想通貨の税金計算方法と税率早見表
仮想通貨取引で利益を得た場合、所得金額に応じて所得税や住民税などの税金を支払う必要があります。
なお、所得とは収入から必要経費などを差し引いた金額のことです。
所得 = 収入 - 必要経費など |
それでは、所得税と住民税の税率についてそれぞれ見ていきましょう。
所得税
所得税は、所得に対して課税される国税(国に払う税金)です。
累進課税制度が採用されており、所得金額が増えるほど税率が高くなる仕組みになっています。
所得税の税率表
(引用元:国税庁|No.2260所得税の税率)
このように、所得額に応じて5%から最大で45%もの所得税がかかることになります。
税率の各段階ごとに控除額が設定されているため、実際には各段階を超えた分だけ税金が高くなるように設計されています。(課税所得額のうち、各レンジごとの税率を適用して合計した額が最終的な税額になります。)
所得税の基本的な計算式は以下の通りです。
所得税 = 課税所得金額 × 税率 - 控除額 |
なお、仮想通貨で得た利益は「雑所得」か「事業所得」に分類されます。
事業所得の計上に関しては、原則として社会通念上の判断が求められるものの、収入300万円以上かつ帳簿保存があれば事業所得計上可能ということから、その要件を満たしていれば一律事業所得計上が可能とされています。
ただし、仮想通貨取引のみをされている方であっても仮想通貨を事業所得に計上するのは実務的にまれなケースであることから、ここでは雑所得として申請することを前提に話を薦めていきます。
住民税
住民税は、所得に対して課税される地方税(地方自治体に払う税金)です。
自治体によって多少の違いはあるものの、住民税は概ね約10%の税率が掛けられる「所得割」と、一定額が均等に課税される「均等割」で構成されています。
住民税 = 所得割(課税所得金額 × 約10%)+ 均等割(概ね5,000円程度) |
従って、所得税と住民税を合わせると、最小約15%〜最大約55%の税率がかかることになります。
仮想通貨(暗号資産)にかかる税金については、こちらの記事でも詳しく解説しています。詳細を確認したい方は、ぜひ併せてご覧ください。
仮想通貨(暗号資産)で税金がかかるタイミング
個人が仮想通貨(暗号資産)取引を行う場合、税金がかかるのは主に「取引によって利益が確定したとき」です。
例えば、仮想通貨(暗号資産)を売却して日本円に換金したとき、仮想通貨(暗号資産)同士を交換したとき、または商品やサービスの支払いに仮想通貨(暗号資産)を使用したときなどが該当します。
これらはいずれも「仮想通貨(暗号資産)を譲渡する取引」であると見なされ、確定した利益が課税対象となるのです。
上記の他にも、マイニング・ステーキング・レンディング利息などの報酬として仮想通貨(暗号資産)を受け取った場合や、エアドロップ等で市場価値のある仮想通貨(暗号資産)を獲得した場合なども、利益を得た(確定した)ものとみなされます。
このように、たとえ実際には日本円が手に入っていなくとも、経済的な利益が確定したと見なされる場合は、その時点の時価に基づいて日本円換算した金額が課税対象となります。課税対象が生じる行為は売買取引だけに限らず、利益が確定するさまざまなケースがあるため注意しましょう。
税金シミュレーション(基本編:仮想通貨取引の収入のみの場合)
それでは、実際に仮想通貨で利益を得た場合のシミュレーションを見てみましょう。
なお、ここでは仮想通貨の税金計算の基本的なイメージを掴めるように、年収が仮想通貨取引による収入のみのシンプルなケースでご紹介しています。それゆえ、税額はあくまでも基本的な控除のみを考慮した概算である点にご留意ください。また令和7年度税制改正に基づきシミュレーションしております。
国税庁:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
給与所得のある会社員や公務員の方、個人事業主の方の場合、それらの所得も考慮する必要があること、また個々人によって対象となる控除が異なるため、より詳細なシミュレーションを行いたい方はこちらの無料ツールをお使いください。
100万円区切りで紹介しています。気になる年収を以下の目次よりクリックしてください。その年収の箇所に飛びます。
目次 |
仮想通貨(暗号資産)による年収100万円のケース
まずは仮想通貨(暗号資産)取引で年間100万円の収入を得た場合は次の通りです。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 1,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,283,500円 | ▲763,500 円 |
課税される所得金額 | 0円 | 236,000円 |
税率 | 5% | 10% |
税額 | 0円 | 約28,600円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
所得税や住民税は、収入から所得控除を差し引いた「課税される所得金額」を基準に行います。(1,000円未満切り捨て)
所得税は「課税される所得金額」に前述の税率表に基づいた税率を掛け、対応する控除額を差し引くことで税額が算出できます。(100円未満切り捨て)
このケースでは所得控除額よりも収入が少ないため、課税所得はゼロとなり、所得税は発生しません。
一方、住民税は「課税される所得金額」に所得割の税額(約10%)を掛け、均等割の税額(概ね5,000円程度)を加えることで税額を算出します。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲950,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲333,500円 | ▲333,500円 |
所得控除額の合計 | ▲1,283,500円 | ▲763,500円 |
所得控除にはさまざまな種類が存在し、納税者の状況に応じて活用することができますが、ここでは基本的な「基礎控除」 「社会保険料控除」のみを考慮しています。
「基礎控除」は所得が2,500万円以下の場合に適用できる所得控除です。
