執筆:西村 麻美

ニトリの株価情報


株価
(2022/4/1)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
15,475円 1.7兆円 14.1% 13.2% 11.3%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
18.0倍 16.8倍 2.4倍 0.9% 9.6倍


2022年2月期通期決算

ニトリの2022年2月期通期の連結決算結果は

売上高8,115億円(前年同期比13.2%増
営業利益1,383億円(同0.4%増
当期純利益967億円(同5.0%増

連結ベースでは35期連続増収増益を達成した。

今期のニトリ事業は前期のコロナ特需がすっかり剥げ落ち、苦戦していた。2021年11月と2022年1月に生活応援値下げキャンペーンを2回実施し、インテリア用品及び家具の2,000アイテム以上の値下げ等を行ったが、売上高は前期比5.3%減、営業利益は同1.8%減であった。

既存店の前年比推移は、売上高前期比は90.9、客数は90.1、客単価は100.8だった。全店の前年比推移は、売上高前期比は93.4、客数は94.3、客単価は99.0だった。

ニトリ事業での値下げによるマージン減少、設備投資増、のれんの償却、減価償却増等により営業利益率は前期比2.2pt低下し17.0%となった。


EC事業の売上高(海外も含む)は前期比1.5%増の716億円だった。

前期は巣籠需要によりハードルが上がったので売上鈍化のように感じるが、前々期比60.1%増であった。アプリ会員数は前期末比406万人増の1,314万人となった。

新たな販売チャネルの拡大としてライブコマースでの販売「インスタライブ」を計9回実施し、ニトリ通販サイトにアーカイブとして残し接客コンテンツとしても活用している。


海外事業に関しては第3四半期中に台湾、中国でそれぞれ4店舗ずつ出店した。東南アジアでは2022年1月にマレーシア、シンガポールで1号店を出店した。今後5年間でマレーシア20店舗、シンガポール10店舗の出店を計画している。台湾事業は新フォーマット事業(Nスリープショップ)を開始し、売上は好調に推移している。

ECサイト「momo」に出店し、EC化率が上昇した。台湾での店舗数は44店舗となり前期比9店舗増となった。中国事業は前期比12店舗増の46店舗となった。ECサイト「Tmall」へ出店開始し、EC化率は上昇し、客数は増加した。オーダー家具の販売を強化し、法人向けショールームをオープンした。アメリカ事業はポップアップストア(期間限定ストア)を11店舗開いた。自社サイトだけでなくAmazon、Walmart Marketplaceへも出店した。

また、今期は韓国ECに参入した。韓国最大Eコマース企業Coupang社と提携し、韓国国内に向けての販売を2022年1月に開始した。中国からの直接コンテナ仕入が可能で高粗利益率を確保できるために韓国進出を決断した。

連結売上高の内訳は海外店を含む店舗売上は前期比93.0%の5,802億円、通販売上(海外EC含む)は同101.5%の716億円、法人&リフォーム売上は同110.7%の103億円、賃貸収入が同101.5%の75億円、その他が同164.9%の94億円だった。


前期に買収した島忠については、販売数量の多い品や粗利益率の低い品を優先してPB商品開発は順調に進んでいる。島忠の営業損益は既に黒字に転換しており、島忠事業の売上高は1,371億円、営業利益は30億円であった。2021年6月には既存の島忠ホームズ宮原店の全面改装を行いニトリと島忠との融合型店舗「ニトリホームズ宮原店」をオープンした。不採算店舗を5店退店した。島忠事業に関しては2025年に経常利益率12%達成を目標として各施策を実施している。


ニトリが注視している主要KPIの22項目のうち16項目はクリアし、6項目は未達だった。

出店状況は、2022年2月期期首の国内店舗数はニトリ467店、Deco Home 106店、N+17店、ニトリHomes(島忠含む)61店の651店。海外は台湾35店、中国34店、米国2店の71店。国内、海外合わせて722店だった。

今期にニトリを22店、ニトリExpressを5店、Deco Home34店、Nプラスは1店出店、国内店舗は計57店増加した。海外は台湾9店、中国12店、マレーシア1店の計22店出店し、期末時点で国内、海外合わせて801店になった。従前からの計画通り2022年2月期は店舗の純増数は79店と、日本国内に関しては成長の再加速のための準備を整えた。

物流施策については、国内物流拠点の再構築の一環として、名古屋DC(愛知県)、幸手DC(埼玉県)を新設した。


2022年3月期予想

売上高9,636億円(前年同期比18.7%増
営業利益1,506億円(同8.9%増
当期純利益1,040億円(同7.5%増

ニトリの2023年2月期の重点施策は国内では安さを追求し、客数を増やし、デスティネーションストアとして顧客から更なる支持を得る事である。国内店舗は100店舗純増、海外店舗は41店舗増と計141店舗増と2022年2月期より更に出店を加速する予定である。しかし、取扱いアイテム数を絞った小規模店舗の出店もあるために設備投資金額は2022年2月期の1014億円より124億円減少の890億円の予定である。


アナリストによる投資スタンス

連結では増収増益を達成したものの、主力のニトリ事業で減収減益であった事が嫌気されて前場では株価は5%程売られて年初来安値をつけた。しかし、午後になり株価はかなり戻した。

国内EC事業に関しては通期で前期比1.5%増と成長が頭打ちになった感がある。新規に始めたインスタライブでのライブコマースが新たな販売チャネルとして成長するかどうか気になるところである。また取扱いアイテム数を絞った小規模店舗も出店するとの事だが、家具、インテリアを小規模店舗で売る事が適しているのか現時点では不明である。

ウクライナ、ロシアの戦争により全世界的にインフレ、円安加速、更なる物流の混乱が起きている。ニトリの場合は自前で物流網を構築しているものの予期しない事も起こりかねない状況であり、会社計画通りに進むのかに関しては不透明である。株価バリュエーションは予想PERが16.8倍、PBRが2.4倍、EV/EBITDAは9.6倍とやや割安に感じるが、主力のニトリ事業の復調しない限り株価は上がりづらいように思われる


投資アイデア

他の投資家が何に注目しているか、アイデアブックでご確認いただけます。


プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


当社は、本記事の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本記事の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本記事の内容に関する一切の権利は当社に帰属し、当社の事前の書面による了承なしに転用・複製・配布することはできません。