仮想通貨の取引で損失が出ている場合の税金は?確定申告の判断基準を解説

仮想通貨(暗号資産)の取引で一定額以上の利益が出た場合、原則として確定申告が必要です。

それでは、損失が生じている場合は確定申告や納税が必要無いと決めつけてしまって良いのでしょうか。実は、仮想通貨取引で損失が生じていても、確定申告や納税が必要になる場合があります。

この記事では、仮想通貨の取引において損失が出た場合の確定申告や税金計算の要否について解説するとともに、知っておくべき基礎知識として損失が生じている場合にできる税金対策についてもご紹介していきます。

目次

  1. 仮想通貨(暗号資産)の取引で損失が出た場合、確定申告や税金はどうなる?
  2. 仮想通貨(暗号資産)での損失の有無にかかわらず確定申告が必要なケースもある
  3. 仮想通貨(暗号資産)取引で損失が出ても税金計算は必ずしたほうがいい
  4. 仮想通貨(暗号資産)取引で損失が出たときに知っておくべき基礎知識
  5. 仮想通貨(暗号資産)の損失と利益を正確に計算し、税金を正しく申告しましょう

仮想通貨(暗号資産)の取引で損失が出た場合、確定申告や税金はどうなる?

まずは、仮想通貨取引で損失(赤字)が出た場合の基本的な考え方について見ていきましょう。

仮想通貨による所得にかかる税金

仮想通貨取引で得た利益は、原則として所得税のなかの「雑所得」に分類されます。

雑所得とは、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得のいずれにも該当しない所得のことをいい、仮想通貨取引で得た利益以外ではたとえば年金所得、副業で行ったライティング業務の原稿料などが該当します。 

 一般的に会社員が副業として仮想通貨の取引を行った場合は、雑所得が20万円を超えると確定申告の対象となります。      
また、会社に勤めていない専業主婦や個人事業主などの場合は総所得が48万円を超えると確定申告が必要になります。

この際、「20万円」や「48万円」といった基準は、利益ではなく「所得」で判断するという点に注意が必要です。所得とは、仮想通貨取引で得られた利益から必要経費を差し引いた金額のことをいいます。必要経費には、主に取引手数料や出金時の手数料、仮想通貨の取得費用などが該当します。

仮想通貨取引の税金や確定申告についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

損失だけなら確定申告は原則不要

仮想通貨取引の損益がマイナスとなっている場合は、そもそも仮想通貨取引による所得がありませんので、仮想通貨取引を原因とする確定申告は必要ないと言えます。

ただし、仮想通貨以外での所得がある場合や医療費控除を申告する場合など、仮想通貨取引以外の原因で確定申告が必要な際はこの限りではありません。そうした確定申告は、たとえ仮想通貨による利益が20万円以下だったとしても、雑所得欄に利益分の金額を記載しなければなりません。

また、仮想通貨取引で損失が確定したことにより確定申告が不要であっても、仮想通貨で損失が出たという状況のわかる計算資料などを保管しておくことが大切です。

これは、確定申告を実施していなくとも、仮想通貨投資を行っているために税務調査が入る可能性があるためです。そのような際に、調査官にその年度の仮想通貨投資は損失だったので確定申告を行っていないという説明ができるような資料が必要になるのです。

税務署は、投資家が仮想通貨投資をしているという情報を、仮想通貨取引所から直接把握しています。仮想通貨投資をやっているにもかかわらず、確定申告をしていない状態なので税務署から質問が来る可能性があることを念頭に置いておきましょう

仮想通貨(暗号資産)での損失の有無にかかわらず確定申告が必要なケースもある

仮想通貨取引で損失が出ているかどうかにかかわらず、確定申告が必要になるケースがあります。具体的に見ていきましょう。

会社員でも20万円超の所得がある場合

たとえ仮想通貨取引で損失がでていても、他の雑所得と合算することで確定申告が必要になるケースがあります。

雑所得は他の所得区分(給与所得や不動産所得など)と損益通算することができませんが、同じ雑所得であれば損益を通算できます。

そのため、仮想通貨取引が損失(赤字)であっても他にそれ以上の利益があれば通算してプラスとなり、雑所得が20万円を超えれば確定申告の対象になるのです。

副業や事業所得がある場合

副業でフリーランスの仕事を行っている場合や、個人事業主として事業所得を得て生活している場合、総所得が48万円を超えると仮想通貨の損益に関係なく確定申告が必要になります。

この際、仮想通貨取引による所得も含めて申告することになりますが、仮想通貨取引で得た所得は雑所得に分類されるため、事業所得などのほかの所得と損益通算することはできません。

ただし同じ雑所得同士であれば、同一年内における利益と損益を相殺(損益通算)できるため、利益を圧縮することで節税効果が期待できます。 
なお、損益通算の事例については以下の記事をご覧ください。

仮想通貨(暗号資産)取引で損失が出ても税金計算は必ずした方が良い

仮想通貨の取引で損失が生じたかどうかにかかわらず、確定申告をする前には正確な損益計算が必要です。

たとえば、実際には利益が出ていた場合でも体感で損失が出ていると思い込み確定申告を行わなかった場合、延滞税や過少申告加算税、無申告加算税、重加算税などの支払いが発生する可能性があります。