令和7年に実施された引き上げによって、所得税の基礎控除は所得132万円以下は95万円、132万円超は58万円となりました。また、令和7・8年限定の特例措置として132万円超〜655万円以下は段階的に控除額が下がる仕組みが採用されています。住民税の基礎控除は一律で43万円です。
「社会保険料」については、「国民年金」と「国民健康保険」の保険料が該当します。「国民年金」の保険料は一律で定められており、令和7年度は月額17,510円です。
一方、「国民健康保険」の保険料はお住まいの自治体や年齢、家族構成等によって料率等が異なります。ここでは東京都大田区の30歳一人世帯を想定した概算を使用していますが、より詳細に確認したい方はお住まいの自治体ホームページなどを参照してみると良いでしょう。
なお、税金計算上は控除として使える社会保険料ですが、実際には税金と同じように支払わなければならないコストでもあります。
実際に手元に残る「手取り収入」は、年収から所得税・住民税・社会保険料を引くことで概算を求めることができます。
手取り収入:637,900円(概算)
年収100万円のうち、約36万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約64万円という結果になりました。
仮想通貨(暗号資産)による年収200万円のケース
仮想通貨(暗号資産)取引で年間200万円の収入を得た場合を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 2,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,317,500円 | ▲867,500円 |
課税される所得金額 | 682,000円 | 1,132,000円 |
税率 | 5% | 10% |
税額 | 34,100 円 | 118,200円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
年収100万円のケースと比較すると、課税所得の増加によって税額も増加しています。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲880,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲437,500円 | ▲437,500円 |
所得控除額の合計 | ▲1,317,500円 | ▲867,500円 |
所得が132万円を超えたため、令和7・8年の特例によって所得税の基礎控除額には88万円が適用されます。
また、年収100万円のケースと比較すると社会保険料も増えていますが、これは所得の増加に伴って「国民健康保険」の保険料が上がるためです。
手取り収入:1,410,200円(概算)
年収200万円のうち、約59万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約141万円という結果になりました。
仮想通貨による年収300万円のケース
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 3,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,421,500円 | ▲971,500円 |
課税される所得金額 | 1,578,000円 | 2,028,000円 |
税率 | 5% | 10% |
税額 | 78,900円 | 207,800円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲880,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲541,500円 | ▲541,500円 |
所得控除額の合計 | ▲1,421,500円 | ▲971,500円 |
手取り収入概算:2,171,800円(概算)
年収300万円のうち、約83万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約217万円という結果になりました。まずは仮想通貨取引で年間300万円の収入を得た場合は次の通りです。
仮想通貨(暗号資産)による年収400万円のケース
仮想通貨(暗号資産)取引で年間400万円の収入を得た場合を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 4,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,325,500円 | ▲1,075,500円 |
課税される所得金額 | 2,674,000円 | 2,924,000円 |
税率 | 10% | 10% |
税額 | 169,900円 | 297,400円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
課税所得金額が195万円を超えたため所得税の最大適用税率が10%に上がっている点と、税率をかけた金額に97,500円の控除を適用して所得税額を算出している点に注意しましょう。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲680,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲645,500円 | ▲645,500円 |
所得控除額の合計 | ▲1,325,500円 | ▲1,075,500円 |
所得が336万円を超えたため、令和7・8年の特例によって所得税の基礎控除額には68万円が適用されます。
手取り収入:2,887,200円(概算)
年収400万円のうち、約111万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約289万円という結果になりました。
仮想通貨による年収500万円のケース
続いて、仮想通貨(暗号資産)取引で年間500万円の収入を得た場合を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 5,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,379,500円 | ▲1,179,500円 |
