どんなステーブルコインでも同じ?ケース別税金計算方法と最新動向を解説

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ステーブルコインを保有または取引している方の中には、海外取引所やDefi(分散型金融)サービスを日常的に利用している方も多いことでしょう。法定通貨と価格が連動しているステーブルコインは、イールドファーミングで利益を得たり、または売買益を狙わないタイミングで仮想通貨資金を保管する際に、価格変動リスクを軽減できる有効な選択肢と言えます。

税金の考え方は一般の暗号資産と同じですが、一言でステーブルコインといっても、違いがあり、内容によって税務上の取り扱いが異なることをご存じでしょうか。

この記事では、2023年6月の法改正にともなって登場した「暗号資産型ステーブルコイン」と「デジタルマネー類似型ステーブルコイン」の分類についてご紹介したうえで、ステーブルコインの基本的な税金計算方法について解説していきます。

目次

  1. 「暗号資産型」ステーブルコインと「デジタルマネー類似型」ステーブルコイン
  2. ステーブルコインの税金計算方法をケース別に解説 
    ・日本円でステーブルコインを購入する 
    ・ステーブルコインで他の仮想通貨を購入する 
    ・ステーブルコインで支払いを行う 
    ・ステーブルコインを売却する
  3. デジタルマネー類似型ステーブルコインの留意点 
    ・基本的に法定通貨のレートが適用される 
    ・損益認識のタイミングが一部異なる
  4. ステーブルコインの税金に関するよくある質問 
    ・「前払式支払手段」のステーブルコインの位置付けは? 
    ・担保方式の違いによって税制は変わる? 
    ・ディペッグが発生して暴落した場合はどうなる?
  5. ステーブルコインの複雑な損益計算には「クリプタクト」がおすすめ

「暗号資産型」ステーブルコインと「デジタルマネー類似型」ステーブルコイン

2023年6月に施行された改正資金決済法に伴い、日本ではステーブルコインが「デジタルマネー類似型」と「暗号資産型」に分類されることになりました。

ステーブルコイン分類.

金融庁 説明資料   
「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」   
 

法定通貨と連動した価格で発行され、発行価格と同額で償還が約束されているステーブルコインを「デジタルマネー類似型」と呼び、それ以外のステーブルコインは「暗号資産型」となります。

「デジタルマネー類似型」は現金や預金に性質が近く、「暗号資産型」は暗号資産と性質が近いステーブルコインであると表現すると、イメージしやすいかもしれません。

金融庁資料に記載の分類に基づき想定される具体例

分類

具体例

デジタルマネー類似型のステーブルコインテザー(USDT)   
USDコイン(USDC)   
バイナンスUSD(BUSD)
暗号資産型のステーブルコインダイ(DAI)   
sUSD(SUSD)

 

現金や預金と暗号資産では税務上の取り扱いが異なるように、ステーブルコインにおいてもこの両者の税金計算の仕方は異なるものと考えられます。

ただし、現時点ではデジタルマネー類似型ステーブルコインの税務上の取り扱いについては税務当局から具体的な指針は示されていません。

そこでこの記事では、すでに公開されている暗号資産に関する指針に基づきながら、現時点におけるデジタルマネー類似型の留意点を補足する形で、ステーブルコインの税金計算方法をご紹介していきます。

「暗号資産型」のステーブルコインの税金計算方法をケース別に解説

ステーブルコインのうち、「暗号資産型」ステーブルコインについては、税金の考え方は一般の暗号資産と同じとなります。ここでは暗号資産の税金計算の考え方に沿って、暗号資産型ステーブルコインの税金計算事例をご紹介していきます。

なお、暗号資産の税金計算についてはこちらの記事でも解説していますので、詳しく確認したい場合は併せてご覧ください。

日本円でステーブルコインを購入する

通常、暗号資産は取引により損益が確定した時点で課税対象となります。   
そのため、ステーブルコインが「暗号資産型」である場合、日本円での購入時点では税金は発生しないものと考えられます。(なお、暗号資産でのステーブルコインの購入は、暗号資産同士の交換に該当するために、通常は税金が発生しますので留意が必要です)

