ステラルーメン(XLM)とは?ホワイトペーパーから読み解く特徴や将来性について 解説
ブログ一覧に戻る2014年にリップル(XRP)の元開発者、ジェド・マカレブ氏が主導して開発されたステラルーメン(XLM)。 2023年7月現在、時価総額27位となっています。
「ステラルーメン(XLM)に投資してみたいが、話題性や時価総額だけで判断してしまっていいのか」と不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめなのが、仮想通貨の計画書にあたる「ホワイトペーパー」の情報から判断材料を集めてみる方法です。
この記事では、投資する上での重要なステラルーメン(XLM)の特徴、将来性について仮想通貨の計画書にあたる「ホワイトペーパー」を参照しながら解説していきます。
そもそもホワイトペーパーとは?
仮想通貨のホワイトペーパーとは、プロジェクト運営者などによって発行される仮想通貨の説明資料を指します。一般的に開発目的や技術的な特徴、今後のロードマップなどの詳細情報が記載されています。
その他の金融商品に投資をしている方はご存じかもしれませんが、金融商品の購入時には必ず目論見書に目を通しその対象についてしっかり把握することが重要です。
特に仮想通貨は裏付け資産が無い場合が多いため、ホワイトペーパーに記載されたプロジェクトの内容そのものがその仮想通貨の価値を裏付ける非常に重要な要素となります。
それでは、具体的にはホワイトペーパーのどの部分に注目すればよいのでしょうか。
代表的なポイントとして次の点が挙げられます。
● 開発目的
● アルゴリズム
● 体制(セキュリティ対策を含む)
● 発行上限
● 目標
これらを把握することによってその通貨の特徴そして将来性について判断するのに役立ちます。
ステラルーメン(XLM)の特徴
ステラルーメン(Stellar Lumens)は、グローバルな送金取引を円滑に行えるようにすることを目的として開発された「ステラ(Stellar)」と呼ばれるブロックチェーン上で使用されている仮想通貨です。一般的に通貨単位はステラルーメン(Stellar Lumens)もしくは省略してルーメン(Lumens)が用いられており、通貨記号はXLMです。
それでは、ステラルーメン(XLM)の特徴について見ていきましょう。
開発目的
ステラルーメン(XLM)はグローバルな送金取引を円滑化する「ブリッジ通貨」として開発されました。
ホワイトペーパーの「INTRODUCTION」では、従来のグローバル送金の現状について次のような見解を示しています。
● 現在の金融インフラは複雑かつ閉鎖的である
● そのため極めて高コストで送金に長時間を要する
● この摩擦が金融サービスの成長を阻害し、多くの人々がサービスを利用できない
ここでいう現在の金融インフラとは銀行などの金融機関のことです。
日本国内の送金(振込)であれば、全銀ネットと呼ばれる国内統一の送金ネットワークに全ての銀行が参加しているため、比較的安価かつ高速に日本円を送金することができますが、国際送金となると話は変わります。世界中のあらゆる銀行が参加する統一された送金ネットワークが無いのです。
近いものとしてSWIFTと呼ばれる電文ネットワークが存在しますが、世界の銀行が全て参加しているわけではありません。そのため1回の国際送金に複数の銀行を中継するケースが珍しくなく、非常にコストがかかる上、所要時間も長くなってしまうのです。
ステラルーメン(XLM)のホワイトペーパーでは、こうした問題を解決するためには「誰にでも開かれた世界的な金融ネットワーク」が必要であり、「利用者が世界規模で相互に信頼できる分散型システムが有効な選択肢」であるとしています。
実際にビットコインやイーサリアムなどがブロックチェーン技術によってこれらの問題はある程度は改善しましたが、スケーラビリティの問題でコスト高騰と長時間化に直面していることは周知の通りでしょう。
ステラルーメン(XLM)は一般的な仮想通貨よりもはるかに速くて低コストな独自の仕組みを採用することで、より良いユーザーエクスペリエンス(利用体験)を目指しているのです。
アルゴリズム
ステラルーメン(XLM)では、PBFT(Practical Byzantine Fault Tolerance)というコンセンサスアルゴリズムを独自に改良したSCP(Stellar Consensus Protocol)と呼ばれるアルゴリズムが採用されています。
PBFTとは、ブロックチェーンにおけるブロック作成権を特定のコアノードに集中させ、コアノードの合議制によってトランザクションの承認を行う仕組みです。
少数のコアノードの承認によってブロックが作成されるため、PoW(Proof-of-Work)やPoS(Proof-of-Stake)と比べてコストや処理速度の面で優れているのが特徴とされており、リップルのRPCA(Ripple-Protocol-Consensus-Algorithm)がその派生形として知られています。
ただし、PBFTではコアノードを担うバリデーターを指名する中央管理者が必要になるため、ブロックチェーンの分散性が損なわれるという指摘もありました。
そこでSCPでは各バリデーターが信頼できるバリデーターを選択して「クォーラムスライス」と呼ばれるバリデーターのリストを作成し、ブロックチェーンが特定の中央管理者に依存しない仕組みが採用されています。
これによって、SCPはPoWやPoSと比べても分散性を維持しつつ、処理速度・信頼性・セキュリティなどの面でも優れているとされ、実際の送金にかかる時間は2秒〜5秒程度と言われています。
また、送金時の基本的な手数料は0.00001XLMと極めて少額です。こうした特徴から、ステラルーメン(XLM)は特に個人による少額な国際送金において活用が期待されているのです。
SCPとその他のアルゴリズムの対比表
