2022年3月16日に開催された参議院・財政金融委員会にて、暗号資産(仮想通貨)やNFTの税制について質疑応答が行われた。自民党の藤末健三議員が、仮想通貨税制における分離課税の導入やNFTの税制整備の必要性について指摘・質問を行い、関係各省庁への協力を強く呼びかけた。
藤末健三議員は、これまでにも暗号資産やブロックチェーン産業の発展と振興のために数々の精力的な活動で知られている議員である。
日本の税制の遅れの指摘と提案内容
藤末議員は、新たな技術であるWeb3.0やその例の一つであるNFTに対してまだ税制が追い付いていないことを指摘した。
「クールジャパン」として知られるように、海外での日本のコミックの売上は5,000億円超、アニメーションは1兆円超、ゲームに至っては数兆円規模に達している。これらのコンテンツやキャラクターを、デジタル化した価値としてブロックチェーンで管理し、世界中に流通させることが今や可能となっており、今や「クリエイター大国」の日本が有する多くの才能高きクリエイターが、NFTを利用して創作物を価値に変えることができる。
しかし、税務署職員でもなかなか理解が追い付かないほど煩雑な納税計算がこれらの流通のハードルとなっており、NFTの健全な機能の為にも税制の整備が必要と主張した。
財務省主税局長は、関係省庁が申告に関する情報の広報や周知を行い、納税者が適正に申告できる環境整備の検討が必要であるとコメント。また、国税庁においても、NFT取引の課税関係についてきちんとわかりやすく示すべく、丁寧に周知・広報を行うよう検討している―との認識を示した。
これに対し藤末議員は、「周知・広報してもなかなか分かりにくいため、やはり税制度そのものを変えなければならない」と再度指摘。税制変更について以下の通り提案した。
・分離課税の導入:NFTを含む暗号資産について分離課税の導入。現在は総合課税のため最大税率は55%だが、これを株式やFX投資と同様に分離課税方式(税率20%)にすること。
・少額決済の非課税化:少額(2万円以下)の暗号資産決済について免税とすること。
財務省主税局長は、上場株式等で20%の分離課税が採用されている背景(中立性・簡素性や政策的要請など)を説明。
暗号資産所得への分離課税導入について、他の所得(給与所得・事業所得)とのバランスについて理解が得られるかとか、家計が暗号資産を購入することについて国として政策的にどういう風に考えていくかという点について、所管省庁で検討が必要、とコメント。
少額決済の免税についても、必要性を関係省庁でまず検討し、課税の公平性を踏まえた検討が必要、との認識を述べた。
また、経済産業省は、NFTがファッションやスポーツ、地域の観光資源などでも実用が期待されていることや、代替性トークンが海外では資金調達にも利用されていると認識していて、これら新しい領域の発展の障害となりうる課題があれば、経済産業省としてもしっかり対応する必要がある、と前向きな姿勢を見せた。
また、現在ファッションやスポーツの分野での実証事業を行っていることに触れ、今後もこうした新しい動きを経済成長のチャンスと捉えて、民間による様々な創意工夫を促進していけるよう、関係省庁と連携して取り組みたい、と意欲を示した。
クリエイター支援の遅れの指摘
最後に藤末議員は、クリエイター支援について日本が大きく後れを取っていることも指摘。
クールジャパンを担いながらも何かと搾取されがちな立場にある日本のクリエイターについて言及し、彼らをどう支援し、優秀な人材の流出を防いでいくのかについて、文化庁と経済産業省の見解を尋ねた。
文化庁は、近年日本のコンテンツ分野でNFTを活用した取り組みの増加やブロックチェーン活用の意義について認識を示した一方で、権利関係が明らかでないコンテンツに関するNFTの流通など、信頼性において課題があることに言及。
これらの課題を踏まえつつ、NFTを活用したクリエイターへの収益還元や文化財を活用した地域活性など、文化技術振興の観点から有効な活用策の促進について前向きに検討したい、とコメントした。また、クリエイターの支援を重大な課題と捉え、若手アニメーターのスキルアップ支援や、創作機会の提供を通じたクリエイター育成・水準向上などの事業に現在取り組んでいることを紹介した。
暗号資産税制については、数年前から業界団体の一つであるJCBA(日本暗号資産ビジネス協会)も税制改正の要望書を提出している。
仮想通貨の利用者は近年さらなる増加を見せ、日本国内でも数百万人に上ると言われており、NFTも含め周辺税制の整備は早急な課題であると言えよう。
引き続き、関係諸官庁及び国会での活発な議論が期待される。
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