2021.07.26|銘柄ピックアップ:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)

銘柄ピックアップ:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532) / introduction7532

執筆:西村 麻美

パン・パシフィック・インターナショナルHDの株価情報



基本情報


企業概要

略称PPIH。旧社名ドン・キホーテ・ホールディングス。1980年ドン・キホーテの前身会社の株式会社設立。1989年ドン・キホーテ一号店出店。1995年商号をドン・キホーテに変更。総合ディスカウント店ドン・キホーテを展開。子会社に、ユニー、アピタ、ピアゴ、長崎屋等。海外子会社にMARUKAI CORPORATION、times等

1996年株式店頭登録(現ジャスダック証券取引所)、1998年東証二部上場
2006年東証一部に市場変更。


株式関連情報

株価2,435円(2021年7月13日)
発行済株式数634,197,040株(うち自己株式18,924株)
上場市場東証一部
時価総額1兆5,442億円


従業員数

14,186名(連結ベース、2020年6月30日現在)


財務データ

2016/62017/62018/62019/62020/6
売上高(百万円)759,592828,798941,5081,328,8741,681,947
営業利益(百万円)43,18546,18551,56863,11075,997
当期利益(百万円)24,93833,08236,40547,06650,303
EPS(円)39.4452.3057.5374.3679.39
純資産(百万円)244,547279,930312,495352,300390,716
BPS(円) 366.08409.44458.89518.51589.29


ビジネスモデル


PPIHは小売業界第4位。ディスカウント・ストアからスタートし、破綻した長崎屋の買収、経営不振だったユニー・グループと資本提携を経て買収、海外進出、また海外の小売企業の買収を経て2021年3月末現在のグループ総店舗数は639店舗。地域ごと、店舗業態ごとの内訳は以下の通り。

日本国内 (計583店舗)

ドン・キホーテ 228店舗
アピタ、ピアゴ(総合スーパー)143店舗
MEGAドン・キホーテ 137店舗
MEGAドン・キホーテUNY 48店舗
長崎屋、その他 2店舗
ピカソ 25店舗


香港

Don Don Donki 7店舗


台湾

Don Don Donki 1店舗


シンガポール

Don Don Donki 8店舗


タイ

Don Don Donki 2店舗


ハワイ

Don Quijote 3店舗
MARUKAI (邦人向けスーパー)1店舗
Times (ハワイ本拠地のスーパー) 24店舗


カリフォルニア

MARUKAI 4店舗
Tokyo Central (旧MARUKAI) 6店舗


日本国内では大型スーパー(GMS)冬の時代と言われて久しいが、GMSが業績不振から店舗閉鎖が相次ぐ中PPIHはGMS2社を買収して業績を回復させ、31期増収増益を達成している。


セグメント別情報と同業他社比較


法人別セグメント概要(2020年6月期時点)

ドンキ長崎屋UDリテール*ユニー海外JAM*UCS*連結
売上高
(百万円)
704,407193,563109,200521,944115,12722,53419,9431,681,947
営業利益
(百万円)
22,2146,225▲5,32228,1563,0638,4281,65375,997
OPM3.15%3.22%N/A5.39%2.66%37.4%8.29%4.52%
総資産
(百万円)
291,94189,08655,488400,64465,248167,557173,3311,298,948
純資産
(百万円)
148,53657,00028394,58231,659110,5999,411390,716

*1 UDリテールはドンキとユニーのダブルネーム店舗の運営をする子会社
*2 JAMはJapan Asset Marketing、親会社であるドンキホーテグループの建物を取得、また貸借を行っている企業
*3 UCSはクレジットカード事業を行う子会社


同業他社比較

PPIHの同業他社比較をするにあたり、マーケティング調査会社のスパコロによる「ドン・キホーテ」の競合探索調査(4,169名からの回答)の結果「イオン」との回答が16.3%と最多であった。

イオンもM&Aで成長してきた事もあり比較するのに適した企業であると判断した。 なお、2位のセブン&アイ・ホールディングスはコンビニのセブンイレブン(海外店も含む)の貢献が営業利益レベルで80%を超えているので比較対象に相応しくない。 また、3位のファーストリテイリングは小売りのみならず製造も行うSPA(specialty store retailer of private label apparel)なので比較対象には相応しくない。

