2021.10.26|銘柄ピックアップ:サイゼリヤ(7581)

銘柄ピックアップ:サイゼリヤ(7581) / introduction7581

執筆:西村 麻美

サイゼリヤの株価情報


【銘柄注目ポイント!】

製造直販システムを確立したサイゼリヤは利益率の高いアジアでの成長に期待!



基本情報


企業概要

1968年個人店舗の洋食店サイゼリヤ創業。1973年法人化。埼玉県吉川市に本社を置低価格イタリアン・ファミリーレストラン・チェーン「サイゼリヤ」を運営する外食企業。1977年より多店舗化。1998年日本証券業協会に株式を店頭登録。1999年東証二部上場。2000年東証一部に市場変更。2021年8月末現在、国内店舗数1,089店。海外は上海150店、広州126店、北京86店、香港54店、台湾17店、シンガポール31店。計1,553店舗。店舗は全て直営でFC形態はない。


株式関連情報

株価3,130円(2021年10月21日)
発行済株式数52,272,342株(うち自己株式 3,514,417株)
上場市場東証一部
時価総額1,526億円


従業員数

正社員2,082人、準社員7,941人(単体、2020年8月現在)


財務データ

2017/82017/82018/82019/82021/8
売上高(百万円)148,306154,063156,527126,842126,513
営業利益(百万円)11,2168,6409,599▲3,815▲2,264
当期利益(百万円)7,4965,0744,980▲3,4501,765
EPS(円)151.48102.69101.48▲70.8436.31
純資産(百万円)72,66380,41285,17780,35583,569
BPS(円) 1,618.631,681.871,728.671,640.561,700.52
純資産(百万円)102,731104,896108,970120,068138,045


ビジネスモデル


製造直販を手掛けて20年以上

過去2年近く外食チェーンはコロナ感染拡大の中、繰り返された緊急事態宣言が業績を直撃し苦しんできた。しかし、全国的に緊急事態宣言が解除された今アフターコロナを見据えて業績回復が期待されている。数ある外食産業チェーンの中でサイゼリヤはSPA(製造小売業)のように商品開発~食材の生産~加工~配送まで一貫して行う製造直販という形態を取っている。また全ての食材を計画生産している。創業者が理系の大学出身であるという事から食堂業の産業化を目指し、店舗数がまだ少ない段階から店舗数が1,000店を超えた時を目標に製造直販のシステムを構築してきた。この製造直販のシステムが低価格でも利益を生み出す源になっている。

(出典:サイゼリヤHP、お値打ち品のための取り組み)

サイゼリヤは2000年にオーストラリアに製造子会社を設立し、主力商品であるハンバーグとミラノ風ドリアを製造している。酪農が盛んであり、日本、アジアにアクセスのいいオーストラリアでわざわざ製造しているからミラノ風ドリア300円という価格が可能になっている。


過去のデリバティブによる巨額損失

オーストラリアでの製造子会社という事で為替リスクは当然ある。2007、2008年に、サイゼリヤは外資系証券会社とデリバティブ取引の契約を結んだ。それぞれ1豪ドル=78円、1豪ドル=69.9円で豪州ドルを買う契約だったようだが、いずれも当時の相場より約1~2割、安く豪ドルが買えた。

しかし、為替相場が契約より円高豪ドル安に振れると、豪ドルの購入価格が加速度的に高くなっていく仕組みだったため、リーマンショック後の円高豪ドル安で巨額な損失を被った。サイゼリヤは2009年8月期決算で二つのデリバティブ契約の解約金として153億円の損失を計上し、上場以来初の当期純損失となった。

このデリバティブ取引について後にサイゼリヤは訴訟を起こしたが、裁判所は、金融機関側はリスクをサイゼリヤ担当者に説明していたと判断し、棄却となった。これ以降無理なヘッジ取引は行ってはいないようである。