出典:The Stellar Consensus Protocol:A Federated Model for Internet-level Consensus
組織体制やセキュリティ対策の状況
上述のとおり、ステラルーメン(XLM)はリップル社の共同創業者であるジェド・マケーレブ氏によって2014年に開発されたオープンソースの仮想通貨です。
開発後、同氏らによってステラルーメン(XLM)の開発と成長をサポートするための非営利団体「Stellar Development Foundation(以下、ステラ開発財団)」が設立されて現在に至ります。
同財団はステラルーメン(XLM)の技術コミュニティやビジネスコミュニティを支援するとともに、各国における規制当局や機関に対する窓口としての役割も果たしています。そのため、ステラルーメン(XLM)はステラ開発財団が管理・運営しているともみなされており、リップルと並んで、中央集権的な仮想通貨の一つとして数えられることも少なくありません。
ただし、バリデーターをリップル社が指定するリップル(XRP)とは異なり、ステラルーメン(XLM)は各バリデーター(トランザクション(取引)を承認する人)が作成する「クォーラムスライス」によって投票を行うバリデーターが決まるため、ブロックチェーンの独立性はステラルーメン(XLM)の方が高いと言えるでしょう。
また、このクォーラムスライスの仕組みが悪意によるブロックチェーンの支配をより困難なものにしています。不正なブロックを承認させるためには、不正なノードが多数決を支配できるクォーラムスライスが必要となりますが、クォーラムスライスは各バリデーターが自由に選択するため、継続的にブロックチェーンを支配することは非常に困難なのです。
将来性
ステラルーメン(XLM)の将来性について、次の観点で見ていきましょう。
発行上限
ステラルーメン(XLM)では、2014年のリリース時に発行上限枚数である1,000億XLMが発行され、その後は毎年1%ずつ発行上限数量が増えていく仕組みが採用されていましたが、価値の希釈化が懸念され、コミュニティによる投票を経て2019年に発行が廃止されています。そのため、現在はステラルーメン(XLM)の新規発行は行われていません。
また、ステラ開発財団は2019年11月に保有するステラルーメン(XLM)の6割以上にあたる550億XLMを焼却(バーン:ブロックチェーン上で二度と使用できないように消滅させること)しており、希少性の向上が好感されて約25%程の価格高騰が記録されています。
現在も市場流通量を上回る多額のステラルーメン(XLM)を保有しているとされるステラ開発財団ですが、追加の焼却を行う予定は発表されていません。
ロードマップ
ステラ開発財団はステラの実用性を向上させることに力を注いでおり、2023年のロードマップとして次の3点を掲げています。
1. イノベーションを容易かつスケーラブルにする
2. ブロックチェーン開発者を惹きつける
3. ユーティリティの信頼を築く
すなわち、これまでにステラが築き上げてきたサービスをより普及させるにも、ステラのスマートコントラクトを採用した新しいDeFiの開発を促すにも、開発者がより簡単に開発できる環境を用意することが重要であると指摘しています。
より多くのブロックチェーン開発者をステラに惹きつけることで、より豊富なユーティリティが開発され、社会でその信頼性が認められることがブロックチェーン技術の未来とステラの発展に繋がるというビジョンです。こうしたビジョンを実現するために、ステラ開発財団はDeFiなどの開発を支援する新しいスマートコントラクトプラットフォームの立ち上げや、財団として公共政策への情報発信を行っていくとしています。
これらのロードマップが実現していくことで、ステラのブロックチェーンを採用した新しいDeFiサービスなどが誕生し、ステラルーメン(XLM)の実用性や価値が更に向上していくことが期待されているのです。
関連ニュース
ステラのブロックチェーンは2018年にIBM社に採用されている他、アフリカやイスラム圏をはじめ多くの国でブリッジ通貨として採用されています。
また2021年にはウクライナ政府との提携も発表されています。低価格で素早く国際送金ができるステラは世界各国で導入が進んでおり、今後もステラ(システム)の普及が進むことで、基軸通貨であるステラルーメン(XLM)の需要も増加していくことが期待されます。
また現在急速に市場が広がっているdAppsやDeFiなどの開発者を取り込むことができるかも今後の注目点と言えるでしょう。ただし、仮想通貨であるステラルーメン(XLM)は、仮想通貨全体の価格トレンドの影響も強く受けてしまう点には注意が必要です。
足元の価格状況
さて、ステラルーメン(XLM)の足元の価格はどうなっているのでしょう?
弊社が運用する金融情報プラットフォーム「フィンタクト」で開示されているチャートをみてみると、記事作成時点の2023年7月11日では 1XLM = 14.03円 となっていました。
最新情報はこちらからご確認いただけます。
「フィンタクト」ではこのほか関連するニュースやほかのユーザーの実績も確認できるため、こうした情報も実際の買い時を見極める際、傾向把握にも活用いただけます。
まとめ
ステラルーメン(XLM)の特徴と将来性について理解を深められましたか?
ステラルーメン(XLM)は国内の主要取引所(bitFlyerやCoincheck、GMOコインなど)で取り扱われています。ステラルーメン(XLM)を保有するか検討される際は、まずご自身が口座を持っている取引所がステラルーメン(XLM)を取り扱っているか確認してみましょう。そして、頻繁に取引を行う場合は手数料などを比較して取引所を選定するといいでしょう。
今後もその他通貨についても解説記事を紹介していきますので、最新記事の更新情報を知りたい方は仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」のTwitterのアカウントをフォローしてみてください。