仮想通貨でできた借金は自己破産できる?税金の取り扱いは?

近年「億り人(おくりびと)」という言葉に代表されるように、仮想通貨(暗号資産) 取引は一夜にして大金を得る可能性がある投資方法として多くの人から注目を集めています。しかし、仮想通貨取引で負債を抱える方も少なくありません。仮想通貨で借金を背負ってしまった場合、自己破産できるのでしょうか?またその場合の税金はどうなるのでしょうか?

この記事では、なぜ仮想通貨取引によって破産してしまうのか、仮想通貨取引によって借金を抱えてしまった場合自己破産申請ができるのか、そして自己破産ができない場合にはどうすればいいのかについて解説します。

目次

  1. 仮想通貨(暗号資産)で破産してしまうのはなぜ?
  2. 仮想通貨(暗号資産)でできた借金は自己破産できる?
  3. 仮想通貨(暗号資産)の税金は自己破産で免除される?
  4. 自己破産できない場合はどうすればいいか
  5. 仮想通貨(暗号資産)を持っていても自己破産できないケース
  6. まとめ

仮想通貨(暗号資産)で破産してしまうのはなぜ?

仮想通貨取引は手軽に始められる一方で、大きなリスクも存在します。ここでは破産状態に陥る主な原因について見ていきましょう。 

手軽に取引ができてしまう

仮想通貨取引は、スマホひとつで誰でも簡単に取引を始められるという手軽さがあります。近年では取引所の口座開設も数分で完了し、すぐに購入や売却が可能です。

しかし、この「手軽さ」が落とし穴となることもあります。投資経験やリスク管理の知識が乏しいまま高額な取引を行ってしまい、大きな損失を出してしまうケースも少なくないのです。

中には、SNSやYouTubeなどで「すぐ儲かる」「初心者でも簡単」といった情報に影響され、勢いで多額の投資を始めてしまう人もいます。手軽さの裏には、リスクもある点を理解しておく必要があるでしょう。

価格変動による損失リスク

仮想通貨市場は、株式市場などに比べて価格変動が大きいことで知られています。

わずか数時間や1日で倍増や半減といった激しい値動きを見せることも珍しくなく、上昇時には大きな利益を得られる一方で、下落時には多額の資産を一瞬で喪失することもあります。

特に初心者の場合は、こうした極端なボラティリティ(価格変動)の中で冷静な判断力を失い、感情的な売買によって損失が拡大してしまうケースも少なくないのです。

下落局面でパニック売りをしたり、損切りをためらって損失を拡大させてしまうケースはその典型例と言えるでしょう。

レバレッジ取引や借金によるリスク

レバレッジ取引とは、少ない資金で多額の取引ができる仕組みのことです。例えばレバレッジ10倍の場合、10万円の資金で最大100万円分の取引が可能になります。

利益が出れば効率よく資産を増やせますが、損失が出た場合には同じ倍率で損失が膨らんでしまう点に注意が必要です。

国内の取引所ではレバレッジ倍率に制限(最大2倍)がありますが、海外取引所では数十倍の取引が可能なところもあり、時には元金を上回る損失を被る可能性もあります。

レバレッジ取引は高い利益を狙える反面、破産に至る可能性にも注意すべき投資方法と言えるでしょう。

税金が支払えずに破産するケース

初心者において特に盲点となりやすいのが、税金による破産です。

仮想通貨取引で得た利益は原則として雑所得に分類され、翌年に所得税や住民税の支払いが発生します。

このとき注意すべきなのは、「最終的に手元にいくらの日本円が残ったか」と「税務上の利益」は異なる場合があるという点です。

例えば、仮想通貨同士の交換取引で多額の利益を得た後に保有する通貨の価値が暴落した場合、最終的に換金して得られる日本円よりも税金の方が高くなる場合があります。

どのような取引が税務上の利益として課税対象になるのか、税金の基本的な仕組みを正しく理解していないと、こうした税金関係のミスで破産状態に陥る危険性があるのです。

仮想通貨(暗号資産)でできた借金は自己破産できる?