野菜も自社栽培

サイゼリヤは野菜の開発も行っている。以前は卸業者から調達していたが、店舗に届くまでに収穫から数日経っており、理想の鮮度とは言えなかった。そこで農家から直接調達する方向へ方針転換をした。2000年に福島県白河市に自社農園を開設した。種や苗は自社開発し、現地の農家に生育を委託するシステムを構築した。レタスに関しては求める大きいサイズのレタスを開発するために海外から大玉の種を取り寄せ、食感や味の傾向があう品種・日本の風土で栽培しやすい品種と欲しい品種を掛け合わせて大玉レタスを開発した。東日本大震災の復興支援の一環として、仙台若林地区にトマト農場も持っている。


その他の食材はイタリアで開発し輸入

1993年に店舗数が50店を超えた頃からイタリアからワインの直輸入を開始した。ワインに関しては新鮮なものを日本で味わえるように契約ワイナリーで葡萄を収穫後に糖度を計測後すぐに搾汁してサイゼリヤ専用のタンクで発酵、熟成させ、ハウスワインは3か月から飲めるようになる。必要分をその都度ボトリングして日本に輸入される。

スパゲティ、オリーブオイル、生ハム、チーズ等も現地のメーカーと共同で商品開発をして日本に輸入している。店舗数拡大からのスケールメリットと現地メーカーとの長年の信頼関係により高品質と低価格を実現してきた。


セントラルキッチン・システム

サイゼリヤはセントラルキッチン・システムを取っており、国内5か所の生産工場(カミッサリ―と呼んでいる。本社吉川工場、千葉工場、神奈川工場、福島工場、兵庫工場)で加工や下処理を済ませてパック詰めにして各店舗に送っている。店舗ではスタッフは調理をせずにソースを絡めてオーブンで温めるなどの簡単な作業のみで客に提供している。このセントラルキッチンのシステムを構築したのは、キッチンの作業をシステム化する事で店舗の人員を減らすと共に常に料理の品質を一定に保つ事を目的にしている。海外の製造工場に関しては、中国の広州市に食品製造工場を持っており、日本と同じように工場で加工を行いパック詰めにして各店舗に送っている。


海外店舗の立て直しを経て高利益率へ

サイゼリヤは2003年に上海に現地法人を設立し、広州、北京、台湾、香港、シンガポールへ進出し店舗を拡大してきた。しかし、海外店舗は長い間赤字経営であった。2009年から累積赤字を計上していた海外店舗の立て直しに着手した。赤字の最大の原因は日本国内の店舗に比べて大規模な店舗が多く、固定費の割合が高かった事であった。大規模店舗だとランチ時夕飯時などピーク時に作業が集中するために店員の数も多く必要で、人件費もかかり、満席時に料理を提供するまで時間がかかっていた。これを1店舗あたりの席数を日本と同じように120から130席にし、標準化された作業内容に変えた。その結果大型店ほど多くの客を収容できないが、ピーク時も忙し過ぎる事がなく利益を出す事ができるように変わった。日本から派遣されてきた社員は数名しかいない中、営業と人材育成を続けた。

また、サイゼリヤが中国に進出した当時は中国では生野菜を食べる習慣が一般的でなかった。しかし、健康志向の広がりでサラダが人気になった。手頃な価格でサラダを提供しているサイゼリヤは注目されるようになり、今でもサラダの人気は日本国内よりも高い。また、メニューも現地の人の好みに合わせて段々と変えるようになり人気が定着するようになった。

以上のような立て直しの努力の結果、海外事業(中国を中心としたアジア域)は2011年8月期から営業黒字を計上できるように変わった。その後も改善を重ね、2019年8月期には営業利益の47%は海外で稼ぎ出すように変わった。2019年8月期決算の決算説明会資料によると、アジアでの都市別の営業利益率を見ると上海13%、広州10%、北京10%、香港17%、台湾5%、シンガポール7%であった。一方日本国内の営業利益率は4%であった。


コロナ禍での決算


日本国内では2020年2月以降コロナ感染者が拡大し、2020年4月の緊急事態宣言を受けて約300店の臨時休業及び営業時間の短縮、またソーシャルディスタンス確保のために客席数を減少させた結果、2020年8月期の国内事業の営業損失は56億2,300万円となった。