以下、PPIHとイオンの過去直近三期の経営指標の比較をまとめる。

PPIH 2018年6月期 2019年6月期 2020年6月期
売上高 941,508百万円 1,328,874百万円 1,681,947百万円
営業利益 51,568百万円 63,110百万円 75,997百万円
営業利益率 5.5% 4.7% 4.5%
当期利益 38,844百万円 48,732百万円 50,856百万円
EBITDA 68,946百万円 86,832百万円 105,388百万円
自己資本比率 36.0% 25.8% 28.8%
財務レバレッジ 2.8倍 3.9倍 3.5倍
負債資本倍率 1.075倍 1.64倍 1.41倍
配当性向 13.9% 13.5% 18.9%
ROE 12.5% 14.3% 13.5%
ROA 4.5% 3.7% 3.9%
ROIC 5.6% 5.3% 6.0%
従業員数 7876人 13,546人 14,126人
従業員一人当たり売上 119,541千円 98,101千円 118,564千円
従業員一人当たり営業利益 6,547千円 4,659千円 5,357千円
イオン 2019年2月期 2020年2月期 2021年2月期
売上高 8,518,215百万円 8,604,207百万円 8,603,910百万円
営業利益 212,256百万円 215,530百万円 150,586百万円
営業利益率 2.5% 2.5% 1.8%
当期利益 23,637百万円 26,838百万円 ▲71,024百万円
EBITDA 474,542百万円 522,586百万円 461,237百万円
自己資本比率 10.9% 9.6% 18.5%
財務レバレッジ 9.2倍 10.4倍 11.8倍
負債資本倍率 2.41倍 2.91倍 3.38倍
配当性向 121.1% 112.9% -42.9%
ROE 2.2% 2.5% N/A
ROA 0.2% 0.2% N/A
ROIC 3.70% 2.90% N/A
従業員数 156,739人 160,227人 155,578人
従業員一人当たり売上 54,346千円 53,700千円 55,303千円
従業員一人当たり営業利益 1,354千円 1,345千円 968千円

直近の決算に関しては、PPIHは緊急事態宣言を受けて店舗の休業を行ったが、黒字を維持し、一方イオンの当期損益は赤字に転落した。その前の期についてはPPIHの売上はイオンの六分の一以下であるが、当期利益に関してはPPIHの当期利益はイオンの約1.8倍である。財務レバレッジ(自己資本の何倍の大きさの総資本を事業に投下しているかを示す、総資産÷自己資本)に関しては、イオンはPPIHの約3倍であるが、従業員一人当たりの売上、営業利益ともにPPIHの三分の一以下である。

この比較分析で明らかなように小売業界一位のイオンと四位のPPIHを比較した場合、PPIHの方が遥かに経営効率が高いと言える。なお、PPIHの従業員一人当たりの売上、営業利益が2019年2月期に低下したのはユニーの買収によるものである。


買収したGMSの復活、再生

PPIHはディスカウント・ストアのドン・キホーテが大成功したイメージが強いが、ディスカウント・ストアだけでなく、破綻した長崎屋や業績低迷し買収したユニーを業態転換して復活、再生させているところが注目に値する。

PPIHがどのように長崎屋やユニーを復活させたかについては流通ジャーナリスト達が指摘しているが、現場への権限委譲によるものであるようだ。従来のGMSは本部の権限が大きく、そのために現場の意見が反映されないという問題が多くのGMSでの現状であるが、PPIHは真逆のアプローチを取り、顧客のニーズを一番分かっている現場主導で検証を繰り返すようだ。

2007年に買収した長崎屋の店舗は2008年以降「MEGAドン・キホーテ」という新業態に転換し、開発を進めた。不採算店舗の閉鎖と試行錯誤を繰り返し、生鮮食品などの商品ラインナップの拡充とドン・キホーテの圧縮陳列とPOP演出を取り入れた結果、アミューズメント性の高い店舗の創造に成功した。2007年に買収した当時の長崎屋の店舗数は56店、営業損益は▲50億円だったが、2020年6月時点で営業利益は54億円にまで復活した。旧長崎屋の店舗は、8店は総合スーパーとして営業し、30店は「MEGAドン・キホーテ」として営業している。

ユニーについては2019年1月に買収して、業態転換を進めている最中であるが、一部店舗をドン・キホーテやMEGAドン・キホーテに転換する一方でドンキ業態に転換しないユニーのGMS業態を「NewGMS」構想に基づいてテコ入れしている。ユニーは地域集中出店戦略を取っていたために、全てをドン・キホーテに転換してしまうと自社競合してしまうためである。ユニー、アピタ、ピアゴの名称に「プラス」や「パワー」を付加し店舗活性化をしている。このユニーの名称を残した店舗はドン・キホーテ流の圧縮陳列やPOP演出は取り入れていない。各フロアーごとに食品、インナー、雑貨、キッチン雑貨など特定のカテゴリーを最大限拡大化する戦略を取っている。

2021年6月期第三四半期ではユニーは累計ベースで売上高は3,744億円、営業利益は234億円(前年同期比9.5%増)まで回復しており、復活再生は順調に進んでいると言えるだろう。


利益率の高い海外店舗

PPIHの海外進出は2006年である。ダイエーのハワイ法人4店を買収し、ドン・キホーテに転換した。ダイエーがGMSだったために生鮮食料品の取り扱いをし、またハワイのお土産を多く取り揃え現地消費者、旅行者双方からの人気を集めた。2013年にはカリフォルニアとハワイで食品スーパーを展開していたマルカイ・コーポレーションを買収した。買収した店舗のうち一部はMARUKAIのブランドを残し、残りはTokyo Centralという新しいブランド名に変更した。2017年にはハワイ拠点の食品スーパーtimesを買収した。同年にはシンガポールへ進出した。シンガポールの一号店はPPIHの東南アジア事業の実験店舗で、売り場の商品構成の半分以上は食品で寿司、弁当や日本から輸入したいちご、まぐろ等の生鮮食料品を含む日本を強く打ち出す路線で大成功した。