仮想通貨取引の損失によって多額の借金を抱えた場合、自己破産による救済を受けることはできるのでしょうか。ここではその仕組みと注意点を確認していきましょう。

自己破産とは

「自己破産」とは借金などの返済が困難になった人が裁判所に申立てを行い、法律上の手続きによって借金の返済義務を免除してもらう制度のことで、破産状態に陥った人の「生活再建」を目的とした制度です。

返済の免除が認められれば原則として借金の支払い義務がなくなります。

一方で、財産は生活に必要な最低限のものを除いて処分されるほか、破産者として官報に住所氏名が掲載されるなどのデメリットも存在します。その後の借入や一部職業への就職などに影響する可能性もあります。

「自己破産」は、立ち行かなくなった生活を再建するための、あくまでも最終手段として設けられた制度と言えるでしょう。

自己破産の成立条件と仮想通貨

裁判所が借金の返済を免除することを「免責」と呼びます。

この免責許可は申し立てれば必ず認められるというものではありません。

免責不許可事由については破産法第252条第1項に定められていますが、その中の一つに「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少」させた場合との記載があります。

つまり、投機的な仮想通貨取引が自己破産の原因になった場合は、免責許可が認められない可能性があるのです。

ただし、免責不許可事由に該当している場合であっても、その程度が軽微である場合や、破産者が真摯(しんし)な反省をして、破産手続に誠実に対応し、経済的更生が期待できる場合などは免責許可が認められる場合があり、これは「裁量免責」と呼ばれています。

仮想通貨取引によって自己破産する場合は「裁量免責」によって免責許可が認められる可能性がありますが、そのためには少なくともしっかりと反省をして二度と同じ失敗は繰り返さない決意を裁判所に示すことが必要でしょう。

自己破産の注意点

自己破産で免除されるのは借金やクレジットカードなどの「私的債務」に限られ、税金・社会保険料・罰金などの「公的債務」は免責の対象外である点に注意が必要です。

つまり、仮想通貨の利益に対して発生した所得税や住民税を滞納している場合、自己破産をしても税金の支払い義務は残ることになります。

どうしても税金を支払えない場合は、税金の分納や猶予などの制度を活用できないか税務署や役所に相談してみると良いでしょう。

仮想通貨(暗号資産)の税金は自己破産で免除される?

自己破産によって免責許可が認められると、すべての支払いが免除されるかというと、そうではありません。
破産法では、いくつかの請求権については免責されないこととされています。

自己破産しても税金の支払義務は免除されない

破産法第148条及び破産法第253条 により、「租税等の請求権」は免責されないこととされています。

租税とは税金のことで、自己破産をしても税金の支払い義務は免除されないということです。例えば、仮想通貨取引で多額の利益を得るとその翌年に支払うべき税金も高額となりますが、もし納税資金を確保していないまま仮想通貨が暴落した場合、現金化をしても税金を払えないという事態に陥る可能性があります。
このような状況で自己破産をして仮に免責を受けることができた場合、借金などの返済は免除される可能性はありますが、税金の支払い義務は残ることになります。

そもそも、自己破産は借金などの返済を免除する制度ですので、このような免責の対象となる借金などが無い場合は自己破産をすることができません。税金を支払えない場合は、税務署に速やかに分納や猶予の相談をしましょう。
なお、税金を滞納すると延滞税や追徴課税の対象となるほか、最終的には財産を差し押さえられる場合もあります。決して放置することなく、可能な限り早く対応することが重要です。

税金以外で免除されない支払義務

なお、税金以外の免責の対象とならない債権には、例えば、次のようなものがあります。

● 一定の不法行為に対する損害賠償金 
● 養育費や婚姻による費用 
● 雇用関係に基づく給料などの支払い 
● 罰金など

仮想通貨取引とは直接関係がないためこの記事では詳述しませんが、自己破産によって全ての責任が免除されるわけではないという点は押さえておきましょう。

税金未納が発覚した場合のペナルティ

税金が支払えないからといって、何もせずに放置していると税金未納(脱税)として重いペナルティを課せられる可能性があります。

税金の納付期限を過ぎると延滞税が加算されていくほか、悪質な場合は無申告加算税や重加算税などが追加され、本来よりも税額が大幅に増えてしまいます。

また、税務署からの督促状を無視した場合、銀行口座や給与の差し押さえといった強制徴収が行われることもあるため、絶対に放置してはいけません。

仮想通貨に関する税金や確定申告については、こちらの記事でも詳しく解説していますのでぜひ併せてご覧ください。

自己破産できない場合はどうすればいい?

