執筆:西村 麻美

ソニーの株価情報


【銘柄注目ポイント!】

半導体等の部品不足の影響が大きいが今期は映画分野が業績をけん引。

株価
(2022/2/3)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
12,585円 15.5兆円 24.6% 15.9% 10.6%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
13.4倍 18.1倍 2.1倍 0.52% 10.2倍


2022年3月期第3四半期決算

ソニーの2022年3月期第3四半期決算(累計)の結果は

売上高7兆6,575億円(前年同期比13.2%増
営業利益1兆637億円(同19.7%増
四半期純利益7,711億円(同▲19.9%


第3四半期単体の決算結果は

売上高3兆313億円(前年同期比13%増
営業利益4,652億円(同32%増
四半期純利益3,462億円(同11%増

平均為替レートが1米ドル=113.7円、1ユーロ=130.1円

第3四半期の実績としては売上高、営業利益ともに過去最高を更新した。


ゲーム & ネットワークサービス分野(G&NS分野)

売上高8,133億円(前年同期比▲8%
営業利益929億円(同15%増

為替の影響は売上高に455億円、営業利益に21億円のプラスの影響があった。従前の予想通り売上高はPS5のローンチと大型タイトルのあった前年同期比8%減となった。営業利益は、ソフトウェアの減収はあったものの、販管費の減少やPS5ハードウェアの収益性改善などにより、前年同期から121億円増の929億円となった。PlayStationPlusの加入者数は第3四半期末時点で4,800万人(前年同期4,760万人)、PS Networkでの月間アクティブユーザー数は1億1千万人(同1億900万人)だった。PS5については、半導体不足や世界的な物流の混乱によるリードタイムの長期化により、2021年度の販売台数予想を従前の目標台数だった1,480万台から1,150万台へと330万台の下方修正をした。


音楽分野

売上高2,959億円(前年同期比12%増
営業利益551億円(同▲6.8%増

為替の影響は売上高に166億円のプラスの影響があった。前年同期に『劇場版「⻤滅の刃」無限列⾞編』が大きく貢献していたために映像メディア・プラットフォームの減収はあったものの、主にストリーミングサービスの増収により、前年同期⽐12%増の2,959億円となった。第3四半期におけるストリーミング売上は、前年同期⽐で、⾳楽制作が29%増、⾳楽出版が27%増と、⾼い成⻑を継続している。⾳楽制作では、当四半期においてもSpotifyグローバル楽曲ランキング上位100曲に平均して36曲がランクインするなど、ヒットも継続して創出できている。特に世界的シンガーソングライターAdeleのアルバム『30』は、昨年11⽉のリリース以来、Billboardチャートで8週連続1位となるなど歴史的な⼤ヒットとなっている。通期の見通しについては売上⾼を前回から200億円増の1兆900億円に、営業利益を50億円増の2,050億円に、それぞれ上⽅修正した。


映画分野

売上高4,612億円(前年同期比141%増
営業利益1,494億円(同7.3倍

『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム』の⼤ヒットや、テレビ番組制作において、⽶国⼈気テレビ番組Seinfeldシリーズの⼤型ライセンス収⼊等があったことなどにより、売上高は前年同期⽐141%と⼤幅増の4,612億円となった。営業利益は、増収の影響に加えて昨年12⽉6⽇に売却を完了したGSN Gamesの事業譲渡にともなう利益の702億円の計上などにより、前年同期から7.3倍と大幅増の1,494億円となった。通期の見通しについては、売上⾼を前回から400億円増の1兆2,200億円に、営業利益を970億円増の2,050億円にそれぞれ上⽅修正した。今期の営業利益は一時的要因を除いたベースでも映画分野として最高益を更新する見通しである。昨年12⽉17⽇に全⽶で公開された『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム』は、全⽶オープニング興⾏成績として歴代2位を記録、全世界累計興⾏収⼊が17億⽶ドルを超え歴代6位となるなど、Sony Pictures Entertainment(SPE)として過去最⼤のヒットとなっている。


エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野(EP&S)

