仮想通貨を年またぎで損益確定したときの税金計算はどう変わる?

仮想通貨(暗号資産)は激しい価格変動を繰り返していますが、2025年に入ってからもビットコインやイーサが過去最高価格を更新するなど成長が続いており、含み益を抱えている方も多いのではないでしょうか。

「数年前に購入した仮想通貨を、今年売却しようと考えている」  
「年をまたいで売買した場合の、税金計算の仕方がわからない」

この記事ではこうした悩みをお持ちの方向けに、仮想通貨を年をまたいで損益確定する場合知っておきたい4つのポイント、そのうえで年をまたぐ前にしておきたい対策について解説しています。

目次

  1. 仮想通貨は年をまたいで損益確定ができる
  2. 年をまたいで取引する、年またぎ取引とは 
  3. 仮想通貨を年またぎで損益確定した場合|税金計算の4つのポイント
  4. 年をまたぐ前にしておきたい税金対策
  5. 年またぎ取引の税金計算前に実施すべきこと

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仮想通貨は年をまたいで損益確定ができる

仮想通貨、すなわち暗号資産に関する個人の税金には「所得税」と「住民税」があります。

どちらも1月1日から12月31日までの1年間を計算期間として、年末時点までに発生した所得額の累計に応じて、税率と税額が決まる仕組みとなっています。

仮想通貨取引については利益が確定した時点で「所得」となりますので、年内に利益を確定させなければ所得とはなりません。そして翌年以降に売却して利益が確定した時点で所得となり、税金が発生することになるのです。

税金計算のやり方などは後ほど解説しますが、ここでは仮想通貨は年をまたいで損益確定ができる、という点を押さえておいてください。

なお、所得とは収入から必要経費を差し引いた利益を指します。つまり、赤字の場合は利益がないため所得は生じません。

仮想通貨取引による所得は通常「雑所得」と呼ばれる所得に区分されますが、会社員などの給与所得者の場合は雑所得が20万円を超えると、原則的に所得税の確定申告をする必要があります。

必要な確定申告を期限内に行わないと税務調査によって指摘を受け、延滞税や無申告加算税などのペナルティを課せられる場合があります。申告書の提出は忘れずに行うようにしましょう。

なお、確定申告書は住民税の申告も兼ねているため、確定申告を行った場合は住民税の申告は必要ありません。

ただし注意点として、確定申告が不要な場合は別途住民税の申告が必要になる場合があります。通常の会社員の場合は20万円未満は申告が不要ですが、住民税は20万円未満であっても申告が必要になっています。その場合は、お住まいの市区町村に確認してみると良いでしょう。住民税の申告手続きについてはこちらをご覧ください。

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年をまたいで取引する、年またぎ取引とは

税負担の軽減を目的として、年末から年始にかけて戦略的に仮想通貨(暗号資産)の売買を行うことがあります。

日本の税制では、個人の所得税は1月1日から12月31日までの1年間に発生した所得を基に計算されます。つまり、12月31日以前に行った取引の損益はその年の課税対象に含まれますが、翌年1月1日以降の取引は翌年分として扱われることになります。

この仕組みを利用し、意図的に損失や利益を確定させるのがいわゆる「年またぎ取引」です。

年またぎ取引のメリット

年またぎ取引の最大のメリットは、税金の発生タイミングを調整できる点です。  
例えば、含み益のある仮想通貨(暗号資産)を売却する場合、年内に売却するか、年明け以降に売却するかで課税年度を調整できます。

所得税は所得額が多くなるほど税率が高くなる「累進課税方式」であるため、大きな利益を得た際は利益確定を複数年度に分散することで、税率を抑えられる可能性があります。

また、同一年内で既に大きな利益が出ている場合には、含み損のある銘柄をあえて売却し、損失を確定させることで利益を相殺し、所得を圧縮することができます。結果として節税効果が期待できる場合があるのです。

年またぎ取引のデメリット

一方で、年またぎ取引にはリスクもあります。

一般的に裏付け資産が乏しい仮想通貨(暗号資産)は投機的な取引が多く、価格変動が大きくなる傾向にあるため、取引のタイミングによっては想定外の結果になることがあります。

例えば、年末に含み損のある銘柄を売却した直後に価格が急上昇すると、値上がり益を得る機会を逃してしまう可能性があります。

また、国の税制度は将来的に変更される場合もあるため、利益確定を将来に先延ばししても、税制改正などによって当初想定していた節税効果が得られない可能性も否定はできません。