それでは、免責許可が認められなかったり、免責の対象となる借金がなく自己破産ができないといった場合は、どうすればいいのでしょうか。

代表的な方法を2つご紹介します。

任意整理を検討する

任意整理とは、債務者と債権者(貸金業者など)が直接交渉をして、現実的に返済可能な条件で合意することを目指す方法です。利息の軽減や返済期限の猶予などによって月々の返済負担を軽くすることができます。

自己破産の場合と違い免責不許可事由などもありませんので、仮想通貨取引による借金であっても利用ができるほか、裁判所を介さないため時間や費用を抑えられる点も特徴です。

個人再生を検討する

個人再生とは、裁判所に返済が困難であることを認めてもらい、原則3年〜5年で返済できるように借金を減額等した返済計画(再生計画)を組む方法です。自己破産とは異なり、返済計画にしたがった返済をすることで、基本的には住宅ローン返済中の持ち家がある場合も手放さずに済むというメリットがあります。

裁判所を介して借金の全額免除を受ける自己破産と、直接交渉によって利息軽減や猶予だけを受ける任意整理との中間に位置する手続きと言えるでしょう。

弁護士や相談窓口を活用する

任意整理や個人再生といった手続きは複雑で、自分一人で調べて対応するのには限界があります。特に返済や納税が滞るような行き詰った状況下では、なかなか冷静な判断ができない可能性もあるでしょう。

そのような場合、まずは弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

弁護士に相談というと多額の費用がかかるイメージがあるかもしれませんが、各地の自治体や弁護士会、法テラスなどの団体が提供している無料相談窓口であれば、料金の心配なく相談をすることが可能です。

もちろん、無制限に相談ができるわけではありません。利用条件や回数・時間制限などは主催団体によって異なりますので、自分の条件にあう無料相談を探して予約すると良いでしょう。

仮想通貨(暗号資産)を持っていても自己破産できないケース

仮想通貨を保有していると、状況によっては自己破産が認められない場合があります。ここでは代表的な3つのケースについて見ていきましょう。

差し押さえ対象になる仮想通貨資産がある場合

自己破産を申し立てた場合、保有資産は原則すべて財産として換金・処分の対象になります。

仮想通貨も例外ではなく、一定額以上の資産を保有している場合は、破産管財人によって取引所口座やウォレットの内容が確認され、換金されたうえで債権者に配当されることになります。

借金の返済を免除されるとは言っても、免責が決定される前に持っている財産から可能な限り債権者への返済を済ませることが大前提なのです。

基本的に手元に残すことができるのは生活に必要な最低限の財産のみであり、仮想通貨がそれに該当するかどうかは、資産の内訳などによりケースバイケースと言えるでしょう。

隠し持っている場合

仮想通貨を保有しているにもかかわらず、申告せずに隠す行為は絶対にしてはいけません。

自己破産は「誠実な申告」が大前提です。資産隠匿が発覚した場合は免責不許可事由となり、免責不許可の判断が下される可能性があります。免責が認められないと借金の支払い義務が残ったままとなり、自己破産の効果を得ることはできません。

そもそも、裁判所は免責決定の前に破産者の財産やお金の流れを徹底的に調査します。破産管財人が必要と判断すれば、金融機関や証券会社等への情報照会も行われます。

たとえ仮想通貨を取引所から自分のウォレットに移したとしても、ブロックチェーンによって取引履歴を追跡することが可能であるため、嘘をついても必ずバレると考えた方がよいでしょう。

浪費・投機目的とみなされる場合

自己破産の手続では、浪費や賭博(ギャンブル)などの射幸行為は「免責不許可事由」とされています。

仮想通貨の短期売買や過度なレバレッジなど投機目的の取引は、この「射幸行為」に含まれると考えられており、免責を受けられない可能性があるのです。

ただし、免責不許可事由がある場合でも、その程度が軽微である場合や、真摯な反省が認められる場合には、裁判所の裁量で免責が認められる場合もあります。

破産状態に至るような無計画な投機行為を控えることが何よりも大事であることは言うまでもありませんが、万が一、破産状態に至ってしまった場合は、真摯に反省して生活を再建する意志を強く持つことが大切でしょう。

まとめ

仮想通貨取引による借金が原因であっても自己破産は選択し得る手続にはなります。しかし、免責許可が認められるためには、当然ながら一定の厳しい基準が存在します。

特に、投機性の高い仮想通貨取引によって借金が膨らんだことが原因である場合は、少なくとも二度とそのような失敗を犯さないことを裁判所に信じてもらう努力が必要でしょう。裁判所は破産手続に関連して詳細な聞き取りや資料提出などを求める場合がありますが、こうした調査に誠実かつ正確に対応できなければ、「反省が見られない」として裁量免責が認められない可能性がありますのでこの点に関しては十分に留意しておきましょう。

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