さらに、仮想通貨投資においては、投資開始年度からの損益計算を実施しないと、当年度の正しい損益計算は実施することができない、という性質があります。

つまり、仮想通貨投資を2年間やっていて、1年目は損失で2年目は利益の場合、2年目の正しい利益の金額を計算するためには、1年目の正しい期末平均取得単価と損失の金額を算定しなければなりません。

これは、投資開始年度からのすべての取引を分析しないと、前年度から引継ぐ平均取得単価がわからず、当年度の正しい損益計算は実施できないことが理由です。そのために、損失の年度であったとしても正しく損益計算を実施することが、翌年以降の利益が出た時にも有用になるのです。

仮想通貨取引における損益を計算する方法には、主に「総平均法」と「移動平均法」のふたつがあります。

総平均法は一定期間内の購入金額を購入数で除して計算する方法で、移動平均法は仮想通貨を購入するたびに取得価格を計算する方法です。

「総平均法」と「移動平均法」について知りたい方はページ下部の関連記事をご覧ください。

個人で仮想通貨の取引を行い所得がある場合、総平均法で計算するのが一般的ですがこの計算方法では、期間内全体の購入金額(時価)合計を購入数量合計で割って算出する必要があるため、エクセルなどの管理では取引量が多くなればなるほど抜け漏れが発生しやすく管理が大変になります。

こうした問題を回避し、正確な損益計算を行うには、自動計算ツールの利用がおすすめです。

仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」なら口座をお持ちの取引所での取引履歴をアップロード、またはAPI連携を行うだけで、自動で損益計算を行うことができます。

仮想通貨(暗号資産)取引で損失が出たときに知っておくべき基礎知識

税金の基礎知識を知らないと、誤申告や余計な税負担を招く恐れがあります。損失が出たときに大事な基礎知識について見ていきましょう。

昨年度に総平均法を採用した人は要注意

仮想通貨の損益計算は「総平均法」と「移動平均法」の2種類があり、一度選択した方法は翌年以降も継続して使用する必要があります。

年度ごとに都合よく変更することは認められていないのです。

特に総平均法は、個人が申告時に特段の届出をしない場合に自動的に採用されるため、意識しないまま選択している人も多いことでしょう。

自覚なく計算方法を変更しないよう、計算方法の選択には注意が必要です。

計算方法によって所得額が変わる可能性

総平均法は取得した仮想通貨の平均取得単価を用いるため、価格変動が大きい場合でも計算が単純で安定的です。

一方、移動平均法は取引のたびに取得単価を更新して計算するため、直近の取引価格が取得単価に反映されやすくなります。

この違いにより同じ取引履歴でも計算結果に差が出るため、単年度では計算方法によって所得額が変動することがあります。

この差は長期的にみると平均化されているため、あくまでも単年度の誤差にすぎません。それでも、所得額の変動は税率・税額の変化に繋がりますので、どちらの方法が自分の取引スタイルに適しているかを見極めることが重要です。

仮想通貨の損益最適化が税金対策につながる

仮想通貨の取引において損失が生じた場合でも、その状態を適切に活用することで税金の負担を軽減できる可能性があります。

例えば、他の仮想通貨銘柄やFX取引など「雑所得」の範囲内で利益が出ている場合、その利益と同じ年度の損失を相殺することで課税額を減らすことが可能です。
こうした手法は「損益最適化」または「タックスロスハーベスティング」と呼ばれ、含み損を抱えている銘柄を売却して損失を確定させることで、他の利益と相殺することができます。

仮想通貨の損益最適化イメージ図


同様に大きな損失を被った場合には含み益のある別の銘柄を売却し、その利益と損失を相殺することで税負担を抑えることも可能です。

株式や投資信託などと異なり、仮想通貨取引で発生した損失は翌年以降に繰り越すこと(繰越控除)が認められていません。

 そのため、年内に「損益最適化」を行い課税所得を可能な限り「0」に近づけておくことで、翌年に売却する場合と比べて大きな節税となる可能性があるのです。このような調整を行うには、取引ごとの損益計算を通じて正確な損益状況を把握することが不可欠です。

仮想通貨(暗号資産)の損失と利益を正確に計算し、税金を正しく申告しましょう

仮想通貨の取引で損失が発生している場合は、原則として確定申告は不要です。しかし、仮想通貨以外の所得がある場合や医療費控除の申告をする場合などは、たとえ仮想通貨の取引で損失が出ていても確定申告は必要になります。

仮想通貨で得た所得に対する税金を抑えるためには、同じ雑所得内で損益通算して利益を圧縮することや含み益や含み損のある仮想通貨を同一年内に売却し損益確定することで、当年または翌年の課税所得を減らし税金の支払い負担を軽減することも可能です。

税金を正しく申告できるよう、仮想通貨の損益を正確に把握して備えておくことをおすすめします。