課税される所得金額 | 3,620,000円 | 3,820,000円 |
税率 | 20% | 10% |
税額 | 296,500 円 | 387,000円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
収入の増加に伴って課税所得額が増えたため、所得税の税率が20%に上がっています。税率をかけた金額に427,500円の控除を適用して所得税額を算出しています。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲630,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲749,500円 | ▲749,500円 |
所得控除額の合計 | ▲1,379,500円 | ▲1,179,500円 |
所得が489万円を超えたため、令和7・8年の特例によって所得税の基礎控除額には63万円が適用されます。また、年収300万円のケースと比較すると社会保険料も増えていますが、これは所得の増加に伴って「国民健康保険」の保険料が上がるためです。
手取り収入:3,567,000円(概算)
年収500万円のうち、約143万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約357万円という結果になりました。
仮想通貨(暗号資産)による年収600万円のケース
仮想通貨(暗号資産)取引で年間600万円の収入を得た場合を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 6,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,483,500円 | ▲1,283,500円 |
課税される所得金額 | 4,516,000円 | 4,716,000円 |
税率 | 20% | 10% |
税額 | 475,700円 | 476,600円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲630,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲853,500円 | ▲853,500円 |
所得控除額の合計 | ▲1,483,500円 | ▲1,283,500円 |
手取り収入:4,194,200円(概算)
年収600万円のうち、約181万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約419万円という結果になりました。
仮想通貨(暗号資産)による年収700万円のケース
仮想通貨(暗号資産)取引で年間700万円の収入を得た場合を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 7,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,537,500円 | ▲1,387,500円 |
課税される所得金額 | 5,462,000円 | 5,612,000円 |
税率 | 20% | 10% |
税額 | 664,900円 | 566,200円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲580,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲957,500円 | ▲957,500円 |
所得控除額の合計 | ▲1,537,500円 | ▲1,387,500円 |
所得が655万円を超えたため令和7・8年の特例適用外となり、基礎控除額は58万円となります。
手取り収入:4,811,400円(概算)
年収700万円のうち、約219万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約481万円という結果になりました。
仮想通貨(暗号資産)による年収800万円のケース
仮想通貨(暗号資産)取引で年間800万円の収入を得た場合を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 8,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,641,500円 | ▲1,491,500円 |
課税される所得金額 | 6,358,000円 | 6,508,000円 |
税率 | 20% | 10% |
税額 | 844,100円 | 655,800円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲580,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲1,061,500円 | ▲1,061,500円 |
所得控除額の合計 | ▲1,641,500円 | ▲1,491,500円 |
手取り収入:5,438,600円(概算)
年収800万円のうち、約256万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約544万円という結果になりました。
仮想通貨(暗号資産)による年収900万円のケース
仮想通貨(暗号資産)取引で年間900万円の収入を得た場合を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 9,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,697,453円 | ▲1,547,453円 |
課税される所得金額 | 7,302,000円 | 7,452,000円 |
税率 | 23% | 10% |
税額 | 1,043,400円 | 750,200円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
