2021年に流行したSTEPNについて、税金の計算方法や確定申告について、コインタックス税理士事務所 速水代表税理士に解説してもらいました。

 

STEPN(ステップン)とは?

STEPN(ステップン/ステプン)は、ウォーキング・ジョギング・ランニングなど、運動することで暗号資産「GST(Green Satoshi Token)」が得られるスマートフォンアプリです。

STEPNは、 Play to Earn(ゲームをプレイして暗号資産を得る)である側面と、Move to Earn(運動して暗号資産を得る)である側面を兼ね備えたアプリです。2021年12月にベータ版がリリースされて以降、すでに多くの国々で利用されています(2022年5月現在)。STEPNは、アプリ内NFTであるスニーカーを購入することで、誰でも簡単に始められます。

STEPNが流行している理由としては、大きく2つあると考えます。1つは、豊かなゲーム性です。複数のスニーカーを合成(Mint)して新たなスニーカーを得たり、スニーカーのレベルUPをさせたりと、ある種育成ゲームのような面白さがあります。もう1つは、運動(ウォーキングやジョギング)するだけで、非常に手軽に暗号資産を得られることでしょう。スニーカーの数や能力値によって変動しますが、スニーカーを1足保有し、1日10分程度歩くと、約1,000〜1,500円価値相当の暗号資産(GST)を得ることができます。※1GST=353.95円(2022年5月現在)に換算

STEPN内で得たGSTは、他の暗号資産に交換できることに加えて、スニーカーのレベルUPや修理、STEPN内アイテムであるGemの購入(注1)にも利用できます。
(注1)Gem:スニーカーの能力値を向上させるアイテムのこと

育てたスニーカーは、STEPN内で売却することもできます。レベルが高ければ高いほど能力値が高く、需要も高まりますので、売値も高騰する傾向にあります。

以上のように、ゲーム感覚で暗号資産(GST)を得られることがSTEPNの魅力といえるでしょう。STEPN内で得た暗号資産(GST)は、ETH(イーサリアム)など他の暗号資産に交換後、暗号通貨取引所にて法定通貨に交換することも可能です。

 

STEPNで利益が発生するタイミング・計算方法

個人が得た経済的な利益(収益ー必要経費)には、税金が課されます。
課される税金については後半で説明しますので、まずはSTEPNにおいて収益、必要経費が生じるタイミングを、ゲームの流れに沿って整理していきましょう。

なお、STEPNを法人で行うか、個人で行うか、によって関連する税金が異なります。今回は、個人に限定してご紹介します。

 

①スニーカー購入時→収益、必要経費ともに×

資産であるスニーカー購入時は、収益、必要経費ともに発生しません。
この時点でのスニーカーの価額は、交換した暗号資産の時価と同額です。
なお、購入原資であるSOLを他のコインの交換により取得した場合は、通常の暗号資産交換時と同様、その価格差に損益が生じます。

(例)10,000円分のSOLで1スニーカーを購入
スニーカー(資産)10,000円 / SOL 10,000円

 

②運動してGSTを得た時→収益〇

運動することによりGSTを得た場合は、収益が発生します。 収益の金額は、GSTの時価×GST数です。

(例)1GST=1,000円の時に2GSTを得た時
GST 2,000円 / 収益 2,000円

 

③修理時→必要経費〇

スニーカーを修理するために消費したGSTは、必要経費に該当すると考えます。 必要経費の金額は、GSTの時価×GST数です。

(例)1GST=1,000円の時に2GST消費して修理した時
必要経費  2,000円 / GST 2,000円

 

④スニーカーをレベルUPしたとき→収益、必要経費ともに×

スニーカーの能力を向上させるレベルUPは、スニーカーの価値を増大させる行為と捉えられるため、必要GSTが資産であるスニーカーの価額に加算されます。

(例)1GST=1,000円の時に2GST消費してレベルアップした時
スニーカー  2,000円 / GST 2,000円

 

⑤ミステリーボックス/shoesbox取得時→収益、必要経費ともに×

ミステリーボックス取得時は、その時点で何が入っているのかわからないため、収益、必要経費ともに認識しません。

 

⑥ミステリーボックス/shoesbox開封時→中身によって異なる

ミステリーボックスの中身を得るために必要なGSTは、何を得たかによって捉え方が異なると考えます。 中身が空の場合は必要経費に該当すると考えますが、gemやGSTを獲得した場合は、 資産であるgemの価格に加算されたり、獲得したGSTとの差額で損益が生じることになるでしょう。

shoesbox開封によるスニーカーの獲得は、その価値が受贈されたと捉えられるので、 収益に該当すると考えます。その金額は、獲得時のスニーカーの時価が妥当でしょう。