売上高6,869億円(前年同期比▲2%
営業利益800億円(同▲22.6%

為替の影響は売上高に385億円、営業利益に71億円のプラスの影響があったものの、巣籠もり需要の剥落や部品の供給不⾜による製品販売台数の減少などにより、売上高は前年同期⽐2%減の6,869億円となった。 営業利益は、為替の好影響や製品ミックスの改善はあったものの、主に減収の影響により、前年同期から233億円減の800億円となった。通期の⾒通しについては、売上⾼を前回から800億円増の2兆3,600億円に、営業利益を200億円増の2,100億円に、それぞれ上⽅修正した。テレビのパネル価格の急激な下落による製品市場価格への影響が当初懸念していた⽔準に⽐べて限定的であったことに加え、欧⽶や中国を中⼼に⼤画⾯化が進んだことにより、テレビの平均販売価格は、第2四半期と同等レベルを維持できた。⼀⽅で、幅広いカテゴリーにおいて深刻な部品の供給不⾜により、市場の需要に⼗分に応えきれない状況が続いており、この影響は第4四半期においても継続すると⾒込んでいる。


イメージング&センシング・ソリューション分野(I&SS分野)

売上高3,248億円(前年同期比22%増
営業利益647億円(同25.9%増

為替の影響は売上高に237億円、営業利益に120億円のプラスの影響があった。ハイエンドモバイル機器(iPhone)向けイメージセンサーの増収により、前年同期⽐22%と⼤幅増の3,248億円となった。⼀⽅で、中国スマートフォンメーカーを中⼼に協業を進めている⾼機能、⾼画質のカスタムセンサーの導⼊には想定以上の時間を要しており、収益性改善のスピードは当初想定よりも遅れ気味である。


金融分野

金融ビジネス収入4,713億円(前年同期比11%増
営業利益352億円(同▲11.8%

⾦融ビジネス収⼊は、主にソニー⽣命における特別勘定運⽤益の増加により、前年同期⽐11%増の4,713億円となった。営業利益は、ベンチャーキャピタル事業やソニー銀⾏での有価証券評価損益の悪化などにより、前年同期から47億円減の352億円となった。第3四半期のソニー⽣命の新契約⾼は、注⼒領域である法⼈向け保険などが牽引し、競合他社と⽐べても⾼い伸びで推移した。通期の金融ビジネス収入の見通しは前回予想から1,200億円増の1兆6,100億円とし、営業利益については前回見通しを据え置いた。


2022年3月期予想

2022年3月期業績の会社予想は

売上高9兆9,000億円(前年同期比10%増
営業利益1兆2,000億円(同25.6%増
当期純利益8,600億円(同▲16.5%減

第三四半期の決算結果を受けて通期の見通しを従前より営業利益を1,600億円増、当期純利益を1,300億円上方修正した。前提となる為替レートは1米ドル=113円前後、1ユーロ=128円前後を想定している。

決算発表前日にソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、世界有数の独⽴系ゲーム開発会社Bungie, Inc.(Bungie)の買収を発表した。Bungieは、900⼈を超えるクリエイティブ⼈材を擁し、これまでに『Halo』や『Destiny』などの⼤ヒットタイトルを創出してきた実績がる。SIEとBungieは長年のパートナー関係にあり、SIE傘下においても引き続き独⽴したスタジオとして、プレイステーション以外のプラットフォームでの事業展開も継続していく予定である。本買収の対価は36億⽶ドルで、本買収の完了は関係当局の承認等を条件としている。買収価格は36億米ドル(約4,100億円)である。Bungieの買収を起爆剤として、⾃社制作ゲームソフトウェアの成⻑を加速し、2025年度までには、その売上を現在の2倍以上に拡⼤することを目標としている。


アナリストによる投資スタンス

昨日発表の決算内容は良かったが半導体不足の為にPS5の販売目標台数の引き下げ、またEP&Sで部品不足により需要に応えられていないとの見解から本日は株価が6%以上下落した。現在の株価で株価バリュエーションは予想PERが18.1倍、PBRが2.1倍、EV/EBITDAが10.2倍と割安であり、長期投資の視点から最も魅力的な日本企業であるとの考えは変わっていない。


投資アイデア

他の投資家が何に注目しているか、アイデアブックでご確認いただけます。


プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


当社は、本記事の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本記事の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本記事の内容に関する一切の権利は当社に帰属し、当社の事前の書面による了承なしに転用・複製・配布することはできません。