ガバナンストークンとは?その役割や特徴について解説!

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「ガバナンストークンって、仮想通貨と何が違うんだろう?」   
「投票ができるって言われてもイメージがわかない…」

ガバナンストークンという言葉を耳にして、このような疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、ガバナンストークンはほかのトークンとどのように違うのかというポイントから、その役割や事例などわかりやすく解説していきます。

目次

  1. ガバナンストークンとは
  2. ガバナンストークンの役割
  3. ガバナンストークンの事例紹介
  4. ガバナンストークンの取得から投票までの流れ
  5. まとめ

ガバナンストークンとは

ガバナンストークンとは、組織運営における意思決定に用いるためにブロックチェーン上で発行されるトークンの総称です。ここでは「トークン」と呼ばれるものの全体像も交えながら、ガバナンストークンの位置付けについて見ていきましょう。

仮想通貨やその他トークンとの違い

「トークン(token)」という用語はさまざまな用途で使われるため、その意味するところは文脈によって大きく異なります。

辞書では「象徴、証拠、しるし、代用貨幣」などの意味がある単語とされていますが、仮想通貨の分野では「代用貨幣」のニュアンスが近く、仮想通貨そのものを指す言葉として用いられています。

ただしビットコインやイーサリアムのように、そのブロックチェーンにおける主軸通貨となる仮想通貨は「ネイティブトークン」と呼ばれ、単に「トークン」と表現する場合は既存のブロックチェーンを間借りする形で発行されている仮想通貨を指すことが一般的です。

「トークン」にはその性質や用途に応じてさまざまな分類が存在します。例えばトークンの代替可能性(fungibility)を軸とした区別では、特定のデジタルアートなどと紐づく代替不可能なトークンはNFT(Non-Fungible-Token)、通貨や投票権などの数量ベースで代替可能なトークンはFT(Fungible-Token)として分類されます。

トークンの代替可能性(fungibility)を軸とした区別

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※自社にて作成

さらにFTの中でも、特定のサービスでポイントのように使用するものをユーティリティートークン(Utility Token)、ステーブルコインのようにその価値が資産によって担保されているものを資産担保型トークン(Asset backed Token)と呼ぶなど、それぞれ異なる切り口によって細かな分類が存在します。

このような分類の中で、「ガバナンス」すなわち組織運営に用いる目的で発行されたトークンが、ガバナンストークンと呼ばれているのです。

ガバナンストークンの位置付け

近年、次世代の分散型インターネットの概念としてWeb3(3.0)が盛り上がりを見せる中、組織の在り方についても非中央集権的な形態であるDAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)が注目を浴びています。

ガバナンストークンは特にこのDAOにおける意思決定で重要な役割を担います。

中央管理者が存在しないDAOでは、従来よく見られるような、役職に応じて権限が付与されるピラミッド階層型の組織形態は用いられません。

その代わりに、メンバーは一定の条件に応じて付与される投票権を行使する形で組織運営に参加することになります。

メンバーがその条件を満たしていることを証明する手段として位置付けられているのが、ガバナンストークンという仕組みなのです。

なお、Web3(3.0)やDAO(分散型自律組織)については、以下の記事でも詳しく解説していますので、興味のある方はぜひこちらもご覧ください。

ガバナンストークンの役割

それではガバナンストークンの代表的な役割について、それぞれ見ていきましょう。

投票権の提供

ガバナンストークンの最も重要な役割として、トークン保有者にプロジェクトの意思決定における投票権を提供する点が挙げられます。

投票権と紐づいたガバナンストークンを、コミュニティメンバーやサービスのユーザーなど広い範囲に保有してもらうことで、特定の管理者が意思決定を独占しない非中央集権的な組織運営が可能となります。

また一部のガバナンストークンでは、自らの保有する投票権を信頼できる他の保有者に委任する機能なども実装されており、より大規模で高度な組織運営にも対応しつつあります。

インセンティブの提供

ガバナンストークンは、プロジェクトに協力してくれる人々へのインセンティブの提供にも用いられます。

例えば、代表的なDEX(分散型取引所)であるUniswapでは、仮想通貨をロックすることでDEXに流動性を提供してくれるユーザーに対して、ガバナンストークンであるUNIを謝礼として還元しています。

また開発者への報酬の支払いに用いられる場合や、プロジェクトの初期においては無料でガバナンストークンを配布するプロモーション目的での活用も見られるなど、さまざまな形のインセンティブとして活用されています。

コミュニティの結束力向上

DAOなどの分散型組織においては、プロジェクトとそのメンバーの利害一致が重要な要素となります。

従来型の企業と従業員の関係であれば、仮にそれぞれの考え方が一致しなかったとしても、企業が十分な報酬を支払い、従業員がきちんと労働を提供していれば雇用関係は継続することでしょう。

しかし一般的に出入りの自由度が高いDAOでは、プロジェクトとメンバーの利害の不一致は、プロジェクトの継続性の面で大きな問題となります。

ガバナンストークンは、こうした不一致を解消することにも役立ちます。

プロジェクトの意思決定をガバナンストークン保有者であるメンバーに委ねることで、プロジェクトの価値向上がメンバー自身の利益に繋がるようになります。

これは、多くのガバナンストークンが仮想通貨取引所やDEXなどを通じて売買可能であること、またプロジェクトの価値が向上することでガバナンストークンの需要も増加し、結果として資産価格が上昇することが期待されるからです。

プロジェクトに対して熱意のあるメンバーはより多くのガバナンストークンを取得することで発言権を増すこともでき、こうした循環によりコミュニティの結束力が向上すると言われています。