 

⑦gem獲得時→収益〇

運動中や、ミステリーボックス開封によるgemの獲得は、その価値が受贈されたと捉えられるので、収益に該当すると考えます。その金額は、獲得時のgemの時価が妥当でしょう。

(例)1GST=1,000円の時に時価2GST相当のgemを獲得した時
gem(資産)  2,000円 / 収益 2,000円

 

⑧ソケットオープン+gem装着時→収益、必要経費×

スニーカーの能力を向上させる、ソケットをオープンしてgemを装着する一連の行為は、スニーカーの価値を増大させる行為と捉えられます。よって、ソケットをオープンするために必要なGSTの時価が、資産であるスニーカーの価額に加算されます。加えて、装着するgemの獲得時の価額も、スニーカーの価額に加算されます。

(例a)1GST=1,000円の時に2GST消費してソケットをオープンした時
スニーカー  2,000円 / GST 2,000円
(例b)獲得時2,000円相当のgemを装着した時
スニーカー  2,000円 / gem 2,000円

 

⑨複数のスニーカーを合成(mint)したとき→収益、必要経費×

mintに必要なgstの時価と、mintスクロールの取得価額が、新しいスニーカーの価額になると考えます。

(例)1,000円価値相当のmintスクロール2枚と、1GMT=1,000円の時に2GMT、1GST=5,000円の時に2GSTを消費してmintしたとき

新しいスニーカー(資産) 14,000円 / 2mintスクロール2,000円+2GMT 2,000円+2GST 10,000円 

 

⑩gem合成成功したとき→収益、必要経費×

材料となったgemの獲得時価額と、合成に必要なgstの時価が、新しいスニーカーの価額になると考えます。

(例)獲得時1,000円価値相当と2,000円価値相当の旧gemを合成し、1GST=1,000円の時に2GST消費して合成したとき
新しいgem(資産) 5,000円 / 旧gem 1,000円+旧gem 2,000円+GST  2,000円

※上記は新しいgemの時価がわからない前提となります。時価がわかる場合は異なる処理が考えられます。

 

⑪gem合成失敗したとき→必要経費〇

材料となったgemが消失するため、その獲得時価額が必要経費になると考えます。

(例)獲得時1,000円価値相当と2,000円価値相当の旧gemを合成して失敗したとき
必要経費 3,000円 / 旧gem 1,000円 + 旧gem 2,000円

 

⑫gemを売却したとき→収益、必要経費〇

売却したgemの獲得時価額と、獲得したSOLの差額が、収益もしくは必要経費に該当します。

(例)獲得時1,000円価値相当のgemを売却し、5,000円分のSOLを得たとき
SOL 5,000円 / gem 1,000円 + 収益 4,000円

 

⑬スニーカーを売却したとき→収益、必要経費〇

売却したスニーカーの売却時価額と、獲得したSOLの差額が、収益もしくは必要経費に該当します。

(例)獲得時10,000円価値相当のスニーカーを売却し、20,000円分のSOLを得たとき
SOL 20,000円 / スニーカー 10,000円 + 収益    10,000円

 

⑭アプリ内で得たGSTを他の暗号資産に交換したとき→収益、必要経費〇

通常の暗号資産取引と同様、暗号資産の交換に該当します。交換した暗号資産の価額差に応じて、収益もしくは必要経費が発生します。なお、交換元の暗号資産の価額は、総平均法もしくは移動平均法にて求めます。

(例)獲得時10,000円価値相当のSOLを売却し、20,000円分のETHを得たとき
ETH 20,000円 / SOL 10,000円 + 収益  10,000円

 

(+α)STEPNで運動するための、現実世界の靴やトレーニングウェアは必要経費になるの?