年またぎ取引を行う際は、市場や税制の動向についても確認しながら、慎重に判断する必要があるでしょう。

仮想通貨を年またぎで損益確定した場合|税金計算の4つのポイント

それでは、実際に年をまたいで損益確定した場合の税金計算について解説していきます。

重要な4つのポイントについて、それぞれ見ていきましょう。

ポイント1:過去の取得金額は引き継いで考える

仮想通貨売買の損益は、仮想通貨の取得価額と売却価額の差額から求められます。

すなわち、仮想通貨を売却して得た金額から、その仮想通貨を取得した時の金額を引いて残った額が利益ということです。

具体的なサンプルケースで見てみましょう。

2024年にビットコイン1BTCを600万円で購入した。その後、2025年にその1BTCを1500万円で売却した。(このケースでは必要経費はないものとする)

⇒ 売却価額(1500万円) - 取得価額(600万円) = 900万円の利確

このように年またぎで損益確定した場合であっても、購入時のレートに基づく取得価額を引き継いで考えます。

とはいえ、年内に仮想通貨の売買を複数回行っている場合は取得価額の計算に手間がかかります。

具体的な計算方法は別の記事で詳しく解説していますので、興味のある方はこちらも併せてご覧ください。

なお、仮想通貨の売買に必要経費が発生している場合は利益から差し引くことも可能です。上記のケースでは必要経費はないものとしていますので、利益として確定された900万円を2025年の所得として計上することになります。

ポイント2:仮想通貨の損失は繰り越せない

株式投資の場合、その年に発生した損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」の制度があります。

翌年以降に大きな利益を得た場合の節税としてメリットがあるため、多くの投資家が活用している制度ですが、現行(2025年8月時点)の税制では仮想通貨の損失は繰り越すことができません。

株式投資の所得は通常「譲渡所得」となるのに対し、仮想通貨の取引で得た所得は原則「雑所得」に区分されることから、「繰越控除」制度の適用対象外とされているためです。

ただし、同一年内に同じ税区分(雑所得のうち総合課税の対象)で申告するのであれば損益通算をすることは可能です。

例えば、2023年に仮想通貨FX取引で50万円の赤字が発生し、一方で仮想通貨現物取引では70万円の利益が発生したようなケースでは、どちらも雑所得として申告している場合は損益を通算することが可能です。

つまり、利益70万円から損失50万円を引いた20万円分が課税所得となるため、うまく組み合わせることで節税対策となります。

含み損益と税金対策について解説した記事もご覧ください。

ポイント3:取引成立時点が課税のタイミングになる

課税がどのタイミングで行われるのかは、しっかりと押さえておく必要がある重要なポイントです。

例えば、12月31日までに行った取引の利益が、年が明けた1月1日以降に口座へ入金された場合、その所得はどちらの年に含めるべきでしょうか。

仮想通貨取引における課税のタイミングは、取引成立時点とされています。そのため、上記のケースであれば、12月31日までの損益として認識されます。       
実際に売却益などが口座に入金されているかを問わず課税対象となりますので、注意が必要でしょう。

このパターンはマイニングやステーキング、またはレンディングなど、仮想通貨で報酬を得る取引を行っている場合によく問題となります。

仮想通貨で報酬を受け取ると、例え日本円に換金していなくともその時点の時価に応じて日本円換算で所得に計上されます。もし、翌年に仮想通貨価格が暴落してしまった場合、暴落後に仮想通貨を売却しても少額の日本円しか得られず、税金の方が高いという事態に陥る可能性があるのです。

こうした事態は、報酬で得た仮想通貨を年内のうちに売却して日本円に換えておくことで回避できますが、課税のタイミングを意識して対策を考えることがいかに重要であるかを物語るケースと言えるでしょう。

ポイント4:仮想通貨を交換した場合も課税対象になる

仮想通貨で損益確定するタイミングは、仮想通貨を売却した時だけではありません。

仮想通貨で商品やサービスなどの代金を支払った場合や、別の仮想通貨を購入した場合も、  
仮想通貨の譲渡価額と取得価額の差額から損益を確定させる必要があります。

こちらも具体的なサンプルケースを見てみましょう。

2024年にイーサリアム1ETHを40万円で購入した。2025年に60万円相当のNFTを購入するため、その1ETHを支払った。(このケースでは必要経費はないものとする)

⇒譲渡価額(60万円) - 取得価額(40万円) = 20万円の利確

このように売却益が日本円で発生していない場合であっても、決済取引を行った時点で損益が確定して課税対象となりますので、注意が必要でしょう。

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年をまたぐ前にしておきたい税金対策

それでは、仮想通貨の損益確定で年をまたぐ前にしておきたい税金対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは代表的な3つについて解説していきます。

仮想通貨の取引に使用した経費がないか再確認する

仮想通貨取引において取引上欠かせない支出については、必要経費として計上し、利益と相殺することができます。

所得金額が低くなれば税金額も少なくなりますので、節税対策として必ず意識しておきたいポイントでしょう。

仮想通貨取引における経費として認められやすい例としては、以下のようなものが挙げられます。

● 仮想通貨の取得費       
● 仮想通貨取引所の取引手数料・出金手数料           
● 仮想通貨マイニングにかかった電気代           
● 仮想通貨取引専用のスマホやPCの購入費とその通信費など