収入の増加に伴って課税所得額が増えたため、所得税の税率が23%に上がっています。税率を掛けたのち控除額636,000円を差し引いて税額が算出されています。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲580,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲1,117,453円 | ▲1,117,453円 |
所得控除額の合計 | ▲1,697,453円 | ▲1,547,453円 |
手取り収入:6,088,947円(概算)
年収900万円のうち、約291万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約609万円という結果になりました。
仮想通貨(暗号資産)による年収1000万円のケース
仮想通貨(暗号資産)取引で年間1,000万円の収入を得た場合を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 10,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,710,120円 | ▲1,560,120円 |
課税される所得金額 | 8,289,000円 | 8,439,000円 |
税率 | 23% | 10% |
税額 | 1,270,400円 | 848,900円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
収入の増加に伴って課税所得額が増えたため、所得税の税率が23%に上がっています。税率を掛けたのち控除額636,000円を差し引いて税額が算出されています。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲580,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲1,130,120円 | ▲1,130,120円 |
所得控除額の合計 | ▲1,710,120円 | ▲1,560,120円 |
手取り収入:6,750,580円(概算)
年収1,000万円のうち、約325万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは約675万円という結果になりました。
仮想通貨(暗号資産)による年収1500万円のケース
最後に、仮想通貨(暗号資産)取引で年間1,500万円の収入を得た場合のシミュレーションです。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 15,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,710,120円 | ▲1,560,120円 |
課税される所得金額 | 13,289,000円 | 13,439,000円 |
税率 | 33% | 10% |
税額 | 2,849,300円 | 1,348,900円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
年収が低いケースでは住民税よりも少なかった所得税ですが、年収1,500万円では住民税の倍以上の金額となっています。所得税は所得が大きいほど税率が高くなり、税額が飛躍的に高くなっていく傾向があります。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲580,000円 | ▲430,000円 |
社会保険料控除 | ▲1,130,120円 | ▲1,130,120円 |
所得控除額の合計 | ▲1,710,120円 | ▲1,560,120円 |
国民健康保険の賦課上限額(医療:92万円)に達しているため、以降は社会保険料控除の増額はありません。
一方で基礎控除は所得が2,400万円を超えると段階的に減少し、2,500万円超では0円となります。
このように、所得が増えるにつれて税負担が増える要素は所得税の税率以外にも存在しますので注意が必要です。最終的に、年収1,500万円のうち約533万円が税金・社会保険料としてかかり、手取りは1,000万円を下回る結果となりました。
手取り収入:9,671,680円(概算)
仮想通貨(暗号資産)の収入が20万円以下でも税金を払う義務はある?
会社員や公務員などの給与所得者(サラリーマン)の場合、勤務先で実施する年末調整によって給与に関する税の申告手続きが完結しているため、給与以外の雑所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要とされています。
また主婦や学生など、給与所得者でない人は所得48万円(基礎控除額)以内であれば原則として確定申告は不要です。
ただし、医療費控除やふるさと納税など、別の理由で確定申告を行う場合は、金額にかかわらず仮想通貨(暗号資産)の収入も申告する必要があります。
また、所得税の確定申告が不要な場合でも、原則として住民税の申告は必要になるケースが一般的です。申告の要否で悩む場合は、自治体や税務署の窓口などで相談してみると良いでしょう。
収入別、税金シミュレーション(応用編:給与と仮想通貨取引の収入がある場合)
前項では、仮想通貨による収入のみがあるケースを用いて、仮想通貨の税金計算の基本的なイメージをご紹介しました。
しかし、実際には仮想通貨取引の収入だけで生計を立てられる人は稀で、主たる収入源として勤務先から給与を貰っているケースが多いことでしょう。
ここでは、サラリーマンが副業として仮想通貨取引を行っている場合の税金計算についてご紹介します。
なお、このシミュレーションは税金計算のわかりやすさを重視した、シンプルなケースに基づく概算である点にご留意ください。
給与年収250万円+仮想通貨による年収50万円のケース
それでは、給与年収250万円と仮想通貨(暗号資産)による年収50万円(総年収300万円)のケースを見ていきましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 3,000,000円 |
|
所得控除額 | ▲2,048,520円 | ▲1,598,520円 |
課税される所得金額 | 951,000円 | 1,401,000円 |
税率 | 5% | 10% |
