ハードウェアウォレットでの取引にかかる税金.webp

大切な資産である仮想通貨(暗号資産)をハッキングなどのリスクから守るため、LedgerやTREZORなどのハードウェアウォレットを利用する人が少なくありません。

こうした自己管理型ウォレットは、第三者に資産を預けずに済む点で高い安全性がある一方、損益計算の手間や税務上の取り扱いが見落とされがちです。

基本的にハードウェアウォレット本体には取引履歴の自動取得や損益集計の機能が備わっていませんので、別途自分で取引履歴の収集・損益計算が必要になるのです。

この記事ではハードウェアウォレットの利用で発生する税金についてケース別に説明するとともに、取引履歴の取得方法、損益計算の方法、さらにその他ハードウェアウォレットを使う上での注意点についてわかりやすく解説していきます。

目次

  1. ハードウェアウォレット上の取引で税金はかかる?
  2. ハードウェアウォレット使用時における注意点
  3. ハードウェアウォレットでの税金に関わる損益計算方法・流れ
  4. まとめ

ハードウェアウォレット上の取引で税金はかかる?

ハードウェアウォレットを使った場合、どのようなケースで税金が発生するのでしょうか。

基本的に、仮想通貨(暗号資産)取引で税金が発生するのは譲渡や交換などにより「利益」が生じた場合です。1年間に行った取引による「利益」と「損失」を合算し、そこから必要経費を差し引いた「所得」が課税対象となります。

従って個々の取引に対して個別に税金がかかるわけではありませんが、ここでは分かりやすいように、税金の元となる「利益」が生じるケースを「税金がかかるケース」、「利益」が生じないケースを「税金がかからないケース」としてご紹介します。

それでは、よくある4つのケースについて見ていきましょう。

ケース1: ハードウェアウォレットで保管しているだけの場合 ⇒ 税金はかからない

個人の場合、仮想通貨(暗号資産)を保有しているだけでは税金はかかりません。  
保管のみでは新たに利益が発生したとは見なされないため、課税対象となる所得も生じないためです。

これは、LedgerやTREZORなどのハードウェアウォレットに仮想通貨(暗号資産)を保管している場合でも同じです。

例えば、TREZORで保管しているビットコインが大幅に値上がりして含み益が発生していた     としても、個人の所有であり、ただ保管しているだけであれば税金が発生することはありません。

ケース2: 自分が所有する他のウォレットへの送金 ⇒ 税金はかからない

自分が管理する他のウォレットへ仮想通貨(暗号資産)を移動するだけの場合も、利益が発生したとは見なされません。

例えば、TREZORのウォレットからMetamaskのウォレットへ移動する、あるいは取引所の口座へ移動するといった自分のウォレット間の送金で税金が発生することはありません。

送金によって資産の内容や所有者が変わらなければ、譲渡や交換にはあたらないと考えられるためです。

ただし、異なるネットワーク間での送金にあたる「ブリッジ」を行った場合は、送金前後の仮想通貨(暗号資産)が別の銘柄と見なされる可能性があります。その場合、「ブリッジ」が仮想通貨(暗号資産)の「交換」取引に該当し、取得価額との差額によって利益が生じる場合があると考えられます。

現状、「ブリッジ」が仮想通貨(暗号資産)の「送金」にあたるのか、それとも「交換」にあたるかについては税務当局から明確な指針は示されていません。そのため、「ブリッジ」の課税関係についてはケースバイケースの判断となる点に留意が必要でしょう。

