執筆:西村 麻美

メルカリの株価情報

株価
(2021/02/25)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
5,370円 8,432億円 15.5% N/A N/A
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
N/A N/A 23.43倍 N/A N/A


2021年6月期第2四半期決算

メルカリの2021年6月期第二四半期決算(累計)の結果
売上高482億円(前年比46.1%増⤴
営業利益13億円(黒字転換)
当期純利益41億円(黒字転換)

第2四半期単体の売上高は過去最高を更新し、前年同期比41%の260億円、営業損益は三四半期連続の黒字で、10億円を計上した。TVCMによる認知向上の施策が上手く実った事、既存ユーザーへのポイント付与、簡易発送などの出品強化などにより増益を確保した。

セグメント別の状況は以下の通りである。


メルカリJP事業
売上高190億円(前四半期比32%増
調整後営業利益61億円(同34%増
調整後営業利益率32%(同3pt増
GMV(流通取引総額)1,970億円(同28%増
MAU(月間アクティブユーザー数)1,802万人(同17%増

コロナ禍で非対面発送の需要が強まる中、梱包・発送の簡便化によって出品強化を実施した。(ゆうパケットポスト、あとよろメルカリ便、メルカリポスト)

また、ドコモとの連携を強化し、ドコモとのID連携、ドコモショップでのメルカリ教室、梱包材料発売、メルカリポストの設置を一部のドコモショップで実施していたが、今後は実施店舗の数を増やす予定である。

メルペイ事業に関しては、メルペイ利用者(メルペイ「電子マネー」の登録を行ったユーザーと、「メルペイコード決済」、「ネット決済」、「メルペイスマート払い(一括払い・定額払い)」等の利用者の合計、重複を除く)が2020年6月末時点で700万人超だったが、2020年12月末時点に850万人まで拡大した。

メルペイは与信事業の「メルペイスマート払い(一括払い・定額払い)」の利用者数が着実に増加しており、昨年11月からは「メルペイスマート払い(定額払い)」の手数料徴収(年率15%)等を開始した。

「メルカリ」商品ページに「定額払いボタン」を実装するなどのユーザー体験向上やポイント付与などのマーケティング施策による利用者拡大を目指している。

また、メルペイ残高を利用して資産運用ができるサービスの「ふえるお財布」を2020年11月に開始した。2020年12月に貸付投資サービス「Funds」上で募集した「メルカリ サステナビリティファンド#1(募集金額1億円)」は41秒で完売し、第二弾「メルカリ サステナビリティファンド #2(募集金額2億円)」が2月1日より募集開始し完売した。

メルカリUSについては、第2四半期に入りGMVが前四半期に比べ約9%減であったが、前年同期比では107%増の2億6,300万ドル(約278億円)であった。以前から徴収している販売手数料(10%)に加えて決済手数料(2.9%+$0.30)の導入以降もGMVへの大きなネガティブ影響はない

Instant Pay(即日振込サービス)や本物保証などからの収入もtake rate(完了ベースGMVあたりの収益)の向上に寄与し、3Qでは15%にまで高まった。2018年に米配送大手のUPSと提携に続き2021年1月にFedExと提携し、Smart Postの提供を開始した。1~2日追加の配送日数がかかるものよりお手頃な配送手段(3 lb≒1.36kgまでの商品について$7.99)で、配送手段の選択肢が増えた。また、本物保証(Mercari Authenticate)で取り扱う商品にブランドものの眼鏡、サングラスも増えた。


2021年6月期予想

2021年6月期の通期予想に関しては、合理的な業績予想の算定が困難であるため発表していない。メルカリJPは既に圧倒的なポジショニングを確立して安定成長を続けている。投資に関しては、第2四半期までは控えていたが、第3四半期から再び将来利益の最大化の目的で加速するとの事で、連結当期損益では赤字になるものと推測される。


通期の業績予想は発表していないが、セグメントごとの事業方針は以下の通りである。

メルカリJP:
一次流通と二次流通の融合によるカタログ機能強化などにより、更なる出品強化
ドコモとのID連携等による購買/出品促進によって業務提携効果の推進
GMV YoY成長率+20%以上、調整後営業利益率 30%以上を想定

メルペイ:
毎月定額で柔軟な支払いができる「定額払い」などの与信サービス拡大による収益力強化
定額払い等により更なるメルカリ・メルペイのシナジーの強化

メルカリUS:
より簡単で安全に売れるマーケットプレイスへ
COVID-19の影響を見極めながら、引き続き GMV YoY成長率+50%以上の成長を目指す


米国のアパレルのリユースのC to C市場はGlobal Data(米国の市場調査会社)によると260億ドル(約2兆7,650億円)に達すると予測されているが、オールジャンルの2次流通市場はその10倍規模ともいわれており、米国事業のポテンシャルは非常に大きいとメルカリは考えている。3Qにはスポーツイベントの協賛やTVプロモーションで認知度向上を狙うとの方針である。


アナリストによる投資スタンス

2月4日の決算発表の翌日の2月5日は2021年6月期も通期で黒転しない失望売りで売られ、終値は前日から7%近く下げた。やはり米国事業への過大な期待と米国に進出して既に7年近く経っているがリターンを生まない投資に対して懐疑的な見方をせざるを得ない。一方メルペイについてはドコモとの提携や総務省のマイナポイント事業との連携で順調に事業は拡大し、向こう数年以内に黒字化する事は可能であると推測する。

米国事業に対して懐疑的であるが、国内のリユースのC to C市場では圧倒的な覇者である事、またメルペイ事業の成長余地、シナジーを考えると期待先行ではあるが利益成長が期待される。

2021年6月期通期の業績予想を発表していないため、PER、EV/EBITDAは計算できないが、PBRは23.43倍である。


メルカリに関する投資アイデア

他の投資家がメルカリをどのようにみているか、アイデアブックでご確認いただけます。


プロフィール

株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


当社は、本記事の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本記事の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本記事の内容に関する一切の権利は当社に帰属し、当社の事前の書面による了承なしに転用・複製・配布することはできません。