ガバナンストークンと株式の類似点と違い

DAOにおけるガバナンストークンの役割は、従来の企業における株式の役割と非常に類似しています。

前述の通り、ガバナンストークンは保有者に組織運営への投票権を付与し、必要に応じてプロジェクトの利益を分配する役割も果たします。これは、株式における株主総会での投票権や企業利益の配当、優待制度に相当するものと言えるでしょう。

さらにガバナンストークンと株式の両方が、プロジェクトやビジネスの資金調達手段として活用されている点も大きな共通点です。

しかし、両者には重要な違いが存在することも忘れてはいけません。

株式がその企業に対する法的な支配権に相当するのに対し、ガバナンストークンで関与できる範囲はDAOであらかじめ定められた範囲に留まります。また、株式の発行主体は株式会社として法人格を有しますが、ガバナンストークンの発行主体であるDAOには法人格が認められていません。

現在の日本の法律ではDAOの法的な位置付けが未確定なため、責任の所在が曖昧になりやすい点にも注意が必要でしょう。

ガバナンストークンの事例紹介

それでは、ガバナンストークンの具体的な事例について見ていきましょう。   
ここでは代表的な2銘柄についてご紹介します。

UNI(ユニスワップ)

UNIはUniswapのガバナンストークンです。

世界最大級のDEX(分散型取引所)として知られるUniswapですが、その運営は開発を主導する企業「Uniswap labs」と、民主的な投票によってプロジェクトの意思決定を行うDAOが並存する体制となっています。

UniswapではUniswap Governanceと呼ばれるガバナンス用フォーラムが用意されており、ユーザーはUniswapの運営方針について意見を交わすことができます。

実際に2021年にUniswapがPolygonチェーンに対応した際も、DAOメンバーによる発案と投票、採択を経てUniswap labsが開発を行いました。

Uniswapサイト上には「ガバナンスに投票する」という機能が用意されており、UNIを保有しているユーザーはMetamaskなどのウォレットをサイトに接続することで、提案されている議題に対して投票を行うことができるようになっています。

UNIは他の仮想通貨とスワップ(交換)することで売買できるほか、流動性マイニングなどの報酬として入手することもでき、投資対象としても注目を集めています。

MKR(メイカー)

MKRは、特定の暗号資産をロックすることで米ドル建ステーブルコインであるダイ(DAI)を発行できるプラットフォームを運営する、MakerDAOのガバナンストークンです。

ユーザーは、MakerDAOのサイトにMetamaskなどのウォレットを接続することで、サイト上の「Vote」機能から保有するMKRの量に応じて運営方針への投票を行うことができます。

またMKRの特徴として、日本国内の仮想通貨取引所に上場されているという点が挙げられます。

2021年1月に日本で初めてBitbankがMKRの取扱いを開始したのに続き、2022年2月にはGMOコイン、直近では2023年6月にコインチェックでも取扱い開始を発表するなど、取扱い取引所は続々と増え続けています。

多くのガバナンストークンが国内取引所に上場されていない中、日本の金融当局に登録された安全な経路でMKRを売買できる点は、日本人投資家にとって大きなメリットと言えるでしょう。

ガバナンストークンの取得から投票までの流れ

それでは、実際にガバナンストークンを取得して投票するまでの一般的な流れについて解説していきます。

1. ガバナンストークンの取得

ガバナンストークンはエアドロップやプロジェクトへの協力などさまざまな方法で取得できますが、最も確実な方法はDEXや仮想通貨取引所を通じて購入することです。

前述したMKRの場合、日本国内の仮想通貨取引所でも購入することが可能ですので、日本人でも容易かつ安全に取得することができるでしょう。

2.ガバナンストークンをブラウザウォレットに保管

多くのDAOでは、ガバナンストークンを保管しているウォレットをプロジェクトのWebサイトへ接続することで、投票機能を使用できるような仕組みが採用されています。

使用できるウォレットはプロジェクトによって異なりますが、MKRを含む多くのプロジェクトではMetaMaskなどのブラウザウォレットに対応していることが一般的です。

投票に参加したいプロジェクトに対応しているブラウザウォレットを導入し、取得したガバナンストークンを移して保管しておきましょう。

3.プロジェクトの投票に参加する

投票に参加するには、プロジェクトの投票サイトへアクセスする必要があります。

サイトの構成や使い方はプロジェクトによって異なりますが、プロジェクトの公式サイトから「投票」や「Vote」などのリンクでアクセスできるケースが多いため、探してみましょう。

投票サイトでは、ウォレットをサイトへ接続する操作を行う必要があります。   
「ウォレットを接続」や「Connect wallet」などのボタンでブラウザウォレットを接続することで、投票機能を使えるようになることが一般的です。

なお、ブラウザウォレットをサイトに接続する際は、そのサイトが本当に信頼できるサイトであることを十分に確認してから行うようにしてください。

最後に提案されている議題を読み、ご自身の考えに応じて投票を行いましょう。

まとめ  

ガバナンストークンは、近年、成長が著しいDAOやDeFiなどのトレンド分野とも密接に関わる重要な仕組みであることがイメージいただけましたでしょうか。

魅力的な投資対象の一つとして注目を集めているガバナンストークンですが、新しい分野であるが故に社会的な整備が未発達である点には注意が必要です。日本においてもDAOに法人格を付与することなどが検討されてはいるものの、実現にはまだ時間を要することでしょう。

ガバナンストークンに投資をする際は、そのプロジェクトの将来性とリスクの両面をしっかり検討することを忘れないようにしてください。

なお、仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」を運営している当ブログでは、このほかにも仮想通貨関連の最新トレンドワードや、知っておきたい仮想通貨の税金知識などについて解説記事を公開しています。

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