執筆:西村 麻美

BASEの株価情報

株価
(2021/2/18)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
13,130円 2,915億円 56.9% 3.6% 3.9%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
465倍 N / A 17.84倍 N / A N / A


2020年12月期通期決算

売上高82億円(前年同期比115.3%増
営業利益8.03億円黒字転換
当期利益5.84億円(黒字転換)

BASE事業のGMVの増加により、売上高は前期比115.3%増の82億円、売上総利益は同23.8%増の49億円と大きく増加した。プロモーション費の増加により販管費は前期比56.7%増加も、GMVの成長により営業利益は8.03億円(前期は▲441百万円)と黒字を達成した。売上高、売上総利益、営業利益のいずれも通期予想の上限を上回った。売上総利益率は2.2pt改善の60.2%となった。


セグメント別の内訳

■BASE事業

売上高73億円(前期比128.9%増
セグメント利益11億円黒字転換、前期は▲1.17億円
GMV(注文ベース)952億円(前期比121.8%増
GMV(決済ベース)877億円(前期比130.5%増

■PAY事業

売上高9.39億円(前期比45.9%増
セグメント損失▲9,200万円前期は▲1.27億円
GMV360億円(前期比50.8%増

■その他事業(YELL BANK等)

売上高2,735万円(前期比286.5%増
セグメント損失▲4,586万円前期は▲5,421万円

2020年春の新型コロナウイルスからの緊急事態宣言下での特需の発生があったが、緊急事態宣言解除後も新規のECショップ開設需要は想定よりも落ち込まず、積極的なプロモーションもあり、結果としてBASE事業は倍以上の成長を達成した。BASE事業のGMV(総流通額、注文ベース)は前期比121.8%増と大きく成長し、売上高は同128.9%増、売上総利益は同126.0%増と成長した。

PAY事業については稼働加盟店数及び加盟店単価の増加により、GMV(総流通額、注文ベース)は前期比50.8%増と成長し、売上高は同45.9%増、売上総利益は同36.7%増と成長した。

2020年12月期はコロナ禍という事もあり、事業者の事業継続の為に以下の用に様々なサポートを実施した。

✓実店舗の集客悪化や催事・イベントの中止により在庫商品を抱えている事業者に対し、専門チームによるネットショップの開設・運営サポートを実施

✓お急ぎ振込の手数料無料化(振込金額の1.5%を無料で提供していたが、2020年5月末で終了)

✓発送前商品の売上金引き出しサービス(2020年5月末で終了、将来債権買取サービス「YELL BANK」は引き続き提供)

✓ネットショップの運営や活用方法に悩みを抱えている事業者に対し、オンラインセミナーを開催

✓商品製造ラインの稼働停止により商品の納期が遅延するアパレルブランドに対し、代替製造先の紹介支援を丸井グループと共同で実施(2020年2月に終了)

✓各メディアや当社SNSアカウントへの掲載により事業者の商品情報を無料で発信する集客支援を実施(2020年5月末で終了)

✓今後の事業運営に関する不安等を抱えている事業者に対し、メンタルサポートを目的とした「cotree」のオンラインカウンセリングサービスを無料で提供(2020年4月末で終了)


ショップオーナーの多くが利用するInstagramとの連携を強化した。Instagramの商品画像からBASEのネットショップにシームレスに遷移できる販売AppとBASEで販売されている商品をInstagram広告として配信できる広告Appを提供した。

この他にも様々な販売方法や多様なジャンルの商品に対応する機能を提供した。(抽選販売、テイクアウト対応、商品オプション、送料詳細設定、商品説明カスタムなど)

大規模ネットショップ向けには業務効率化を図る機能を拡充した。(商品コード、CSV商品管理、ブロックリスト、納品書ダウンロード、送り状ダウンロード、売上データダウンロードなど)

外部サービスと連携することでロジスティクス機能を提供し、海外向けの受発注や大量の発送業務を行う大規模ショップの運営を効率化した。(メーカーとネットショップをつなぐ事業者専用のマーケットプレイス、外部サービスによるECサイト運営業務の自動化、世界150か国に配送対応など)

第4四半期にはリアル店舗出店スペース「BASE Lab.(ベイス ラボ)」をラフォーレ原宿にオープンした。

全てのBASE加盟店が初期費用・固定費用無料で利用可能初期費用・固定費用が無料でリスクなく挑戦できる料金体系で、商品が売れたときにのみ売上の15%を販売手数料として支払う仕組みとなっている。

什器や機材を無料で利用可能で、レジまわり等の販売に伴う業務を依頼できる専任サポートスタッフを無料で利用可能なため、来店されたファンとのコミュニケーションや店舗を利用したSNSのライブ配信など、コミュニティ活性に注力できる場になっている。

また、第4四半期には業務提携をインフルエンサーマーケティングのDirectTechと青森銀行と結び、資本提携をクリエーター向けプラットフォームのnoteと結んだ。noteとの提携は、「BASE」ショップオーナーが管理画面からnoteに記事を投稿できる機能を設置し、ブランドの世界観をより効果的に発信できる手段を提供することで、ショップのファン形成・集客・販路の拡大を狙っている。

2020年10月に海外募集による新株式発行で124億円(払込みベース)を調達した事により財務基盤が強化され、自己資本比率は前期末の30.2%から56.9%へと上昇した。


2021年12月期予想

売上高97.5~105億円(前年比17.6~27.1%増
売上総利益56~61億円(同20.8%増
販管費70億円(同68.2%増
営業利益▲14~▲9.3億円
当期利益▲14~▲9.3億円

2021年12月期に関しては引き続きBASE事業はロングテール市場で中小事業者向けに注力する方針。ストアフロント型EC市場において、個人及びSMBを対象とするロングテール市場は、大規模なショップを対象とする市場と比べ、より高いGMV成長率やテイクレートを期待できる市場であり、BASEはこのロングテール市場において、国内最大のシェアを占めている。(BASEのテイクレートは8.4%、GMV成長率が113%)

短期的な利益ではなく、中長期の利益成長を目指していくための先行投資、特に更なる認知度向上と新規ショップ獲得のための広告宣伝を強化する予定でいる。また、サービス拡大のためにプロダクト人員の採用増も予定している。先行投資は規律を持って実行し、営業損益(プロモーション費除く)の黒字は確保の予定。また、中長期の成長に向けた戦略的な出資やM&Aを検討している。

投資単位を引き下げることで、投資家層の拡大を図り、株式の流動性を高めることを目的に、1:5の株式分割を実施予定である。株式分割により投資単位は50万円以下になる。株式分割のスケジュールは2021年3月16日に基準日公告、2021年3月末日を基準日とし、2021年4月1日に効力発生。


アナリストによる投資スタンス

2月10日の決算発表後は黒字達成とBASE事業の高成長が評価され株価は上昇した。株価バリュエーションは2021年12月期に関しては赤字予想のために予想PER、EV/EBITDAの算出はできないが、PBRは17.84倍と高い。

しかし、BASEは中小事業者向けのECのロングテール市場で圧倒的な強さで拡大しており、様々な戦略的な事業提携などによりこの市場での競争力は更に高まると思われる。


BASEに関する投資アイデア

他の投資家がBASEをどのようにみているか、アイデアブックでご確認いただけます。


プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美


当社は、本記事の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本記事の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本記事の内容に関する一切の権利は当社に帰属し、当社の事前の書面による了承なしに転用・複製・配布することはできません。