ただし、売却時の損益計算に取得原価が必要であるため、購入したステーブルコインの数量とレートはしっかり記録しておきましょう。

なお、米ドルとペッグしたステーブルコインであっても、価格がおおよそ1ドルに連動するように設計されているだけであって、常に完全に1ドルと一致しているわけではありません。

ステーブルコインにも円レートが存在するため、税金計算においては円レートを把握しておく必要があります。

DAI レート

参考:フィンタクト|DAIの円レート

ステーブルコインで他の仮想通貨を購入する

「暗号資産型」ステーブルコインで他の暗号資産を購入する行為は、暗号資産同士の交換と同義であると考えられます。

通常、暗号資産同士の交換は、保有する暗号資産を交換先の暗号資産の価額で譲渡する取引と見なすため、譲渡価額と取得原価に差額が生じる場合は、その差額分を損益認識する必要があります。

19万円で取得した暗号資産ステーブルコインを、1ETHに交換した。交換時のETHの時価は20万円であった。

⇒譲渡価額20万円 - 取得原価19万円 = 1万円が課税対象

ステーブルコインで支払いを行う

暗号資産ステーブルコインで支払いを行う場合、保有する暗号資産を譲渡する取引を行ったことになるため、譲渡価額と取得原価に差額が生じる場合は、その差額分を損益認識する必要があります。

9万円で取得した暗号資産ステーブルコインを、10万円の商品購入代金として支払った。

⇒譲渡価額10万円 - 取得原価9万円 = 1万円が課税対象

ステーブルコインを売却する

暗号資産型ステーブルコインを売却する行為は、暗号資産の売却と同義と考えられます。

そのため、売却によって利益が発生する場合は、その利益分を課税対象として認識する必要があるでしょう。

「暗号資産型」ステーブルコインを10万円で購入した。その後、「暗号資産型」ステーブルコインの価格が上昇したため、11万円で売却することができた。

⇒譲渡価額11万円 - 取得原価10万円 = 1万円が課税対象

デジタルマネー類似型ステーブルコインの留意点

取得原価を総平均法・移動平均法いずれかを選択して計算する点は「暗号資産型」のステーブルコインと変わりません。

ただし、デジタルマネー類似型ステーブルコインの場合、暗号資産とは異なり「現金や預金に似た性格を有する資産」であると考えられているため、以下に挙げる点については考え方に違いが生じます。        
なお、これらのサンプルケースはわかりやすさのため、円貨建電子決済手段を前提に記載しています。外貨建電子決済手段の場合は、外貨建取引の場合と同様に為替差益の認識が必要になる可能性がある点にご留意ください。

基本的に法定通貨のレートが適用される

電子決済手段として認可されたデジタルマネー類似型ステーブルコインの場合、法定通貨と同額での償還が約束されているため、基本的に現金や預金などと同様に法定通貨のレートが適用される可能性が高いものと考えられます。

ただし、DEX(分散型取引所)などで法定通貨とは異なる取引価格が存在するなど、適用するレートについて悩ましい場合は、税務署や税理士に相談すると良いでしょう。

損益認識のタイミングが一部異なる

暗号資産の場合は売却時に損益認識を行うことが基本ですが、電子決済手段として認可されたデジタルマネー類似型ステーブルコインの場合は、損益認識のタイミングが異なると考えられます。

企業会計基準案では、電子決済手段を取得した際は、その受渡日に券面額を資産として計上し、取得価額と券面額との間に差額がある場合は、その差額を損益として認識する旨が記載されています。

すなわち、100円で償還が約束されているデジタルマネー類似型ステーブルコインを100円で購入した場合は損益を認識する必要はないものの、もし100円よりも安く取得した場合は、その時点で差額を利益認識するということになるでしょう。

10万円分のデジタルマネー類似型ステーブルコインを、知人から9万円で購入できた。

⇒券面額10万円 - 取得価額9万円 = 1万円が課税対象

一方、電子決済手段を用いて支払いを行うケースでは、現金などで支払いを行うケースと同様に、通常は損益が発生しないものと考えられます。

このように、「暗号資産型」ステーブルコインと損益認識のタイミングが異なる可能性がある点に留意が必要でしょう。

ステーブルコインの税金に関するよくある質問

ここではステーブルコインの税金に関するよくある質問とその回答をご紹介します。

「前払式支払手段」のステーブルコインの位置付けは?