海外では2019年12月に中国武漢でコロナ感染者発症が確認されて以降、北京、広州、上海などで大半の店舗が一時休業した結果、2020年8月期の営業利益は前期比約60%減の17億5,500万円となった。

中国ではサイゼリヤが出店している上海、北京、広州では2020年春頃より外出自粛が緩和された事により営業黒字を確保する事ができた。一方日本は2020年4月に全国に緊急事態宣言を発令した事で多くの企業がテレワークに移行し、人流の減少が大きかった事が業績を直撃した。

その後日本国内では2021年1月から二回目の緊急事態宣言、4月に三回目の緊急事態宣言が出された事により国内店舗は大打撃を受けた。

先日発表された2021年8月期の売上高と営業損益は

売上高1,265億円(前期比0.3%減
営業損益▲22.6億円(前期に比べて営業赤字が15.5億円縮小)

であったが、営業外収益で、補助金収入48億22百万円、雇用調整助成金327百万円、 為替差益595百万円、また特別損失として減損6億46百万円などを計上し、当期純損益 は17億65百万円と黒字であった。営業損益の地域別内訳は、国内は▲72億円、豪州 製造子会社は6億28百万円、アジアは44億25百万円であった。アジア域では大幅に 業績回復をした。また、コロナ禍から始めたテイクアウトのお陰で連結の客単価は前年比15円アップの704円となった。


店舗戦略


サイゼリヤはサイゼリヤ・ラボラトリーと呼ばれる標準型店舗が2店舗入る施設でフロア構造やホール作業の見直しをやってきている。バリュー・エンジニアリング(VE)協会のメンバーとして活動し、VEの考えを店舗のレイアウト、フロアのオペレーションに実践してきた。キッチンの面積を半減する事に成功し、2015年8月期よりキッチンの面積を半減し、その分席数を増やした店舗の導入を開始した。2018年8月期までにキッチン縮小型の店舗は100店を超えたが、その間営業利益率は2015年8月期5.38%、2016年8月期6.2%、2017年8月期7.56%と上昇した。2018年8月期に関しては円安による食材仕入れコストの上昇や国産野菜価格の高騰、人手不足による人件費の高騰などが原因となり営業利益が対前年減益となり営業利益率は5.6%まで低下したが、翌2019年8月期には営業利益は対前年増益となり営業利益率は6.1%まで回復した。

2020年8月期からはコロナによる休業要請、時短、ソーシャルディスタンスと様々な制約がある中で小型店舗を更に進化させた。2021年4月に東京、練馬区内でコロナ禍でコンビニ店舗が退店した跡地に出店をした。席数44席のうち8席は一人用のカウンター席にして回転率を高めるように工夫した。また、1人当たりの売上を高められるように、サイゼリヤで提供するメニューを、冷凍・業務用食材として販売している。出入口入ってすぐの目立つ場所に専用の冷凍ケースを設置し、“おうちde サイゼ”として「業務用辛みチキン」「エスカルゴ」「ティラミス クラシコファミリーサイズ」など人気商品を購入してもらうように工夫をしている。

(出典:ダイヤモンド・チェーンストア・オンライン 「コロナ禍の退店跡地をねらう! サイゼリヤがオープンした新業態の小型店レポート」

また、小型店舗では従業員3人で店舗運営ができるように工夫をしている。コロナ禍で退店する店舗が多いのは出店のチャンスととらえて、都心部では小型店舗をどんどん出店する予定である。


2022年8月期業績予想


日本国内の緊急事態宣言は2021年9月末日で解除され、緊急事態宣言後の飲食店への時短要請も10月中に日本全国で解除される予定である。様々な制約からやっと解放されて本格的にポストコロナの戦略に取り組むタイミングである。

今期の出店計画は、国内は60店出店、40店退店、期末店舗数1,109店、海外は71店出店、34店退店、期末店舗数501店、国内と海外を合わせた合計店舗数は1,610店舗である。

