仮想通貨にかかる相続税の手続き、対策について解説.jpg

仮想通貨(暗号資産)は、今や投資や資産形成の一環として広く活用される存在となりましたが、保有者に万が一のことがあった場合、相続人(亡くなった人が遺した財産を受け取る人)が仮想通貨(暗号資産)の存在や管理方法を把握できず、うまく引き継げないケースもあります。

この記事では、そうならないためにも仮想通貨(暗号資産)を相続する前に知っておきたい問題とその対策について、わかりやすく解説していきます。   
また、のこされた人が困ることがないように、やっておきたい対策についてもぜひ参考にしてみてください。

目次

  1. 仮想通貨(暗号資産)を相続する際にかかる税負担   
  2. 仮想通貨(暗号資産)の相続で直面する可能性のある3つの問題とその対応策   
  3. 仮想通貨(暗号資産)をのこす側ができる備えとは? 
  4. 仮想通貨(暗号資産)保有者の生前対策・節税方法の具体例
  5. まとめ

仮想通貨(暗号資産)を相続する際にかかる税負担

「相続」とは亡くなった方(被相続人)の資産を残された人(相続人)が受け継ぐ手続きのことです。

そして、仮想通貨(暗号資産)の相続にあたっては、他の資産とは異なる相続後の税負担があるため、事前に正しく理解しておくことが重要です。具体的に見ていきましょう。

最大110%課税リスク

仮想通貨(暗号資産)を相続した場合、「評価額よりも多くの税金を支払うことになる」ケースがあります。

その理由は、「相続税」と「所得税・住民税」が二重で課税される仕組みであるためです。

仮想通貨(暗号資産)を相続した場合はその評価額に対して最大55%の相続税がかかります。 

相続税の速算表

引用:国税庁|No.4155 相続税の税率   
 

一方で、相続した仮想通貨(暗号資産)を相続人が売却した際には、その売却益に対して最大55%の   所得税・住民税が別途かかるため、以下のように合計で110%の課税が生じる可能性があるのです。

所得税・住民税 : 最大55%   
相続税     : 最大55%   
合計      : 最大110%

もちろん、すべての相続で110%もの税負担が発生するわけではありません。

実際に税率が合計110%になるには、相続額が6億円を超える規模でありかつ売却時の利益も巨額になる事例に限られます。

税率が合計110%になるサンプルケース

1,000万円で購入した仮想通貨(暗号資産)の価格が100倍に高騰し、評価額が10億円となった。   
その状態で保有者が亡くなったため、相続が行われた。

⇒相続税の税率 55%

相続人は相続税を支払うために仮想通貨(暗号資産)を全て売却することにした。   
取得価額は生前の1,000万が引き継がれるため、10億円の売却額に対して9億9千万円の所得が発生した。

⇒所得税の税率 45% 住民税の税率 10%

合計税率 110%

このように「最大110%の課税」はあくまで極端なケースですが、仮想通貨(暗号資産)特有のボラティリティ(価格変動)の高さを考えると、誰の身にも起こる可能性があります。

特に保有している仮想通貨(暗号資産)に大きな含み益がある場合は、注意しておく必要があるでしょう

仮想通貨(暗号資産)の相続で直面する可能性のある3つの問題とその対応策

上記のほかにも、仮想通貨(暗号資産)の相続には他の資産にはない特有のリスクが存在します。

ここでは、相続人(資産を受け継ぐ人)が直面しやすい3つの代表的なリスクと、それぞれに対する基本的な対応策を見ていきましょう。

①アクセス情報の喪失

仮想通貨(暗号資産)は、現金や不動産のように目に見える資産ではなく、仮想通貨(暗号資産)取引所の口座や自己管理のウォレットにデジタルデータとして保管されています。

そのため、相続人が相続手続きを行う際には、故人が保有していた仮想通貨(暗号資産)が「どこに」「どれだけ」存在するのかを把握するところから始めなければなりません。

故人がどの取引所やウォレットを利用していたか、そのログイン情報や秘密鍵・復元フレーズなど、仮想通貨(暗号資産)へのアクセス情報を分かりやすく残してくれていれば問題はありません。

しかしそうした情報が無い場合は、相続人が仮想通貨(暗号資産)の存在を把握できず、資産を失ってしまうリスクがあるのです。

相続人ができる対応策としては、故人の使用端末や書類、メールなどから情報の手がかりを探すことが考えられます。また、特定の取引所の利用が判明している場合は、相続人として正式な手続きを踏むことでサポートを受けられる可能性もあるでしょう。

