仮想通貨がリデノミネーション(通貨単位変更)した際の税金計算方法を解説

税金・税制
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「リデノミネーション(redenomination)」とは、既存の通貨単位を切り下げたり、変更したりすることをいいます。

特に仮想通貨では、価格の大きな変動に伴い、この手法が用いられることがあります。価格が急激に上がったり下がったりすると、通貨の使い勝手に影響が出るため、リデノミネーションによって流動性を保つ試みがなされます。この過程は通常、発行者や関連コミュニティの合意のもとに進められます。

さて、自分の持つ仮想通貨がリデノミネーションを受け、その数量に変化が生じた場合、税金計算への影響はどのようになるのでしょう?

本記事では、仮想通貨のリデノミネーションが税務処理に及ぼす影響について、詳しく説明していきます。

目次

  1. 仮想通貨のリデノミネーションが発生した場合の税金処理
  2. 100:1(切り下げ)の仮想通貨のリデノミネーションが発生した場合の税金計算方法
  3. 1:100(切り上げ)の仮想通貨のリデノミネーションが発生した場合の税金計算方法
  4. 仮想通貨におけるリデノミネーションの事例
  5. まとめ

仮想通貨のリデノミネーションが発生した場合の税金処理

仮想通貨のリデノミネーションには「切り下げ」と「切り上げ」がありますが、いずれの場合においても基本的な考え方は共通しており、一般的には以下のような取り扱い方法があるものと考えられています。

ただし現在、仮想通貨のリデノミネーションが発生した場合の税務上の取り扱いについて、国税庁から明確な指針は示されていません。

実際に保有している仮想通貨にリデノミネーションが発生した場合、その取り扱い方法については最終的に所轄の税務署が判断するという点にご留意ください。

主な取り扱い方法 

● 「旧コインの売却&新コインの購入」とみなす方法(損益が発生する)    
● 「旧コインの平均取得単価を引き継ぐ」方法(損益が発生しない)    

通常、個人の仮想通貨取引では売買などにより損益が確定した際に課税所得が生じますが、保有している仮想通貨でリデノミネーションが行われた場合は、自分が取引を行っていなくても損益が発生する可能性がある点に注意が必要です。

基本的な考え方を押さえたうえで、申告する際には税理士や税務署に確認をするようにしましょう。

次の項からは、実際にリデノミネーションが発生した場合の計算方法について、具体的に見ていきましょう。

100:1(切り下げ)の仮想通貨のリデノミネーションが発生した場合の税金計算方法

まずは、既存の仮想通貨100枚を新しい仮想通貨1枚に切り下げる単位変更(100:1)が行われた場合について見ていきましょう。

100:1のリデノミネーションは、一般的に価格の大幅な下落に対処するために行われることが多いです。この種のリデノミネーションでは、仮想通貨の単位を「切り下げ」ることにより、投資家やユーザーが扱う通貨の数量を減少させます。例えば、ある仮想通貨が100:1のリデノミネーションを実施した場合、ユーザーが保有する通貨の数量は100分の1に減少しますが、その価値は変わらないように調整されます。

この措置は、価格が下落しても、大量の通貨を扱わなければならないという不便さを解消し、取引や使用の利便性を向上させるために行われます。

ここでは、サンプルケースとして旧コインをOLDCOIN、新コインをNEWCOINと表記し、リデノミネーション実施直前に100 OLDCOINを保有していたものとします。

旧コインの売却&新コインの購入とみなす方法

リデノミネーションを「旧コインの売却&新コインの購入」とみなす場合、リデノミネーションが実施された日時をもって、次のような取引が行われたものと考えます。

1. 100 OLDCOINを時価で売却    
2. 1 NEWCOINを時価で購入

この場合、OLDCOINを売却したことに伴う損益が発生することになります。    
またNEWCOIN に関してはリデノミネーションを実施した時点での時価が取得価格となります。

損益認識によって利益が生じた場合は税金が増える可能性がある一方、損失が生じた場合は他の仮想通貨の利益と相殺できる可能性もある方法と言えるでしょう。

旧コインの平均取得単価を引き継ぐ方法

リデノミネーションの際に旧コインの平均取得単価を引き継ぐ場合は、リデノミネーションの比率に応じて新しい取得単価を認識します。

すなわち、100:1のリデノミネーションの場合、NEWCOINの新しい取得単価はOLDCOINの取得単価に100をかけることで算出できます。

 OLDCOINの平均取得単価が1円 ⇒ NEWCOINの新しい取得単価は100円となる

この方法の場合、リデノミネーションのタイミングで損益認識は発生しないため、仮想通貨の所得に影響を与えない方法と言って良いでしょう。

1:100(切り上げ)の仮想通貨のリデノミネーションが発生した場合の税金計算方法

続いて、既存の仮想通貨1枚を新しい仮想通貨100枚に切り上げる単位変更(1:100)が行われた場合について見ていきましょう。

1:100のリデノミネーションは、価格の大幅な上昇に対応するために行われることが一般的です。この手法では、通貨の単位を「増やす」ことで、1単位あたりの価値を小さくし、より取引しやすくします。たとえば、1:100のリデノミネーションを実施すると、ユーザーが保有する仮想通貨の数量は100倍になりますが、その総価値は変わりません。

