執筆:西村 麻美

ソフトバンクグループの株価情報


株価
(2021/11/9)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
6,801円 11.6兆円 22.8% 47.3% N/A
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
2.6倍 N/A 1.1倍 0.65% N/A


2022年3月期第2四半期決算

ソフトバンクグループ(SBG)の2022年3月期第2四半期決算(累計)結果は

売上高2兆9,835億円(前年同期比13.4%増
税引前利益1兆469億円(同27.4%減
四半期純利益3,635億円(同80.7%減


第2四半期単独の決算結果は

売上高1兆5,044億円(同11.4%増
税引前利益▲2,455億円(赤字転落)
四半期純利益▲3,424億円(赤字転落)


6四半期ぶりに純損失となった決算だった。売上高増収の要因はソフトバンク事業とアーム事業の増収による。第2四半期単独の投資損益は▲1兆6,583億円だった。内訳は以下の通りだった。

SVF1及びSVF2からの投資損益▲1兆1,671億円
ラテンアメリカ・ファンドの投資損益▲257億円)
その他の投資損益▲39億円


第2四半期末の時価純資産(NAV)は中国投資先企業等の株価下落で前四半期末(6月末)より6.1兆円下落し20.9兆円となった。

持分法による投資損益は第2四半期累計で、アリババに係る持分法投資利益は前年同期比1,095億円増の2,773億円だった。しかしアリババは中国政府より独占禁止法違反の処分を受けており、株価は大幅に下落した。これによりSBGの保有資産に占める価値は、1年で約59%から約28%に低下した。

SVF1では、第2四半期累計で投資先株式の一部売却及び全部売却による実現益を7,572億円計上した。上場投資先についてはDoorDashなど2社について評価益4,690億円を計上した。一方Coupangに関しては1兆2,122億円の評価損失を計上、DiDi Globalに関しては3,210億円の評価損失を計上し、残り11社で3,575億円の評価損失を計上した。未上場投資先に係る評価益は8,793億円だった。

SVF2では、第2四半期累計で、KE Holdings への投資の一部を売却したことなどにより、投資の実現投資の実現益を1,053億円計上した。上場が見込まれる未上場投資先などで公正価値が増加したものの、KE Holdingsの株価下落などにより、99億円の未実現評価損失を計上した。

SVF1の第2四半期累計の投資活動の状況は、投資先の上場や資金化が進んだ。第2四半期累計期間に25億米ドルの投資を実施した。ポートフォリオは第2四半期末現在、81銘柄を保有。このうち当第2四半期累計期間に4社が上場したことにより、上場投資先は15社。資金化としてはDoorDash、Coupang、Uberなど上場投資先への投資の一部を売却し、手取金を基に分配を実施した。(SBGは55億米ドルを受領した。)投資額合計721億米ドルに対し、保有投資先公正価値合計は1,046億米ドルだった。累計実現益141億米ドル、累計デリバティブ関連利益15億米ドルおよび累計受取配当金7億米ドルを含めた、活動開始来の累計投資利益は487億米ドルだった。

SVF2の第2四半期累計の投資活動の状況は、投資が順調に進展した。第2四半期累計期間に合計272億米ドルの新規および既存投資先への追加投資を実施し、累計投資額は335億米ドルに達した。ポートフォリオは第2四半期末時点で157銘柄に投資。

このうち当第2四半期累計期間に5社が上場したことにより、上場投資先は8社になった。資金化は主に投資の一部売却や資金化による手取金を基に分配を実施した。(SBGは32億米ドルを受領した。)投資額合計335億米ドルに対し、保有投資先公正価値合計370億米ドルだった。第2四半期末現在の出資コミットメント総額は420億米ドルだった。

ラテンアメリカ・ファンド事業に関しては、2021年9月にソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド2(SBLAF2)を設立した。SBLAF1において、VTEXの株価上昇やKavak Holdings LimitedやQUINTOANDAR, LTD.などの未上場投資先の公正価値増加などにより、2,019億円の未実現評価益を計上した。一方、SBLAF1の投資先2銘柄の清算に伴い投資の実現損91億円を計上した。これらの結果、投資利益は1,937億円となり、セグメント利益は1,879億円となった。第2四半期末におけるSBLAF1およびSBLAF2を合わせた保有投資銘柄数は61銘柄、累計投資額は49億米ドル、公正価値は81億米ドルとなった。

持株会社投資事業からの第2四半期累計の投資利益は2,799億円だった。Tモバイル株式売却関連利益を31億円計上、また同株式に係る未実現評価益161億円、条件付対価の公正価値増加に伴うデリバティブ関連利益580億円、上場株式等への投資による投資利益682億円を計上した。ドイツテレコムによるコールオプションの行使に伴い、Tモバイル株式45.4百万株をドイツテレコムへ売却し、対価として同社株式225百万株を受領した。

第2四半期累計期間に国内ハイブリッド社債4,050億円、国内劣後社債5,000億円、外貨建て普通社債38.5億米ドルおよび29.5億ユーロを発行し、当期の社債リファイナンスに目途をつけた。2021年9月には国内ハイブリッド社債4,556億円を早期償還した。アリババ株式を活用した先渡売買契約による資金調達については、新規契約の締結、既存契約のロールオーバーおよび早期解約の結果、68.3億米ドルを調達した。


2022年3月期予想

2022年3月期通期の業績予想を会社側は発表していない。通信子会社のSBKKの2022年3月期業績予想は売上5兆5,000億円(前期比5.7%増)、営業利益9,750億円(同0.4%増)、当期利益5,000億円(同1.8%増)である。Zホールディングスの2022年3月期予想は売上1兆5,200~1兆5,700億円(同26.1~30.2%増)、調整後EBITDA3,030~3,130億円(同2.8~6.2%増)と発表した。両社とも従前の業績予想を維持した。


アナリストによる投資スタンス

決算発表と同時に自己株式の取得を発表した。SBGの株価がNAVに比べて大きくディスカウントされている状況の是正と株主還元を目的に2億5,000万株(自己株式を除く発行済み株式総数の14.6%)、総額1兆円を上限とする。取得期間は2021年11月9日より2022年11月8日。自社株買いを好感して本日(2021/11/9)は株価が10%以上上昇した。通期の業績予想がないために予想PER、EV/EBITDAは計算できないが、PBRは1.1倍と割安である。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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