なお、スマホやPCの購入費については10万円未満であれば経費となりますが、10万円以上の場合は減価償却が必要になる点に注意が必要です。さらに、プライベート分と仮想通貨投資を一つのPCで実施しているのであれば、仮想通貨投資に関する部分だけを経費として計上します。これを家事按分と言います。

また、仮想通貨取引との関連性が低ければ、税務署によって利益との相殺が不適切だと判断される可能性もあります。

不正な経費計上は脱税に繋がる恐れもありますので、実際に仮想通貨取引にかかった経費だけを適切に計上するようにしましょう。

含み損のある仮想通貨を売却して利益と相殺する

仮想通貨取引における損失は翌年以降に繰り越すことができません。

そのため、購入した仮想通貨の価格が下落しているものの、他の取引では大きな利益がでているという場合は、損益通算のためにあえて仮想通貨を売却して損失を確定させるというのも、税金額を抑えるための一つの手段となります。

翌年以降も持ち続けたい銘柄である場合には、年末に売却してから年明け早々に買い戻すという方法も考えられるでしょう。

仮想通貨取引の損益計算をしっかり行い、想定される税金額を把握しつつ年内に行える最適な取引を模索することで、税金額を最小限に抑えることに繋がります。

ふるさと納税などを活用して住民税・所得税を軽減

仮想通貨(暗号資産)取引で得た利益は雑所得として課税されます。 
そのため、「ふるさと納税」を活用することで、住民税や所得税の負担を軽減することが可能です。

ふるさと納税とは、自己負担2,000円を除いた寄付額が所得税や住民税から控除される制度です。 
仮想通貨(暗号資産)取引によって所得が増えた年ほど、控除の上限額も大きくなるため、税負担をより軽減しやすくなります。さらに、寄付先の自治体からは返礼品も受け取れるため、節税と地域貢献を同時に実現できる点も魅力です。

ただし、控除を受けるには確定申告やワンストップ特例制度などの手続きが必要です。手続きを忘れてしまうと、単純に全額を寄付しただけになってしまうので注意しましょう。

年またぎ取引の税金計算前に実施すべきこと

それでは年またぎ取引の税金計算にあたって、事前に実施しておくべきことについて見ていきましょう。

取引履歴はすべてバックアップしておく

仮想通貨(暗号資産)の取引履歴は必ず全て保存しておきましょう。 
税金計算には取得原価の情報が必要であるため、年末年始の年またぎ取引の履歴だけでなく、1年間に行った全ての取引について情報を保存しておく必要があります。 
取引所のCSVやウォレットの履歴、ブロックチェーンエクスプローラーの情報も含め、取引日や数量、手数料、日本円換算額がわかるように整理されていることが重要です。 
また、万が一の喪失に備えてバックアップをとることも忘れないようにしましょう。

課税対象となる取引パターンを事前に理解しておく

仮想通貨(暗号資産)取引の課税は、基本的に利益が確定した時点で発生します。 
例えば、購入した仮想通貨(暗号資産)を売却した時点で、購入額と売却額の差額が利益として確定します。

また、仮想通貨(暗号資産)を商品・サービス支払いに使う場合や、他の仮想通貨(暗号資産)と交換する取引を行った場合も、その時点で時価に基づいた税務上の利益が生じます。 
一方、マイニングやステーキングなど、仮想通貨(暗号資産)で報酬等を受け取ったときも時価に基づいて利益が認識されます。

このような課税対象となるパターンを事前にしっかりと把握しておきましょう。

税額計算には専用ツールを活用する

仮想通貨(暗号資産)の税額計算は、取引頻度や種類が増えるほど、複雑で手間のかかる作業になっていきます。

取引履歴のフォーマットは取引所やウォレットごとに異なりますし、ブロックチェーンエクスプローラーの情報には通常、日本円換算額は記載されていません。また、計算する際は課税対象となるパターンの取引を漏らさずにピックアップし、それぞれの損益を計算しなければなりません。

もちろん、途中で計算ミスがあると税額の計算に誤差が生じ、虚偽申告となる恐れもあります。 
こうした手間やミスを防ぐには、「クリプタクト」のような専用の損益計算ツールを活用する方法がおすすめです。

税金計算はクリプタクトで行おう

仮想通貨の取引で得た所得は損失繰越ができないため、損益計算による所得コントロールは納税額に大きな影響を及ぼします。       
含み損がある場合は適度に利確をし、損益を0円に近づけることで、長期的に税金を抑えることができます。

クリプタクトを利用すれば、その時点での通貨ごとの実現損益も確認できるため、カスタムファイルを作成して売却した場合のシミュレーションを行うことも可能です。       
 ポートフォリオ機能 通貨別

納税額をできるだけ減らすためにも、クリプタクトを活用しながら賢く税金計算をしましょう。