仮想通貨担保ローンにおける税金の考え方と注意点を解説

税金・税制
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仮想通貨にはさまざまな活用方法がありますが、その一つとして仮想通貨を担保として差し入れる「仮想通貨担保ローン」が挙げられます。保有している仮想通貨を売却することなく資金を調達できるため、利確を避けたい場合や、長期保有したまま別事業の資金調達をしたい場合に有効な選択肢となります。

一方で仮想通貨担保ローンは、その税務上の特徴を理解しておかないと思わぬ税金負担に繋がる恐れがあるため、注意が必要です。

この記事では、仮想通貨担保ローンにおける税金の考え方と注意すべき点について、借入時・返却時・その他に分けてわかりやすく解説していきます。

仮想通貨担保ローンの活用を検討する際は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

  1. 仮想通貨担保ローンの借入/返却時の税金処理
  2. 仮想通貨の担保ローンに係るその他の税金処理
  3. 仮想通貨担保ローンの事例
  4. まとめ

仮想通貨担保ローンの借入/返却時の税金処理

仮想通貨担保ローンで仮想通貨(現物)の融資を受けた場合、仮想通貨の平均取得単価や損益認識に影響を与える可能性があります。

借入と返済、それぞれのタイミングにおける税金の考え方について見ていきましょう。

なお、現時点(2023年11月12日)で、仮想通貨の借入・返却の処理について国税庁から明確な指針は提示されておりません。

本稿では仮想通貨に限らない借入・返却時の一般的な会計処理に基づいて解説しておりますが、今後新たな指針が発表された際に異なる取扱いとなる可能性がありますのでご留意ください。

借入

仮想通貨担保ローンによる仮想通貨の借入は、以下の行為に分けることができます。

● 自身が保有する仮想通貨Aを担保として差し入れる 
● 仮想通貨Bを借り入れる

このうち前者(仮想通貨Aを担保として差し入れる)については、あくまでも一時的に預けるだけであり仮想通貨の移転には該当しないため、課税対象となる損益は発生しないと考えられます。    

一方、後者(仮想通貨Bを借りる)については、時価での取得として、平均取得単価の計算に組み入れる必要があるものと考えられます。ただし、こちらも損益は発生しないと考えられます。    

ビットコインの時価が300万円の時に1BTCを購入。その後、ビットコインの時価が500万円の時に1BTCを借入した。この際、担保として20ETHを差し入れた。

⇒ ((1BTC × 300万円) + (1BTC × 500万円)) ÷ 2BTC = 400万円が平均取得単価

※この時点で課税対象となる損益は発生しません。

返却

仮想通貨担保ローンにより借り入れた仮想通貨の返却は、以下の行為に分けることができます。

● 担保として差し入れた仮想通貨Aの返却を受ける 
● 仮想通貨Bを返済する

このうち前者(担保の仮想通貨Aの返却を受ける)については、あくまでも一時的に預けていたものが返ってくるだけであり仮想通貨の移転には該当しないため、課税対象となる損益は発生しないと考えられます。    