このようなリデノミネーションは、仮想通貨の価格が非常に高騰し、小額の取引が難しくなった場合に有効です。通貨の単位を増やすことで、ユーザーはより小さな金額で取引ができるようになり、市場の流動性やアクセシビリティが向上します。

ここでは前項と同様に、旧コインをOLDCOIN、新コインをNEWCOINと表記し、リデノミネーション実施直前に1 OLDCOINを保有していたものとします。

旧コインの売却&新コインの購入とみなす方法

リデノミネーションを「旧コインの売却&新コインの購入」とみなす場合、リデノミネーションが実施された日時を以って、次のような取引が行われたものと考えます。

1. 1 OLDCOINを時価で売却    
2. 100 NEWCOINを時価で購入

 

この場合、OLDCOINを売却したことに伴う損益が発生することになります。    
またNEWCOINに関してはリデノミネーションを実施した時点での時価が取得価格となります。

旧コインの平均取得単価を引き継ぐ方法

リデノミネーションの際に旧コインの平均取得単価を引き継ぐ場合は、リデノミネーションの比率に応じて新しい取得単価を認識します。

すなわち、1:100のリデノミネーションの場合、NEWCOINの新しい取得単価はOLDCOINの取得単価を100で割ることで算出できます。

OLDCOINの平均取得単価が100円 ⇒ NEWCOINの新しい取得単価は1円となる

仮想通貨におけるリデノミネーションの事例

仮想通貨においては、過去にいくつかのリデノミネーションが実施されています。    
ここではその一部についてご紹介します。

Polkadotの事例

Polkadot(ポルカドット)はWeb3(3.0)の世界を実現することを目指したプロジェクトおよびそのブロックチェーンです。

そのネイティブトークンとしてDOTが発行されていますが、2020年8月にDOTの単位を1:100で切り上げるリデノミネーションが実施されました。

これは、DOTを利用する際に取引金額が小数になってしまうケースが多く、切り上げによって整数で取引できるケースを増やす方がユーザーフレンドリーであるという理由によるものです。

DOTの単位を変更することで、1 DOTを保有していたユーザーはリデノミネーション後は100 DOTを保有している状態となりました。

仮想通貨の価格が高いことに伴う利便性悪化を解消させるためのリデノミネーションと言え、今後も高価格の仮想通貨で同様の対応が行われる可能性が考えられるでしょう。

PUNDIXの事例

PundiX(プンディックス)は決済におけるブロックチェーン技術の普及を目指したプロジェクトです。

当初はNPXSと呼ばれるトークンを活用していましたが、2021年3月に新しいPUNDIXトークンへのリデノミネーションを実施しました。

これは、供給されているトークンの総量を1000:1に削減することでデフレ状態を解消するとともに、名称変更によってブランド認知の向上を図るための対応とされており、この際、1,000 NPXSを1 PUNDIXに交換するスワップが提供されています。

このように、価格が下落した仮想通貨においてはデフレ解消目的でのリデノミネーションが行われる可能性がある点に留意が必要でしょう。

まとめ

仮想通貨は裏付け資産が存在しないケースが多く、需給バランス次第では取引価格が発行時から大幅に乖離する場合があるため、リデノミネーションが発生しやすいという特徴があります。

保有している仮想通貨でリデノミネーションが発生すると、税務上の処理方法によっては損益が発生するうえ、該当する銘柄の取得単価も変わります。それゆえ、年間の損益計算に大きな影響を与えることがあります。

仮想通貨の税金計算においては、全ての取引履歴に対して個々の損益計算を行う必要がありますが、リデノミネーションの考慮が加わることで更に計算が複雑化するのです。専門家である税理士に税金計算から確定申告まで全てを依頼する方法もありますが、高額な費用がかかるため、なんとか自分で対応できないかと考える方も多いことでしょう。

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このほかにもさまざまな取引パターンに応じて具体的なファイルの作成案内が随時アップデートされています。

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