→認められない可能性が高いと考えます。

必要経費とは、その収益を獲得するため「だけ」に要したものを指します。
現実世界の靴や服は、STEPNプレイ時以外にも使用できるものです。STEPNのため「だけ」に必要だったと主張することが極めて難しいことが予想されます。この他にも、必要経費に該当するか悩まれた場合は、税理士にご相談されることをお勧めします。

 

STEPNに係る利益計算時の注意点

STEPNは、オフチェーンでの取引が多いため、収益や必要経費の補足が難しいです。そのため、日頃から利益額やWallet、Spending内の資産状況をメモすることが重要です。

普段から記録しておくべき項目の例は、以下のとおりです。
・獲得GST、GMT、SOLの時価と数
・消費GST、GMT、SOLの時価と数
・スニーカー、gemの価額と数
・SpendingからWalletへ移動
・取引手数料

スプレッドシートなどに記録しておくだけでなく、証拠としてスクリーンショットも併せて保存しておくとより良いでしょう。

以上が、STEPNに係る収益と必要経費が生じるタイミングでした。 利益は、上記収益と必要経費を集計し、その差額から求めます。 次は、その利益に係る税金についてご説明します。

 

STEPN(ステップン)に係る税金

個人が得た利益に対して課される税金は、所得税と住民税に分けられます。

(1)所得税

所得税は、個人が1年間(1月1日~12月31日)に得た利益に対して課される税金です。所得は10種類に区分され、各所得ごとに異なる計算方法が規定されています。暗号資産やNFTに係る所得は、10種類のうちの「雑所得」に該当する場合が多いと考えられています。STEPNで得た利益も、雑所得に該当する場合が多いことでしょう。

暗号資産の売買が事業所得に、NFTの売買が譲渡所得に、該当する可能性も考えられますが、お客様の取引状況に応じての判断になります。現時点では、雑所得以外が認められることは極めて稀だと考えております。

所得税の金額は、総所得金額×税率ー控除額 にて求められます。
総所得金額は、10種類の所得区分それぞれの利益を合計した金額です。
税率と控除額は、その総所得金額の大きさに応じて決定されます。

総所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

 

(2)住民税

住民税も、個人が1年間に得た利益に対して課される税金です。その税率は、市町村により変動しますが、おおむね10%です。

仮に、暗号資産取引で1年間に1億円の利益があった人は、最高45%の所得税+10%の住民税が加算され、利益の約55%近くの税金を国と地方公共団体自治体に納めていただくことになります。

 

STEPNと確定申告

上記所得税や住民税の金額を計算し、税務署に申告+納税する行為を、「確定申告」といいます。以下では、STEPNをプレイすることにより、確定申告が必要となる場面に触れておきます。

 

〈確定申告が必要な可能性が高い方〉

・給与所得者(サラリーマン)であって、STEPNによる利益が20万円を超えた方
・総所得金額が1,000円以上の方

(注)確定申告の必要性は、個人によって異なります。詳細は税理士にご相談されることをお勧めします。

 

確定申告の注意点

計算を誤ったり、確定申告義務があるにも関わらず確定申告をしなかった場合は、ペナルティが課され、追加の納税が生じることもあります。
下記はペナルティの種類と、増額される税金の割合です。

過少申告加算税:納めるべき税金が少なすぎた場合10~20%
無申告加算税:確定申告をしなかった場合10~20%
重加算税:悪質とみなされた場合35~40%
延滞税:納税が遅れた場合7.3~14.6%年

このようなペナルティを避けるためにも、確定申告が必要な条件に該当する方は申告期限内に確定申告を行いましょう。

 

まとめ

STEPNを含む暗号資産取引に係る税金の考え方は、とても複雑です。法整備は日々整いつつありますが、不確定な論点はまだまだ残っています。

暗号資産に係る税金計算には、収益と必要経費の補足が非常に重要です。日々の取引記録を行うことで、税金計算の負担軽減につながります。

また、計算が複雑すぎて手に負えない方には、「Cryptact」がおすすめです。Cryptactは、暗号資産の自動損益計算サービスやポートフォリオ機能管理など、幅広いサービスをご提供しています。簿価の算定方法はもちろん、米国での計算方法や法人向けの設定など、きめ細かな設定も利用できますので、ぜひ「Cryptact」もご利用されてみてください。

注意:STEPNや暗号資産について、日本ではまだ法整備がなされていない部分が多いです。本記事の内容は、税金の計算方法を担保するものではありません。あくまで、参考事例の1つとしてご参照ください。

 

監修

本記事はコインタックス税理士事務所の速水代表税理士の監修を受けています。

コインタックス税理士事務所 速水芹苗 代表税理士

 

コインタックス税理士事務所とは

仮想通貨の損益計算サービスを提供するコインタックス株式会社と提携し、暗号資産(仮想通貨)投資を行う上でハードルとなる税務周りの問題解決をサポートしている。
確定申告サポートから、税務調査や暗号資産の相続に至るまで幅広いサービスを提供。

 

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