会社計画の業績予想は


売上高1,500億円(前年比18.6%増
販管費962億円(同20%増
営業利益70億円(同黒転)
当期純利益86億円(同387.1%増
EPS176.87円

設備投資に関しては再び攻めの戦略に転じる為に対前年66%増の127億円の予定である。また減価償却費用は対前年28%増の76億円の予定である。 業績予想の内訳は

売上高国内1,000億円海外500億円

この売上を達成する前提は国内純増20店舗、海外純増37店舗、国内既存店前年比 116.8% 、海外既存店前年比110.7%


営業利益国内10億円アジア58億円豪州2億円

国内粗利益率 62.9%予定
為替の前提レート1AUD=80.18円、1EUR=129.69、1USD=109.90


当期純利益国内 50億円アジア34億円豪州1.5億円

である。会社計画の業績予想であるが、コロナ禍に突入する前の2019年8月期の業績が、売上高1,565億円、営業利益96億円、当期純利益が49億円、粗利益率は64.0%であった。この業績を達成した店舗数が国内店舗数1,093店舗、海外店舗数411店舗、計1,504店舗であった。連結ベースの客単価は686円であった。

2019年8月期の業績、店舗数、海外店舗の割合、客単価を今期の会社計画の予想を比較してみると、リーズナブルな業績予想である印象を受ける。利益率が国内より遥かに高い海外店舗数が今期は2019年8月期に比べて90店舗増えるのでかなりの下支えになるのではと推測する。国内に関してはテイクアウトやメニュー価格のきりがいい数字への値上げで既に前期に客単価は上昇している。また固定費比率が大型店舗より低い小型店舗での出店増で十分達成可能な計画に思われる。

ただし、この会社計画の業績予想はあくまで現在の緊急事態宣言が解除された状況が継続するとの前提でのみ達成可能である。これから冬になり、もし再びコロナ感染者数が激増し、緊急事態宣言を繰り返す場合には達成は難しいと思われる。


過去3年のキャッシュフロー状況

2019/8 2020/8 2021/8
営業キャッシュフロー 14,705百万円 525百万円 12,187百万円
投資キャッシュフロー ▲6,016百万円 ▲5,917百万円 ▲11,048百万円
財務キャッシュフロー ▲1,853百万円 4,244百万円 7,428百万円
現金及び現金同等物期末残高 43,189百万円 42,320百万円 52,730百万円

コロナ禍に突入し赤字になったために2020年8月期に営業キャッシュフローが極端に 縮小した。財務キャッシュフローが2020年8月期、2021年8月期と2期連続プラスなの は、借入金からの収入の方がリース債務返済による支出、配当金の支払いによる支出等 よりも大きかったためである。


主な経営指標

2019/8 2020/8 2021/8
自己資本比率 77.6% 66.4% 60.1%
配当性向 17.7% -25.3% 49.7%
営業利益率 6.1% N/A N/A
総資産回転率 1.4回 1.1回 0.9回
EBITDA 15,827百万円 N/A N/A
ROA 4.6% N/A 1.3%
ROE 5.9% N/A 2.1%
ROIC 8.4% N/A N/A


投資判断


サイゼリヤは1990年代半ばより続くデフレ経済下の日本で低価格でイタリア料理を提供するチェーンである。単なるファミレスのチェーン店というよりはレストランの産業化を目指し製造直販を20年以上かけて構築した。また、外食チェーンでありながらバリュー・エンジニアリング(VE)協会のメンバーとして活動し、VEの考えを店舗のレイアウト、フロアのオペレーションに実践してきた企業である。また、日本での成功モデルを海外に持って行き、現地で実践と改良を重ね、今や海外の店舗の方が日本より遥かに利益率が高い。過去2年近くコロナ禍で営業赤字に沈んだが、緊急事態宣言も解除され、今期は積極展開の予定である。

先日の決算発表時に今期の新規出店、特にアジアでの積極出店計画が評価されて株価が10%以上急騰した。以降は売り買い拮抗しており、現在の株価で予想PERは17.75倍、PBRは1.84倍、EV/EBITDAは7.6倍である。今期の業績回復を考えると割安であり、 中長期的なアジアでの出店による高い利益成長を考えると割安な印象である。


サイゼリヤに関する投資アイデア


他の投資家がサイゼリヤをどのようにみているか、アイデアブックでご確認いただけます。


プロフィール

株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


当社は、本記事の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
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