判断に迷う場合は、税務署の相談窓口や、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

ケース3: DEXでスワップなどの取引を行った場合 ⇒ 税金がかかる

LedgerやTREZORなど一部のハードウェアウォレットは、MetaMaskなどのようにDEX(分散型取引所)に接続することが可能です。

こうした接続を通じてスワップ(仮想通貨の交換)や流動性提供などを行い、利益を得た場合は、その所得は課税対象となります。

損益計算の詳細は後段でご紹介しますが、例えば20万円で購入した1ETHを、後日30万円相当のUSDTと交換した場合、10万円の利益が発生したと見なされます。

また、流動性提供によって報酬が発生した場合も、受け取った時点の時価が利益と見なされます。

ケース4: 他人への送金・支払いなどを行った場合 ⇒ 税金がかかる

他人への送金や商品・サービスの支払いに仮想通貨(暗号資産)を使用した場合も、税務上は「譲渡」と見なされ、税金がかかる可能性があります。

仮想通貨(暗号資産)は法律上、「通貨」ではなく「資産」として扱われています。  
そのため、他人に渡した時点で「資産の移転 = 経済的利益の確定」と見なされるのです。

例えば、30万円で購入した1ETHを市場価格40万円のときに商品の代金として支払った場合、税務上は10万円の利益が生じたものと見なされます。

こうした税務上の扱いは、ハードウェアウォレットを利用していても他のウォレットと変わりません。

ハードウェアウォレット使用時におけ注意点

ハードウェアウォレットは安全性の高い保管手段ですが、使い方や管理方法を誤ると税務上のトラブルにつながる可能性があります。

ここでは特に注意すべき2つのポイントについて見ていきましょう。

送金時のガス代が経費になるとは限らない

ハードウェアウォレットに仮想通貨(暗号資産)を入金・出金する場合、通常、ブロックチェーンに対してガス代(トランザクション手数料)が発生します。

ただし、このガス代が税務上の必要経費として認められるかどうかは、その送金が収益活動と直接関係しているかによって判断されます。

例えばDEXでのスワップやNFTの購入など、課税対象となる取引のためのガス代であれば、必要経費として認められる可能性があります。

一方で、単なる自己ウォレット間の移動や保管場所を変更するのみである場合は、必要経費としては認められない可能性が高いでしょう。

発生しているガス代を全て経費に計上できるわけではないため、集計を行う際には注意が必要です。

秘密鍵を紛失すると資産を失う

ハードウェアウォレットの最大の特徴は「秘密鍵を自分で管理する」という点にあります。

一方で、万が一この秘密鍵を紛失してしまった場合、そしてリカバリーフレーズなどの復旧手段も無くしてしまった場合、ウォレット内の資産には永久にアクセスできなくなります。

しかし、税務上は失った仮想通貨(暗号資産)を損失として計上できるとは限りません。

たとえ秘密鍵を紛失していようとも、ブロックチェーン上のアドレスには仮想通貨(暗号資産)が存在している状態であるため、外見上は保有し続けていると見なされる可能性があります。

損失として計上できない場合、それまでの利益との相殺ができずに、実際は大赤字であるにも関わらず税金が発生してしまう可能性も考えられるのです。

そのような事態に陥らないよう、秘密鍵やリカバリーフレーズは確実に保管・管理するようにしましょう。

ハードウェアウォレットでの税金に関わる損益計算方法・流れ

ハードウェアウォレットでは、国内仮想通貨(暗号資産)取引所のように取引履歴や損益が自動で集計されるわけではありません。

そのため、税務申告などに向けた損益計算を行う際には、自分で取引履歴を収集・整理して計算する必要があります。

ハードウェアウォレットを使用して仮想通貨(暗号資産)取引を行った場合の基本的な損益計算方法・流れについて見ていきましょう。

ステップ①:取引履歴を取得する

まずはじめに、1年間に行った取引履歴の情報を収集しましょう。

LedgerやTREZORなどのハードウェアウォレットでは、専用アプリを通じて取引履歴をCSV形式でダウンロードすることができます。また、ブロックチェーンエクスプローラーを利用して取引履歴を取得する方法もあります。

ブロックチェーンエクスプローラーはイーサリアムやBNBチェーンなどのブロックチェーンごとに提供されており、ウォレットアドレスを入力することで各ブロックチェーンにおける取引履歴を閲覧・ダウンロードすることができます。

