(更新日: )

仮想通貨取引の所得は損益通算できる?所得区分や課税方法に注目

確定申告
税金・税制
ブログ一覧に戻る
仮想通貨 損益通算.jpg

損益通算とは、利益と損失を相殺することをいい、課税所得が減少するため納税額を圧縮できる効果があります。 
たとえば、給与所得を得ているサラリーマンが副業を手掛け、副業の事業所得が赤字になった場合、給与所得と事業所得を損益通算することにより、源泉徴収で納税済税金の還付を受けることが可能です。 

しかし、損益通算できる所得には制限があり、損益通算できる所得とできない所得があります。この記事では、仮想通貨で得た所得は損益通算できるのか、損益通算をする場合の節税のコツについても併せて解説していきます。 
 


 

仮想通貨で得た所得は損益通算できるか?

結論として、仮想通貨で得た所得は以下の条件すべてと合致した場合のみ損益通算が可能です。

● 「雑所得」に該当するものであること
● 「総合課税」の対象であること
● 同一年内に発生した損益であること

まず、仮想通貨の取引で得た所得は、基本的に所得税のなかの「雑所得」に分類されます。雑所得とは、その他所得税の対象となる、給与所得・退職所得・不動産所得・事業所得・山林所得・利子所得・配当所得・譲渡所得・一時所得の9つの所得のいずれにも該当しない所得のことです。
仮想通貨の収益以外には、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。

雑所得は多くの場合、総合課税(各種の所得金額を合計して所得税額を計算する)の対象であり、その他の所得と損益通算ができません。

ただし、同じ雑所得の総合課税の対象となるもの、かつ同一年内に発生した損益とは損益通算することができます。

どんなものが具体的には対象となるのかいくつか事例を紹介します。

● 仮想通貨の取引で生じた損益
たとえばビットコイン(BTC)取引で生じた利益とリップル(XRP)取引で生じた損失は相殺可能です。また、仮想通貨取引で生じた損失をソーシャルレンディングの分配金と損益通算することもできます。
なお、仮想通貨取引が事業認定された場合は、事業所得となるため取扱いが異なります。

● メルカリなど、フリマやオークションなどの損益
メルカリなどのフリマサイトやネットオークションなどの取引で生じた損益は、原則として雑所得に区分され、仮想通貨の損益と相殺することが可能です。
ただし、副業としてではなく事業的規模で行う場合は事業所得となり、損益通算はできません。とはいえ、フリマサイトやネットオークションを行っている方のほとんどは雑所得に区分されることが多いです。

● アフィリエイト収入
アフィリエイトにより得た収入も雑所得に区分されるため、仮想通貨の損益と相殺可能です。
アフィリエイトで利益を得た一方、仮想通貨で損失が出ている場合、損益通算して総合課税の税額が計算されます。

● 外貨預金の為替差による損益
外国為替に絡んだ取引であっても、外貨預金で生じた為替差損益は総合課税なので、仮想通貨取引との相殺が可能です(但し、外貨預金の利息は、利子所得のため、雑所得の損失とは損益通算できません)。

● 海外のFX損益
FX取引でも海外FX取引では分離課税が適用されず、損益通算が可能なケースがあります。

● ポケモンカード売買の損益
営利目的で売買を繰り返す場合は課税対象となる可能性があり、副業レベルであれば雑所得に、事業的規模で行えば事業所得に区分されます。

ただし、そもそもポケモンカードの売買で得た利益は、課税の対象になるかどうか判断が難しいケースがあります。というのも、ポケモンカードが「生活用動産」と認識され「不要品の処分」のために行った売買であれば非課税になるのです(ただし、売値が30万円を超える場合は生活用動産とは認められず課税対象になる)。

もし、雑所得に区分される場合は仮想通貨の損益と相殺が可能です。仕分けが難しいですが、損益通算ができれば納税額を圧縮できることや、納付済の税金の還付を受けられることもあるので仮想通貨の取引で得た所得以外の所得と損益通算したい場合には対象となるか確認してみましょう。

ちなみに、仮想通貨取引で生じた赤字は、翌年度以降に繰り越すことはできません。事業所得などは赤字を翌年以降に繰り越し損益を計算することが可能ですが、仮想通貨の場合、税法上は損失も利益も毎年リセットされるのです。

仮想通貨で節税をするためには、経費の計上や損益通算を活用して所得を圧縮することが重要です。

仮想通貨の所得の損益通算で節税する方法

まず節税するためには実現損益をできるだけ0に近づけることが重要です。
というのも、仮想通貨の取引で得た所得にかかる税金は累進課税のため所得が大きくなればなるほど税率も高くなるからです。また、仮想通貨での損失は次年度以降に持ち越すことはできないといったことも理由のひとつです。

では、どのように損益通算によって納税額の圧縮や納付済の税金の還付を受けられるようにするのでしょうか。個々人の状況によって対策が変わってきますので以下の説明に沿って対策をご検討ください。
    
まずそれぞれの仮想通貨の種類別に損益を計算しましょう。     
仮想通貨の損益(実現損益)は以下の計算式で求められます。

実現損益の計算式

売却金額-(取得単価×売却数量)

たとえば、取得単価が150万円だったビットコインを3枚500万円で売却した場合は、以下のように計算します。
損益=売却金額500万円-(取得単価150万円×売却数量3枚)=50万円

保有している仮想通貨それぞれにおいて上記のような計算を行い、各仮想通貨の損益を算出し、その合計が仮想通貨全体での損益となります。そして、以下のようなケースでは損益通算を行うことで節税につながります。

【①合計所得がプラスで含み損がある場合】

仮想通貨全体では利益が出ていても、個々の仮想通貨の中には含み損を抱えているものがあるケースがあります。課税所得を圧縮するために、含み損を抱えている仮想通貨を売却し損失を確定すると、仮想通貨全体の利益を圧縮することができます。

たとえば、仮想通貨全体で200万円の利益があってもイーサリアム(ETH)が50万円の損失を抱えている場合、イーサリアムを売却し損失を確定することで仮想通貨全体の利益を150万円に圧縮することが可能です。

※含み損:仮想通貨の購入時よりも時価が値下がりしているときの差額

【②合計所得がマイナスで含み益がある場合】

上記①とは逆のケースで、仮想通貨全体では損失となっていても、含み益のある仮想通貨がある場合は、売却し利益を確定することで仮想通貨全体の損失を縮小することが可能となります。

この場合、売却するタイミングが重要で、たとえば仮想通貨全体では200万円の損失があってもイーサリアムが80万円の含み益を内包している場合、同一年内にイーサリアムを売却し利益を確定すれば、仮想通貨全体の損失は120万円となります。

しかし、イーサリアムを翌年に売却した場合は、80万円は利益となり課税対象となってしまうのです。

仮想通貨の取引で生じた損失は翌年に持ち越すことができないため、年内に利益確定をすることで翌年度以降に発生する可能性のある所得を抑えることが可能となります。

※含み益:仮想通貨の購入時よりも時価が値上がりしているときの差額 

まとめ

仮想通貨の取引で得られた利益は雑所得に該当し、原則として雑所得内であれば損益通算が可能です。ただし、給与所得や事業所得などとは損益通算できないため、勤務先からの給与や事業として得た利益などとは相殺することはできません。なお、仮想通貨取引で得た所得にかかる税金や税率の詳しい内容については以下の記事でご紹介しています。

仮想通貨の利益を損益通算を利用して節税するには、各仮想通貨の損益を算出し含み損益を確定することで、所得の圧縮ができたり翌年度以降の課税を防いだりすることが可能となります。