税額 | 47,500円 | 145,100円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
同じ年収300万円でも、仮想通貨(暗号資産)取引の収入のみの場合と比較して所得税・住民税ともに少し安い結果となりました。
これは、所得控除額の違いによるものです。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲880,000円 | ▲430,000円 |
給与所得控除 | ▲830,000円 | ▲830,000円 |
社会保険料控除 | ▲338,520円 | ▲338,520円 |
所得控除額の合計 | ▲2,048,520円 | ▲1,598,520円 |
所得控除の内訳を見ると、仮想通貨(暗号資産)収入のみのシミュレーションには無かった給与所得控除が加わっています。給与所得控除は給与収入を得ている人が適用できる所得控除で、控除額が非常に大きいのが特徴です。
また、社会保険料控除についてはサラリーマンなどが加入する「厚生年金」と「健康保険」の保険料が該当します。
「厚生年金」と「健康保険」の保険料は給与の金額に応じて決まります。都道府県や加入している健康保険組合によって細かい金額は異なりますが、ここでは全国健康保険協会の東京都における保険料(令和7年度)を元に計算しています。
なお、このケースでは青色申告控除は適用していません。青色申告控除を適用するには事業所得や不動産所得が必要ですが、通常、仮想通貨(暗号資産)取引による収入が300万円に満たない規模の場合は雑所得に区分されるのが一般的であるためです。
手取り収入:2,468,880円(概算)
このケースの手取り収入は約247万円となり、仮想通貨(暗号資産)のみの年収300万円のケースと比べて多い結果になりました。給与所得控除による課税所得の圧縮効果が大きいことがわかります。
給与年収250万円+仮想通貨による年収250万円のケース
続いて、給与年収250万円はそのままで、仮想通貨による年収が250万円に増えたケース(総年収500万円)です。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 5,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,848,520円 | ▲1,598,520円 |
課税される所得金額 | 3,151,000円 | 3,401,000円 |
税率 | 10% | 10% |
税額 | 217,600円 | 345,100円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
同じ年収500万円ですが、今度は仮想通貨(暗号資産)取引の収入のみの場合と比較して所得税・住民税ともに税額が少し高い結果となりました。
「給与所得控除」や「社会保険料控除(厚生年金保険料と健康保険料)」は給与所得に応じて決まるため、仮想通貨(暗号資産)取引の収入が増えても所得控除額が増えないためです。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲680,000円 | ▲430,000円 |
給与所得控除 | ▲830,000円 | ▲830,000円 |
社会保険料控除 | ▲338,520円 | ▲338,520円 |
所得控除額の合計 | ▲1,848,520円 | ▲1,598,520円 |
給与年収に変動がないため、給与所得控除や社会保険料控除は前回と同額です。一方で仮想通貨(暗号資産)による年収が増えたことで合計所得が増加し、基礎控除額が変動しています。
手取り収入:4,098,780円(概算)
こちらも、仮想通貨(暗号資産)のみで年収500万円のケースより手取り収入が多い結果となりました。
給与年収250万円+仮想通貨による年収1,250万円のケース
最後に、給与年収250万円はそのままで、仮想通貨(暗号資産)による年収が1,250万円に増えたケース(総年収1,500万円)を見てみましょう。
所得税・住民税の計算イメージ
| 所得税 | 住民税 |
収入 | 15,000,000円 | |
所得控除額 | ▲1,748,520円 | ▲1,598,520円 |
課税される所得金額 | 13,251,000円 | 13,401,000円 |
税率 | 33% | 10% |
税額 | 2,869,500円 | 1,340,000円 |
※所得税に関しては最大適用税率を記載
仮想通貨(暗号資産)取引による収入が300万円を超えている場合、帳簿の保存等の一定条件を満たすことで事業所得として認められる可能性があります。
所得控除の内訳
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | ▲580,000円 | ▲430,000円 |
給与所得控除 | ▲830,000円 | ▲830,000円 |
社会保険料控除 | ▲338,520円 | ▲338,520円 |
所得控除額の合計 | ▲1,748,520円 | ▲1,598,520円 |
最終的に、年収1,500万円のうち約452万円が税金・社会保険料として掛かり、手取り収入は約1,048万円程度となりました。
手取り収入:10,479,580円(概算)
まとめ
今回の記事ではシミュレーションを通じて、所得が大きいほど税金や社会保険料が高くなり、手取り収入の割合が下がっていく具体的なイメージをお伝えしました。
また、所得の構成や金額に応じて適用できる控除が変わり税額に大きく影響するため、税金計算は正確かつ確実に行わなければなりません。
特に仮想通貨(暗号資産)取引においては、膨大な取引から年間利益を計算する煩雑なプロセスが必要になります。
複数の取引所やウォレットに散らばった取引履歴情報を1件も漏らさず収集し、その全ての明細を日本円に時価換算しながら、1件ごとの損益を計算していく必要があるのです。
税理士などの専門家に依頼する方法もありますが、個人投資家があまりコストをかけずに税金計算を行いたい場合は、専用のツールを活用することがおすすめです。
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