電子決済手段が登場する前は、ペッグ対象が法定通貨であるステーブルコインの法的な位置付けが曖昧になっていました。

この問題に対してこれまで日本国内で活用されてきたのが、ステーブルコインを「前払式支払手段」として発行する方法です。

「前払式支払手段」で発行される代表的な日本円ステーブルコインには、JPYCが挙げられます。

JPYCは発行体によって1JPYC=1円での発行および決済利用が保証されており、会計上も常に1円として取り扱うことができるという特徴があります。

そのため、税金計算上はデジタルマネー類似型ステーブルコインと同様の考え方で取り扱いができるものと考えられています。

一方で「前払式支払手段」とはいわゆるプリペイドカードや、料金前払式のサービスを目的とした仕組みであるため、発行体から購入者への償還(払い戻し)が禁止されているなど、厳密にはデジタルマネー類似型とは異なる性質を持っています。

JPYCについては、2年後を目途にデジタルマネー類似型のJPYCを発行することが検討中とされており、「前払式支払手段」のステーブルコインは縮小してくものと予想されています。

担保方式の違いによって税制は変わる?

ステーブルコインの担保方式にはいくつかのパターンが存在しますが、税制については「デジタルマネー類似型」と「暗号資産型」のどちらに分類されるのかによって異なるものと考えられます。

ステーブルコインの代表的な担保方式   

● 法定通貨担保型   
● 暗号資産担保型   
● アルゴリズム(無担保)型

法定通貨担保型とは、ステーブルコインの発行者が十分な裏付け資産を保有し、ステーブルコインと法定通貨を1:1で償還する仕組みを提供することで価格安定を実現しているものです。

また、裏付け資産として暗号資産を保有しているステーブルコインもあり、暗号資産担保型と呼ばれています。法定通貨と異なり価格変動リスクがあるため、通常は担保割れを起こさないように発行額よりも多い裏付け資産を用意しているケースが一般的です。

一方で、裏付け資産がない無担保型のステーブルコインも存在します。   
価格がペッグ対象より高くなれば「売り」圧力、安くなれば「買い」圧力が発生するようなインセンティブのある仕組みを導入することで、価格連動を図るというものです。

「デジタルマネー類似型」は法定通貨と同額で発行され、発行価額と同額での償還が約束されている必要があるため、裏付け資産のないアルゴリズム(無担保)型のステーブルコインは、「暗号資産型」に分類される可能性が高いと考えられますが、厳密には個別銘柄ごとの仕組みや特性に応じて判断されることになるでしょう。

ディペッグが発生して暴落した場合はどうなる?

取引所などで自由に売買できるステーブルコインの場合、アルゴリズムの崩壊やプロジェクトの信用不安など何らかの原因でディペッグ(ペッグ対象との価格乖離)が発生する可能性があります。

「暗号資産型」ステーブルコインの場合は、暗号資産と同様に利確するまでは損益が確定しないものと考えられます。つまりディペッグの発生により暴落した金額は、あくまでも含み損として計上されるために、それを他のコインと交換する、日本円に売却するなどの行為が行われるまでは損益として計上されないこととなります。

なお、デジタルマネー類似型ステーブルコインは発行体による払い戻しが可能であるため、ディペッグが発生する可能性は低いと言えるでしょう。

ステーブルコインの複雑な損益計算には「クリプタクト」がおすすめ

資金決済法の改正によって、今後、日本国内におけるステーブルコインの発行や取り扱いが増えていくことが予想されていますが、現時点ではステーブルコインは海外取引所やDEXでの取引が大半を占めているのが現状です。

日本円で税金計算を行う際は、損益認識時点におけるステーブルコインの円レートに基づいて損益計算を行う必要があり、取引回数が多いほど計算作業は大きな負担となります。

仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、多くの海外仮想通貨取引所とのAPI連携機能が用意されているほか、Metamaskなどのウォレットアドレスを指定することで取引履歴を自動取得することができ(※)、最新の円レートに基づいた損益計算を簡単に行えます。また、ポートフォリオ機能で仮想通貨とステーブルコインをまとめて「見える化」して管理することも可能です。(※アドバンスプラン以上の加入が必要になります。)

確定申告に向けて複雑な損益計算を効率化したい方は、ぜひ「クリプタクト」の利用をご検討ください。

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