執筆:西村 麻美

ソニーの株価情報

株価
(2021/2/4)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
11,660円 13.2兆円 20.8% N / A N / A
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
24.72倍 13.10倍 2.67倍 0.47% 9.8倍


2021年3月期第3四半期決算

売上高2兆6,965億円(前年同期比9%増⤴
営業利益3,592億円(同20%増⤴
四半期純利益3,719億円(同62%増⤴)
平均為替レート1USD=104.5円1EUR=124.5円

ゲーム&ネットワークサービス分野、音楽分野の大幅増収増益がイメージング&センシング・ソリューション分野の不調を補って余りある大幅増益の好決算だった。

セグメント別ではゲーム & ネットワークサービス分野は、売上高が前年同期比40%増の8,832億円、営業利益が同50%増の802億円だった。2020年11月半ばに販売開始したPS5は2020年12月末までに全世界で450万台販売した。また、PS5ローンチタイトルの自社開発の『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は12月末までに約410万本販売の記録した。PS5については需要が強く、会社としては一台でも多く出荷したいが、半導体不足の影響を少なからず受けている状況である。しかし、2021年3月末までに760万台出荷の予定は変更していない。

音楽分野は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の大ヒットやストリーミング配信の好調、モバイル向けゲームアプリの好調などにより売上高は前年同期比22%増の2,645億円、営業利益は同39%増の597億円だった。

連結子会社の株式会社アニプレックスが製作・配給に関わる『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の興行収入は2020年12月末までに361億円を記録し、歴代最高記録を更新した。

また、ソニー所属のLiSaが歌う主題歌も大ヒットとなった。音楽ストリーミング配信は前年同期比21%増と高成長でグラミー賞3部門にノミネートされているDoja Cat(ドージャ・キャット)、日本国内で人気のYOASOBI、NiziUなど新たなアーティストの発掘、育成の成果が出てきている。

映画分野ではコロナの影響により劇場公開作品の大幅減により売上高が前年同期比19%減の1,912億円だったが、マーケティング費用の大幅減により営業利益は同311%増の222億円だった。

エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野の売上高は前年同期比0.2%減の6,490億円だったが、営業利益は同24%増の1058億円となった。ホームAV商品の巣ごもり需要に加え、デジタルカメラなどの需要回復も見られ、事業環境に一定の改善が見られた。テレビ、デジタルカメラにおける製品ミックスの改善、オペレーション費用の削減により販売台数の減少があったが増益となった。

イメージング&センシング・ソリューション分野の売上高は前年同期比10%減の2,669億円、営業利益は同33%減の504億円となった。当セグメントでは2Qに計上したモバイル機器向けの一部のイメージセンサーに関する在庫評価減の戻入益を85億円計上した。

中国の特定大手顧客(ファーウェイ)向けの製品出荷を2020年9月15日に停止したが、2020年11月下旬以降は一部の出荷を再開した。ファーウェイからの受注が前回2020年10月の見通しから大幅に上回っており、また汎用センサー販売増による市場シェア回復の兆しがあるほか、顧客基盤の拡大にも取り組んでいる。長期的なファーウェイとの関係については以前のような関係に戻るという事はないとコメントした。

イメージセンサーのキャパシティはフル稼働状態で、モバイル向け、デジタルカメラ向けの引き合いが強くなっており、4Qは12万7,000枚程度のイメージセンサーの投入を予定しており、3Qの11万7,000枚より増加の予定。

金融分野の売上高は前年同期比4%増の4,253億円、営業利益は同43%増の466億円だった。ソニー生命の大幅増益の貢献が大きかった。米ドル建保険関係の為替差損益の改善と変額保険等の市況の変動にともなう損益も改善した事などにより大幅増益となった。


2021年3月期予想

売上高8兆8,000億円(前年比6.5%増⤴
営業利益9,400億円(前年比11.2%増⤴
当期利益1兆850億円(前年比86.4%増⤴

4Qの前提となる為替レートは1USD=103円前後、1EUR=126円前後を想定している。

第3四半期が終わった時点で6事業セグメントのうち5事業は通期の業績予想を上方修正した。その結果、グループ全体での2021年3月期通期予想を第2四半期末時点よりも売上高を3,000億円増、営業利益を2,400億円増、当期純利益を2,850億円増と上方修正した。

ゲーム & ネットワークサービス分野では巣籠需要が継続しているようで、2020年12月のPSユーザーの総ゲームプレイ時間が前年同月比で約30%増加、PS5ユーザーの「PlayStation Plus」加入率が12月末時点で87%と極めて高い水準に達し、ソフトやハードの売上のほか、ネットワークサービスの増収も貢献した。ハードウェアの世代交代期である今年度に過去最高水準の利益を見込めていることが示す通り、ネットワークサービスの増加により当社ゲーム事業の収益構造は大きく変化している。引き続きエンゲージメントの強化を戦略の柱としてネットワークサービスの魅力をさらに高める施策に注力する予定。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の大ヒット、ストリーミング配信の好調、モバイル向けゲームアプリの好調は、優れた原作を発掘する力、制作におけるクリエイティブ力、ファン層を拡大するマーケティング力など、コンテンツIPの価値を高めるアニプレックスの総合力が結実したものと考えていて、引き続きこの戦略を継続する予定である。

エンタテインメント分野の戦略投資であるが、20米国アニメ専門配信サービスCrunchyrollの買収を20年12月に米国アニメ専門配信サービスCrunchyrollを11.75億ドル(約1,222億円)で買収した。Crunchyrollは、200以上の国と地域で9,000万人の登録ユーザーと、300万人以上の有料会員を有しており、 日本アニメに対する関心は特に海外で急速に高まっており、コンテンツとDTC配信サービスの双方を有する当社は、アニメを注力領域と位置づけている。

また、急成長するインディーズ音楽市場における、代表的なアーティスト向け音楽制作及び配給サービス提供事業AWAL(エイワル)と、世界有数の著作隣接権管理事業Kobalt Neighbouring Rightsを4億3,000万ドル(約450億円)で買収すると1月末日に発表した。AWALの買収を通じ、音楽市場の成長を牽引するインディーズ領域でのアーティスト向けサービスを拡充し、新人の発掘・育成を強化することで、音楽分野の事業基盤の拡大を図っていく意向である。


アナリストによる投資スタンス

昨日夕方の決算発表後に本日(2021/2/4)は株価が9%近く上昇している。しかし、業績の上方修正により株価バリュエーションは予想PERが13.10倍、PBRが2.67倍、EV/EBITDAが9.8倍とかなり割安である。全事業分野で利益を出す経営力の高まりが今期はとても感じられ、来期以降の利益成長も大きく期待できると考えている。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美


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