とはいえ、こうした対応はあくまで「後手」の対応であり、本来は生前にアクセス情報が整理された状態で残っていることが最も重要です。

②評価額や取得価額が不明な場合

仮想通貨(暗号資産)の相続においては、相続時の評価額(時価)と、被相続人が購入したときの取得価額の両方を把握することが求められます。

仮想通貨(暗号資産)の評価額は相続税の算出に必要であり、正確な評価額を把握していないと相続税の誤申告に繋がる恐れがあります。

評価額の算出方法は、 その銘柄に活発な市場が存在する(取引所に上場されていたり、売買の頻度が高い状態であること)か否かによって異なります。

活発な市場が存在する場合は、相続発生時(被相続人が亡くなった日)におけるその仮想通貨(暗号資産)の取引価格(市場価格)を用いて評価額を算出します。

● 相続発生時における取引所の残高証明書の金額を採用       
● 相続発生時における取引所・販売所等の取引価格を採用   
● 会計ツールや価格追跡サイトが提供する価格情報を採用 など

なお、活発な市場が存在しない銘柄の場合は、その仮想通貨(暗号資産)の内容や性質などを勘案し、個別に評価をする必要があります。

必要に応じて税務署の相談窓口や税理士などに相談しつつ、慎重に判断するようにしましょう。

一方、取得価額は、相続人が仮想通貨(暗号資産)を売却する際の損益計算に用いられます。   
取得価額は、特に不明となりやすいため注意が必要です。

故人が仮想通貨(暗号資産)を「いつ」「いくらで」「どれだけ」購入したのか記録していれば取得価額の把握がスムーズにできますが、そうした記録が無い場合はどうにかして取得価額を算出し、税務署が納得する説明をする必要があります。

取得価額の証明ができずに「取得価額ゼロ」と見なされれば、売却時に全額が利益となり、多額の所得税・住民税がかかってしまうことになるでしょう。

相続人ができる対応策としては、故人の利用していた取引所の取引履歴やウォレットアドレスなどから情報を探し、購入時の金額を裏付けられる資料を収集する方法があります。

また、どうしても取得価額が分からない場合には、譲渡価格の5%を取得費と見なす取り扱いが認められる場合もありますが、それでも売却額の大部分が利益とされ、多額の課税が生じる可能性がある点には注意が必要です。

やはり、生前に取引履歴を整理し、取得時の情報を正確に残されていることが最も重要でしょう。

③相続税の納税資金が不足する場合

仮想通貨(暗号資産)は、相続税の計算上は他の資産と同様に日本円換算の時価で評価され、納税も基本的に日本円で行う必要があります。

例外的に不動産や有価証券などによる物納が認められることもありますが、仮想通貨(暗号資産)は現時点で物納の対象には含まれていません。

そのため、仮想通貨(暗号資産)の相続によって多額の相続税が発生する場合は、日本円の納税資金が不足するリスクがあるのです。

このような場合、相続人は仮想通貨(暗号資産)を売却して現金を確保し、納税に充てる必要があります。

しかし、仮想通貨(暗号資産)は一般的に価格変動が大きく、相続時よりも大幅に値下がりしたタイミングで売却を余儀なくされると、資産が目減りする一方で、相続税の納税義務はそのまま残るという事態に陥る可能性もあるのです。

相続人ができる対策としては、仮想通貨(暗号資産)を安易に売却せず、市場価格の動向や見込まれる売却損益、税金への影響などについて慎重に見極めることが重要です。

また、状況によっては税務署に申請することで「延納(分割払い)」の制度を利用できる可能性もあります。

仮想通貨(暗号資産)をのこす側ができる備えとは?

