執筆:西村 麻美

株価
(2020/8/12)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
8,706円 10.7兆円 20.2% 14.80% 21.55%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
18.46倍 13.31倍 2.13倍 N / A 9.7倍


■2021年3月期第二四半期決算
売上高2兆1,135億円(前年比0.4%減⤵
営業利益3,178億円(同14%%増⤴
四半期純利益4,596億円(同145%増⤴

平均為替レートが1米ドル=106.2円、1ユーロ=124.1円

売上高は微減だったものの営業利益は2Qとしては過去最高を記録した。また、営業利益増に加えて繰延税金資産に対する評価性引当金の一部の2,149億円を取り崩したことで四半期純利益も大幅増だった。


セグメント別ではゲーム & ネットワークサービス分野は、自社制作タイトル『Ghost of Tsushima』(ゴースト・オブ・ツシマ)の大ヒットや、巣籠もり需要によるプレイステーション・プラス会員数の増加など、ソフトウェア、ネットワークサービスともに好調に推移し、営業利益は前年同期比61%増と大幅増益だった。

通期の見通しについては、売上高を前回見通しから1,000億円増の2兆6,000億円、営業利益を600億円増の3,000億円に、それぞれ上方修正した。今年度のPS5販売台数については、高いシェアを獲得し大きな成功を収めたプレイステーション4の発売初年度実績である、760万台以上の達成を目指している。

音楽分野はストリーミングサービス売上の増加や、米津玄師のアルバムの大ヒットなどにより、売上高は前年同期比5%増の2,309億円、営業利益は、事業譲渡に伴う一時的な利益計上もあり、前年同期比41%増の529億円となった。また連結子会社の株式会社アニプレックスが製作・配給に関わる『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が封切られ、日本で上映された映画では史上最速となる公開10日での興行収入100億円突破を記録した。 同作品のテレビシリーズは、同じくソニーグループFunimationなどを通じ海外でも配信されて大きな人気を博している。

映画分野ではコロナの影響により劇場公開作品が大幅に減少していることや、メディアネットワークにおける広告収入の減少などにより、売上高は前年同期比26%の大幅減となる1,923億円となり、 営業利益は前年同期比19%減の318億円となった。

エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野は主にテレビの販売台数の増加により、売上高は前年同期比2%増の5,047億円となり、営業利益はオペレーション費用の削減や、テレビの製品ミックス改善と販売台数増などにより、前年同期比30%増の540億円となった。通期の見通しについては、売上高に変更はないものの、主に為替の好影響により、営業利益を従前見通しから70億円増の670億円と上方修正した。

イメージング&センシング・ソリューション分野の売上高は前年同期比1%減の3,071億円、営業利益は前年同期比34%減の498億円となった。当セグメントでは、9月末に計上した当該顧客向けの製品在庫、仕掛り在庫に関する評価減、約175億円を計上した。8月17日に発表された米国政府による輸出規制に従い、中国の特定大手顧客(ファーウェイ)向けの製品出荷を9月15日に停止した。通期の売上高は、従前見通しから400億円減の9,600億円、営業利益は490億円の大幅減の810億円と下方修正した。米中関係を考慮し、既に顧客基盤の分散と拡大の施策を取っており、既に一定の効果が出ている。2021年3月期への影響は限定的だが、2022年3月期に数量ベースのマーケットシェアを回復する事が可能だと考えている。また、中長期的には、エッジAIとセンシングを用いた事業領域の拡大や車載センサーの本格的な立上げで成長を目指す方向性に変更はない。

金融分野の売上高は前年同期比ほぼ横這いの3,739億円、ソニー銀行における有価証券評価損益の改善や、ソニー損保の自動車保険における損害率の低下などにより、営業利益は前年同期比増の12.6%増の437億円となった。通期の金融ビジネス収入の見通しは、主にソニー生命の変額保険にかかわる特別勘定での運用益増加により、従前見通しより600億円増の1兆4,600億円、営業利益は、ソニー損保の自動車保険における損害率の低下などにより、130億円増の1,550億円と上方修正した。


2021年3月期予想

第二四半期が終わった時点で6事業セグメントのうち5事業は通期の業績予想を上方修正した。その結果、グループ全体での2021年3月期通期予想を第一四半期末時点よりも売上高を2,000億円増、営業利益を800億円増、当期純利益を2,900億円増と上方修正した。

売上高8兆5,000億円(前年比2.9%増⤴
営業利益7,000億円(同17.2%減⤵
当期利益8,000億円(同37.4%増⤴

前提となる為替レートは1米ドル=105円前後、1ユーロ=123円前後を想定している。

2021年3月期はイメージング&センシング・ソリューション分野の減速はあるものの、それを補って余りあるほどの利益成長がゲーム & ネットワークサービス分野及び音楽分野から望めると推測する。プレイステーションユーザーの総ゲームプレイ時間が、ピークであった4月からは減速しているものの、9月でも前年同月比約30%増と、依然として強い状況が続いている。

PS5の米国での予約状況はPS5の予約開始から最初の12時間の受注は、先代のPS4が12週間を要した規模だとソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のジム・ライアンCEOはコメントしている。また、国内の予約状況も各店舗で抽選申し込みを受け付けしていたが、数10倍の倍率になっており、PS4の発売初年度実績である760万台以上の売上になる可能性がかなり高いと予想する。リスクは新型コロナウィルスによるサプライチェーンの混乱と遅れが考えられる。

音楽分野に関しては鬼滅の刃の大ヒットによる配給収入に加えて関連グッズの販売も見込まれる。また、NiziUプロジェクトの日本デビューが12月に予定されており、既に大きな人気を集めているために大きなヒットが期待される。


アナリストによる投資スタンス

株価バリュエーションは予想PERが13.43倍、PBRが2.15倍、EV/EBITDAが9.7倍とかなり割安である。2021年3月期通期はゲームと音楽事業から更に上方修正になる可能性が高いと推測され絶好の買い場であると考える。


プロフィール

株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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