一方、後者(仮想通貨Bを返却する)については、借入の価格と平均取得単価の差額を損益認識する必要があるものと考えられます。

前述の例で借り入れた1BTCを返済した。

⇒(500万円 - 400万円) × 1BTC = 100万円の利益認識

なお、手元に残った1BTCの平均取得単価は400万円

※上記の例では分かりやすさのため、借入期間中にビットコインの取引を行っていないことを前提としています。

実際には借り入れた仮想通貨を用いて取引行為を行うことが一般的と考えられ、その場合は平均取得単価が変わるため、返却時の損益も変わることになります。

このように、仮想通貨の現物を借りた場合は、複雑な税金計算を伴う可能性がある点に注意が必要でしょう。

仮想通貨の担保ローンに係るその他の税金処理

前項で解説したケース以外においても、仮想通貨担保ローンの税金に関して考慮すべき点があります。

ここでは次の3点について解説していきます。

返却時に利息を支払った場合

通常、ローンで資金を借り入れた場合は金利が発生することになりますが、支払った利息については日本円換算額を経費として計上できる可能性があります。

ただし、どのような目的で借入を行ったかによって利息の取り扱いが異なるため、経費計上を検討する際は事前に税務署や税理士などに相談してみると良いでしょう。

仮想通貨を担保に日本円を借り入れた場合

仮想通貨担保ローンにおいて仮想通貨を担保に日本円を借りる場合は、仮想通貨を借りる場合よりもシンプルに考えることができます。

仮想通貨を担保に日本円を借り入れ、また返済する行為は以下の行為に分けることができます。

● 担保として仮想通貨を差し入れ、返却を受ける 
● 日本円を借り入れ、返済する

このうち前者(仮想通貨を担保として差し入れ、また返却を受ける)については、前述と同様に仮想通貨の移転に該当しないため、課税対象となる損益は発生しないと考えられます。    

また、後者(日本円を借り入れ、返済する)についても、日本円での取引であるため平均取得単価の計算が必要なく、損益も発生しないものと考えられます。

このように、仮想通貨担保ローンで日本円を借りる場合は、仮想通貨を借りる場合よりも税金の考慮がシンプルになると言えるでしょう。

担保として入れた通貨の価格が暴落し、強制決済された場合

一般的に仮想通貨担保ローンでは、担保として差し入れている仮想通貨が暴落し、担保価値が一定基準値を下回ると、強制決済が行われる場合があります。

すなわち、担保を売却して債務の返済に充てられることになりますので、仮想通貨の売却に伴う損益が発生する可能性があります。

ビットコインの時価が500万円の時に1BTCを担保に250万円を借り入れた。その後、ビットコインが暴落し、時価が250万円となった時点で強制決済が発動され、債務250万円と相殺された。なお、ビットコインの平均取得単価は200万円であった。

⇒ 強制決済における売却価額250万円 - 平均取得単価200万円 = 50万円の利益

※単純化のために250万円で強制決済発動としていますが、実際の強制決済発動時価は商品により異なります。

仮想通貨を担保として差し入れる場合は、強制決済により意図しないタイミングで売買損益が生じる可能性がある点に注意が必要でしょう。

仮想通貨担保ローンの事例

仮想通貨担保ローンのサービスは、日本国内においても既に提供されています。

実際にFintertech株式会社が提供している「デジタルアセット担保ローン」の場合、ビットコインまたはイーサリアムを担保として日本円を借り入れることができます。

売却や税務上の損益認識を発生させずに、納税資金だけでなくさまざまなライフイベントに使うキャッシュを用意できるため、多額のビットコインやイーサリアムを保有している人には活用シーンの多い資金調達方法と言えるでしょう。

ただし、大幅な価格下落が発生した際には、担保の追加差し入れや強制決済が発生する可能性があるため、利用する際は留意しておく必要があるでしょう。

まとめ

この記事では、仮想通貨担保ローンを利用する場合、取引の内容によっては意図しないタイミングで損益が発生する可能性がある点を中心にご紹介いたしました。

特に、仮想通貨を借りる場合は平均取得単価が変動することから、当該通貨のその他の取引における税金計算にも広く影響することになります。

仮想通貨の税金計算では、年内に行ったすべての取引について平均取得単価を使った損益計算を行い、そこから得た所得を算出する必要があります。仮想通貨を借りて返金取得単価が変動することで、通常でも面倒で負担の大きい作業がさらに複雑化してしまうのです。

このような際に大変便利なのが、仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」です。

「クリプタクト」であれば、仮想通貨の損益計算にかかるプロセスを大幅に自動化でき、確定申告に向けた所得算出の手間を大幅に軽減することが可能です。

国内外90カ所以上の取引所やウォレットサービスからの取引履歴データの取込に対応しているほか、19,000種類以上の仮想通貨銘柄の時価取得に対応しているため、面倒な手作業の多くを自動化できます。

また、汎用性の高いカスタムファイルを作成して取り込むことも可能であるため、仮想通貨の借入・返却等に伴う平均取得単価の計算も簡単に反映することができます。

「クリプタクト」で担保ローンでの借り入れ/返却を行った際のカスタムファイル作成例

仮想通貨担保ローン ファイル


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