2021年6月期第3四半期時点の海外リテール部門の状況は以下の通り。

北米*2 アジア*3
3Q2020 3Q2021 前年 3Q2020 3Q2021 前年
(単位:百万円) (累計) (累計) 同期差 (累計) (累計) 同期差
売上高 69,290 75,509 6,219 12,921 34,640 21,719
売上総利益 21,593 24,143 2,550 3,863 12,026 8,163
売上総利益率 31.2% 32.0% 0.8pt 29.9% 34.7% 4.8pt
販管費 19,364 18,907 ▲ 457 4,543 8,577 4,034
営業利益 2,229 5,236 3,007 ▲ 680 3,449 4,129
営業利益率 3.2% 6.9% 3.7pt ▲ 5.3% 10.0% 15.3pt
総資産 34,306 37,836 3,530 27,697 30,270 2,573
純資産 25,192 28,526 3,334 5,519 8,751 3,232

*1.当期から在庫の評価方法を「売価還元法」から「移動平均法」へ変更したため、前期に係る各数値については遡及修正後の数値を記載。
*2. 北米はDQ USA, MARUKAI、QSIの各社を単純合計して記載。実績については2020年4月~9月の累計。
*3. アジアはPPRM (SG)、PPRM (HK)、DONKI Thailandの各社を単純合計して記載。
実績については2020年4月~9月の累計。

当期(2021年6月期)から在庫の評価方法を「売価還元法」から「移動平均法」へ変更したために前期の数値についても遡及修正しているが、営業利益率が高い。 アジアについては小売店として営業利益率10%を達成している。北米は、コロナ禍における外食の代替需要が継続し、売上が伸長した。 アジアは好調な既存店に加えて今期5店舗を出店した事から大幅増収を達成し、販管費は増加したものの、増収幅が大きく高い営業利益率を達成した。

2021年6月期第3四半期の国内リテールの利益率はドン・キホーテで2.6%、長崎屋で3.6%、UDリテール1.0%、ユニー6.3%であった。

北米の利益率とアジアの利益率の差は、ハワイでtimesというスーパーマーケットを24店舗運営しており、MARUKAI、Tokyo Central に比べて利益率が低いのではと推測する。

PPIHの海外リテールの高い利益率は過去に他の大手GMSが海外進出した時のように現地商品の割合を多くしたのではなく、ジャパン・ブランドを強く打ち出し、生鮮食料品を含む日本産の食料品の割合を多くした事ではないかと思われる。


中計、KPI、今後の拡大戦略


中期経営計画

PPIHの中期経営計画は以下の通りである。

出典:株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス中長期経営計画より


PPIHの強み

PPIHの強みは国内に関してはポートフォリオ経営が上手く行っている事。ポートフォリオ経営を一貫した現場主義、個店主義が支えている。顧客のニーズを一番把握している現場に売り場作り、商品構成を一任する事により各店舗が地域一番の店舗になる事を目指し実践している。

また、日本においてGMSを再生させたのはPPIHのみである。
業績不振だったユニー・グループを子会社化したのが2019年1月で、2021年6月期第三四半期に営業利益率6.3%を達成したのは驚異的である。

海外に関してはジャパン・ブランドを打ち出し生鮮食料品の比率を高くして成功している。 小売業で営業利益率10%、しかも商品管理の難しい生鮮食料品を日本から輸入してこの利益率を達成したが、他の小売業が真似したくても真似できないレベルの偉業と言ってもよいかもしれない。


過去3年のキャッシュフロー状況

(単位:百万円)2018/62019/62020/6
営業キャッシュフロー46,081101,97865,135
投資キャッシュフロー▲164,443▲37,113▲33,452
財務キャッシュフロー116,08343,456▲34,030
現金及び現金同等物期末残高75,883185,136183,602

財務キャッシュフローが2020年6月期にマイナスになったのは社債の償還による支出、債権流動化の返済による支出、子会社の自己株式の取得による支出及び配当金の支払額等の減少要因によるものである。


投資評価

PPIHはコンビニを除く小売業者として日本において競争力が一番高い企業である。長引くコロナ禍でGMS一位のイオン、二位のセブン&アイが減収になる中で最高益を更新し、買収したGMSの再生まで成功している。中期経営計画によると2030年に国内売上2兆円、海外売上1兆円を目指しているが、国内では長崎屋、ユニーの成功事例により業績不振の競合他社を買収して拡大していくのではと推測する。海外に関しては競合はいない状況であり、これからもアジアを中心に積極的に出店していくものと思われる。成長企業であるが、予想PERは28.44倍、PBRは3.71倍、EV/EBITDAは16.8倍、PSRは0.9倍と割安であり、成長ポテンシャルが過小評価されている印象を受ける。難しい小売業で優れた経営実績をあげている稀有な企業であると言えるだろう。


パン・パシフィック・インターナショナルに関する投資アイデア

他の投資家がパン・パシフィック・インターナショナルをどのようにみているか、アイデアブックでご確認いただけます。


プロフィール

株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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