各ブロックチェーンエクスプローラーの使い方については、関連記事でも詳しく解説しています。併せてご覧ください。

ステップ②:取得した履歴を整理する

CSV形式などでダウンロードした取引履歴は、項目名やフォーマットが統一されていないため、そのままでは損益計算に使うことができません。

そのため、税務処理に必要な情報を整理・抽出する作業が求められます。  
特に重要となるのが、以下の項目です。

● 取得日 / 売却日  
● 取得価格(日本円換算) / 売却価格(日本円換算)  
● 取引数量  
● ガス代などの手数料(日本円換算)

これらの情報を仮想通貨(暗号資産)の銘柄ごとにまとめておくと、損益の集計作業がスムーズになります。

中でも特に負担が大きい作業が、取得・売却価格の日本円換算でしょう。

ウォレットやブロックチェーンエクスプローラーの取引履歴は仮想通貨(暗号資産)建てで記載されていますので、各取引時点における仮想通貨(暗号資産)の市場価格を調べて、日本円に換算していく必要があります。

また、1年間に複数回の購入・取得取引がある場合は、「総平均法」または「移動平均法」に沿って平均取得単価を計算しておく必要もあります。(総平均法・移動平均法について詳しく知りたい方は、関連記事をご参照ください)

取引量が多いほど煩雑で手間のかかる作業ですが、手作業で損益計算を行う場合は必要不可欠なプロセスなのです。

ステップ③:損益計算を行い、確定申告に備える

整理した取引データをもとに、個別取引の利益・損失を計算し、1年間の合計損益を算出します。これを「損益計算」といいます。

損益計算の基本式は以下のとおりです。

譲渡価額(売却単価 × 数量) - 譲渡原価(取得単価 × 数量)= 損益

譲渡価額とは、仮想通貨(暗号資産)を売却した際の金額や、他人への支払いに使った際の価値のことです。

一方、譲渡原価とはその仮想通貨(暗号資産)を取得するために要した費用(原価)のことです。

仮想通貨(暗号資産)のスワップ(交換)取引であれ、商品・サービスの対価としての支払いであれ、譲渡価額が譲渡原価より高ければ利益となり、少なければ損失となります。

このようにして算出された損益の合計額から、必要経費(ガス代・取引手数料など)を差し引いた金額が、税務上の「所得」となるのです。

確定申告では所得額の申告が求められるため、1年間に行ったすべての取引について損益計算を行っておく必要があります。取引履歴の集計や日本円換算などを全て手作業で行うのは大変煩雑な作業です。

年間の取引件数が少ない場合はスプレッドシートなどを使って手計算を行う場合もありますが、計算ミスがあると誤申告による追徴課税のリスクも生じやすくなるため、細心の注意が必要です。

そのため、損益計算には専用の計算ツールを活用する方法をおすすめします。例えば、仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、取引履歴を読み込んで取引内容を自動識別する機能があるため、市場価格データに基づいて自動的に損益計算が行われます。

煩雑な損益計算を効率化・正確化したい場合は、こうした計算ツールの利用を検討してみましょう。

まとめ

ハードウェアウォレットは安全性の高い保管手段ですが、税務や管理のリスクがゼロになるわけではありません。

DEX(分散型取引所)でのスワップ(交換)取引や流動性提供など、ウォレットを接続することでさまざまな取引を行うことができますが、同時に正確な損益計算の実施も求められます。

取引の都度、日本円換算や取得単価の管理を手作業で行うのは大きな負担となり、ミスが発生すれば思わぬ追徴課税につながる可能性もあります。

仮想通貨専門の損益計算ツール「クリプタクト」であれば、TREZORを含む130種類以上のウォレット・ブロックチェーン・取引所からの取引履歴データ取り込みに対応しているため、大量の取引履歴を手作業で管理する必要がありません。

また、25,000銘柄を越える仮想通貨(暗号資産)や法定通貨の時価情報も保有しているため、日本円換算による正確な損益計算を自動で行うことができます。

「クリプタクト」は年間50件までの取引であればどんな取引でも損益計算が無料でご利用いただくことが可能です。