仮想通貨(暗号資産)は、相続時にアクセス情報や取引履歴、保有状況(ポートフォリオ)などが整理されていないと、相続人がその存在に気づけなかったり手続きが非常に煩雑になったりする可能性があります。

こうした事態を避けるためには、資産を残す側(被相続人)が生前にできる備えを講じておくことが重要です。具体的な備え方について見ていきましょう。

セキュリティと記録整理

仮想通貨(暗号資産)は、秘密鍵やウォレットの復元フレーズ、取引所のログイン情報がなければアクセスできない性質を持っています。そのため、万が一の際には残された人がスムーズに資産を引き継げるよう、情報の整理と保管方法の工夫が不可欠です。

具体的には、以下のような情報を記録しておくと良いでしょう。

● 使用している仮想通貨(暗号資産)取引所とそのログイン情報   
● 自己管理ウォレットの種類と秘密鍵・復元フレーズ   
● 保有銘柄と数量を一覧にしたポートフォリオ   
● 取引履歴や取得価額の記録

とはいえ、これらの情報は仮想通貨(暗号資産)の保管や安全性に関わる重要な情報でもあります。

特にログイン情報や秘密鍵・復元フレーズなどは、紙に印刷して封筒に封入のうえ公正証書遺言に添付するなど、セキュリティ性と備えのバランスを考慮した保管方法を検討する必要があるでしょう。

なお、保有銘柄と数量を一覧にしたポートフォリオや取引履歴・取得価格の記録については、取引をするたびに更新される内容であるため、上記のような保管方法は不向きです。

このような情報については、仮想通貨(暗号資産)の損益計算機能やポートフォリオ機能を搭載した会計ツールを使う方法が便利でしょう。

例えば、仮想通貨(暗号資産)専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば日々の取引履歴を読み込ませておくことで、「どの取引所を利用しているか」「どの銘柄をいくら保有しているか」「銘柄ごとの取得価額」などの情報を正確に記録しておくことが可能です。

毎年の確定申告に向けた損益計算と並行して活用できるため、無理なく記録を整理することができるでしょう。

仮想通貨(暗号資産)保有者の生前対策・節税方法の具体例

上記の他にも、大切な資産を残す側としてできる生前対策・節税方法があります。

具体的に見ていきましょう。

①生前贈与を活用する

仮想通貨(暗号資産)を生前に贈与することで、相続財産としての課税対象額を減らすことができます。贈与税の非課税枠を活用すれば、年間110万円までは贈与税がかかりません。

ただし、贈与の際も仮想通貨(暗号資産)の時価評価が必要であり、また贈与者と受贈者の双方に記録が残るようにしておく必要があります。

②巨額の含み益がある状態はできるだけ避ける

先述したように、巨額の仮想通貨(暗号資産)を相続した場合は最大110%も課税されるリスクが存在します。

相続の観点では巨額の含み益がある状態が危険と考えられますので、そのような状態をできる限り避けることで、リスクを軽減することが可能です。

例えば、他の銘柄で損失が発生した年は含み益がある銘柄を売却することで利益と損失を相殺させ、課税されることなく含み益を解消していく方法などが考えられます。

「クリプタクト」などの仮想通貨の損益計算ツールを活用すれば、リアルタイムで実現損益や含み損益を正確に把握し損益計算ができるため、このように税金の着地点を想定しながら取引をコントロールすることも可能です。

③仮想通貨(暗号資産)が巨額の場合は生前に売却する

相続税と所得税の合計が最大110%になる可能性があるのは、仮想通貨(暗号資産)の所得に対する税金が高い(所得税と住民税の合計が最大約55%)ことが原因の一つとしてあげられます。

仮に、現金で相続がなされた場合は、相続後に多額の所得税及び住民税を払う必要はありません。

そのため、巨額の含み益の仮想通貨(暗号資産)を保有している場合は、売却して現金化し、売却益に対する所得税及び住民税を支払った上で、相続財産は現金とする、というやり方も有効な手段となります。

まとめ

この記事では、仮想通貨の相続についての基礎知識や相続の手順、計算方法や注意点などについて解説してきました。

また、ご自身に万が一のことがあった際に備えて、遺す側(被相続人)として相続対策を考える際の注意点についてもご紹介しました。

仮想通貨取引はボラティリティが高く、大きな利益を得られる可能性がある一方で、高い税率によって巨額の納税が発生しやすい傾向にあります。

仮想通貨の税金について正しい知識を身に付けておくことで、大切な資産を守り、育てていくことに繋がることでしょう。

仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」が運営している当ブログでは、こうした仮想通貨取引に関する税金対策・節税対策や、知っておきたい最新トレンドなどの情報を定期的にお届けしています。

最新情報を知りたい方は、「クリプタクト」への無料登録で受け取れるメルマガや、公式X(旧Twitter)アカウントのフォローなどをぜひ活用してください。